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コンビニエンスストアの登場
わが国にコンビニエンスストアが登場したのは、1974(昭和49)年に東京。
豊洲に開店したセブンイレブン(当時、ヨークセブン)1号店が初めである。
「セブンイレブン」ブランドは、やはりアメリカですでに発展していたコンビニエンスストアチェーンのコンセプトとフランチャイズチェーン手法とを輸入(技術提携)してスタートさせたものである。

「コンビニエンスストア」とは、直訳すれば「便利な店」という意味である。また、「セブンイレブン」という店名は、早朝7時(セブン)より夜11時(イレブン)まで営業(開店)しているという意味で、営業時間をそのまま店名とするユニークなものであった。

当時は、食料品小売店など在来の小売店は、ほとんどが昼近くの10時半とか11時ごろに店を開け、夕方の6時ごろ、早ければ5時ごろにも閉店してしまうところがほとんどで、夕方7時ごろまで開店していればかなり遅くまで開いている店だと思われていたころである。したがって、「セブンイレブン」という店名=営業時間は、当時の小売店業界からすれば(消費者からみても)常識外れの長時間営業店だというインパクトがあった。つまり、「コンビニエンス」のかなめは、まずその長時間営業にあった。

このころのコンビニエンスストアは、小売業界ではおおむね次のような特徴を有した小売店であると認識されていた。

まず、その商品の品ぞろえは、総合スーパーの小型版を意識して、総合スーパーの売れ筋商品と目される食品や日用品をビックアップして並べようとした。次に、主たる客層を若年層において、品ぞろえなどの政策を考えようとした(当時は、夜遅くまで街を徘徊するのは若者であるという決めつけがあった)。そして、 3つ目に、アメリカのファッションの香りがするようにハンバーガーなどのファストフードも置いてみようという意向があった。要するに、便利さを掲げて、総合スーパーの若者版、長時間営業版をめざすというものであった。
しかしながら、実際にチェーン店舗数を増加させながら、営業を続けていくうちに弁当、おにぎりといった調理済み食品の利用者が多いということに気がついた。そして、弁当、おにぎりなどを独自に商品開発して店頭に品ぞろえするという方向に邁進するようになった。その商品ラインも、米飯類だけでなくサンドイッチなど調理パン類の品ぞろえも拡充し、また惣菜類などの「調理食品」も加わった。

その後は、コンビニエンスストアは、独自開発して品ぞろえする「調理済み食品」類(業界では「調理食品」ということが多い。まだ、「中食」または「中食商品」という言葉が開発されていないころ)を、品ぞろえの中心に据えた業態コンセプトを完成させていくことになる。

つまり、「調理済み食品」類=中食商品の商品特性は「そのまますぐに食べられる」、すなわち、 コンビニエンスな食品=便利な食品である。こうして、「コンビニエンス」(便利)の第一義は、そのまますぐにということとなった。消費者の日常生活において、なにかしら困ったことが起こったときには、とりあえずコンビニエンスストアに駆け込んでもらおう、そうすれば、そこにはそのまますぐに"使える状態で用意された日用品や食品が見つかるはずだということを、「コンビニエンスストア」の社会的な共通概念としようとしたのである


「中食」商品の供給システム
コンビニエンスストアで「調理済み食品」類を品ぞろえの重点にするという方向が確認されたのは、上述のようにかなり早かったが、 しかしながらその商品類が、食市場全体のなかである程度の影響力を有するというところにまではなかなか至らなった。とにかく、まずコンビニエンスストアそのものの店舗数がある程度の店舗数規模にまで増大することが必要であったであろう。

そして、より本質的には、コンビニエンスストアで販売される「調理済み食品」類は、つくり置きの料理であるため、主に食品衛生上の観点から制約が著しくて、その結果、品質的に家庭料理や外食料理と比べたときに、消費者の満足度は高くなかったという理由がある。

コンビニエンスストアの店舗に並ぶ「調理済み食品」類は、店舗の周辺に配置された食品工場(惣莱工場)で作成されて、定期的に店舗に配送される。仮に、この配送頻度が1日に1度であると、弁当など「調理済み食品」類は、最大で24時間の店頭在庫を前提として販売されることになる。食品工場での荷繕いや店舗までの配送時間でも2時間を要するものと仮定される。

また、その弁当を購入する消費者も、ただちに食するかどうかは不明である。
昼食用として朝に買い求めるかもしれないし、翌日の朝食用として夕方に買い求めるのかもしれない。消費者の手もとで実消費までに数時間の時間経過は覚悟しなければならない。そうすると、弁当を製造してから実際に食べられるまでの想定時間を、30数時間以上ないし40時間程度見込まなくてはならないことになる。これでは、弁当作成のために使用できる食材や調理法は、かなり限られることになろう。また、食品衛生上の観点からそれなりの食品添加物を多用して対応することも必要である。

そのため、消費者がコンビニエンスストアの弁当類を購入するときは、「内食」または「外食」の双方がなんらかの事情により支障をきたした、やむをえない場合のみ利用するということが少なくなかったのである。

1988(昭和63)年にこうした事情が一変することになる。セブンイレブンが、弁当などの「調理済み食品」類の食品工場から店舗への配送頻度を1日3回としたからである(1日3便体制という)。 1日3回だと、標準8時間おきに店舗に新しい弁当類が並ぶことになる。製造から実際に食されるまでの時間の想定は、10数時間ですむことになる。弁当製造に動員できる食材や調理法が一挙に拡大するところとなる。

また、そもそも1日3便体制は、単純に弁当の配送頻度を上げるということだけではない。そのことが実現するためには、店頭でのこれら弁当類の在庫管理能力が向上したり、販売状況の把握や販売予測の精度が向上したりすることが不可欠である。

また、工場での生産計画の級密化、効率的な製造ライン操作など、多くの技術革新が随伴しなくてはならない。こうした、各方面にわたっての研究開発の成果として、弁当の製造過程そのもののイノベーション(技術革新)も多岐に渡って実現された。なにより、最大の課題である食品衛生への取り組みは、尋常ならざるものがあった。


コンビニエンスストアのビジネスモデル
今日、コンビニエンスストアの品ぞろえは、食品(飲食料品)のほかに、 日用品・文房具・雑貨、新聞・雑誌、下着・靴下、化粧品、たばこ、切手など多岐に渡る。また、各種公共料金支払いの取り扱い、宅配便の取りつぎ、コピー・ファクシミリなど、サービス商品のラインアップも充実している。さらには、イベントチケットの発行やE―コマースの受け渡しなど、新規の商品開発にも余念がない。

しかしながら、 どのコンビニエンスストアチェーンも、店舗売上高のおよそ3/4は、飲み物と食べ物、すなわち「飲食料品」である。したがって、これを業種統計で格付けすれば、紛れもなく飲食料品小売店である。

また、その「飲食料品」のうち、飲料や加工食品などは、大半が大手・中堅の食品メーカー、飲料メーカーが、製造して販売しているナショナルブランド(NB)商品である。これに対して、弁当やサンドイッチ、おにぎり、惣菜類は、そのチェーンだけで販売されているプライベートブランド(PB)商品である。
実は、中食商品はコンビニエンスストアチェーンのPB商品なのである。

コンビニエンスストアの店舗の収益構造をみると、全体の粗利益(販売価格から仕入れ価格を差し引いた額)に占める「飲食料品」の割合も大きい。店舗全体の売上高の3/4ほどが「飲食料品」であるわけだから当然のことでもあるが、同時にこれらの商品類は商品回転率(一定期間内に売れる頻度)も高い。さらに、NB商品とPB商品との粗利益率の違いを見ると、NB商品の粗利益率は相対的に低く、PB商品の粗利益率は高い。たとえば、店舗売上高全体に占める「中食」商品(=PB)の割合が1/3(あるいは1/4)だとすると、粗利益額全体に占める「中食」商品(=PB)の割合は4割強から5割近い(1/3)こともある。

つまり、コンビニエンスストア店舗の収益源は、「中食」商品=PBであり、これを欠いては、コンビニエンスストアの経営は成り立たないとみられるのである。というよりも、経営的には、コンビニエンスストアとは「中食」商品=PBを販売する店のことであり、雑貨や雑誌などの他の商品類は、たとえていえば、「中食」商品=PBの購買を誘うための誘導商品(客寄せ)であるという見方もできる。

したがって、中食商品の開発と供給こそ、コンビニエンスストアチェーンの死命を制するものである。また、これの開発と供給のシステムこそ、「内食」供給の担い手であるスーパーマーケット(内食産業)ならびに「外食」供給の担い手である外食産業と、コンビニエンスストアを区別するビジネスモデルの最大の違いである。


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