目次

1.健康食品の3つの効能
健康食品をその成分の効き目という側面から見てみると、
①栄養補給効果
②生体機能効果
③抗酸化作用

の3つに大別できます。

①の栄養補給効果は、日常の食事で不足しがちな栄養成分を健康食品で補おうという目的で使われるものです。これらの効果に関与する成分とは、糖質、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルといった栄養素です。

②の生体機能効果は、健康食品中の成分が持つ生理活性作用によって病気の予防や治癒を目指すものです。こちらの成分としては、オリゴ糖、多糖類、食物繊維、腸内有用細菌、サポニン、レシチン、不飽和脂肪酸、生薬といったものです。

①の栄養補給効果は栄養学的な立場から健康食品の有効性を見いだそうとするのに対し、②の生体機能効果は医学的あるいは薬学的な立場から薬とほぼ同等の役割を期待するものです。

また、ここ数年「活性酸素」という言葉が注目をあびていますが、この活性酸素を抑制する「抗酸化」という作用が健康を維持するために重要な役割を果たすことがわかってきました。

抗酸化作用は、栄養補助効果とも生体機能効果とも若干意味あいの異なる健康食品の第三の効能ということもできるでしょう。これに関与する成分としては、ポリフェノール、フラボノイドといったものです。

以降、健康食品のそれぞれの効果についてさらに詳しくみていきましょう。
①栄養補助効果
生命が成長しそしてそれを維持するためには、どうしても外部からとらねばならない材料があります。多くの生物はそれらを食物としてとっているわけですが、その食物の成分を分析する学問が栄養学であり、その成分の体系を栄養素といいます。三大栄養素と言えば、「炭水化物(糖質)」「脂肪(脂質)」「タンパク質」、五大栄養素と言えば「ビタミン」「ミネラル」が加わり、今では「食物繊維」も栄養学の範疇に加わっています

これらの成分はたとえある一つのものだけであっても、その不足によってさまざまな疾病を引き起こす原因になります。

例えば、ビタミンCが欠乏すると壊血病に、ビタミンAは夜盲症というように、特定の栄養成分の欠乏は特有の疾病の原因になることがあります。これらを欠乏症状といいます。逆に特定の栄養成分の過剰摂取により特有の疾病を発症する過剰症状も存在します。

また、それぞれの栄養成分が欠乏症や過剰症が生じない範囲であっても、栄養素のバランスが悪いだけでも病気や体調不良の原因になります。
健康を維持するには、毎日栄養素がバランスよく適量摂取しなければなりません。




2.栄養素の分類と栄養成分
炭水化物
単糖類→ブドウ糖、果糖など
オリゴ糖類
多糖類

脂質
飽和脂肪酸→パルミチン酸、ステアリン酸など
不飽和脂肪酸
一価不飽和脂肪酸→オレイン酸など
多価不飽和脂肪酸→(n-6系)アラキドン酸、リノール酸(n-3系)、リノレン酸、EPA、DHAなど

たんぱく質
アミノ酸→イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、シスチン、フェニールアラニン、
チロシン、スレオニン、トリプトファン、バリンなど
ペプチド

ビタミン
脂溶性ビタミン→A(カロチン)、D、E、K
水溶性ビタミン→B1、B2、B6、B12、C、葉酸、パントテン酸、ナイアシン

ミネラル
主要元素→ナトリウム、カリウム、塩素カルシウム、マグネシウム、リン、硫黄
微量元素→鉄、亜鉛、銅、マンガン、コバルト、ヨード、モリブデン、セレニウム

食物繊維
水溶性食物繊維(SDF) →グルコマンナン、ガラクトマンナンなど
不溶性食物繊維(IDF)→グルカン、キシランなど


ところが、私たちの現実の食生活の中で、これらの栄養素を過不足なくバランスよくとるのは至難のわざといえなくもありません。特に最近の青少年やサラリーマンは、ファーストフードの利用、加工食品のとりすぎなどで、バランスの極めて悪い偏食生活を送っています。

また、比較的バランスのよい食事をしている人でも、たとえば、喫煙やストレスなどで、このバランスを崩してしまうことになります。ある原因でバランスを崩している場合、それを回復するには、本来バランスを崩している元凶をとり除くべきなのですが、喫煙習慣のついた人が容易にやめるわけにはいきません。

またストレスなども現代では不可抗力的な要因といえます。日常の食生活の中でやむなく生じるそのようなアンバランスを健康食品の摂取によって補おうというのが栄養補給効果で、健康食品が「栄養補助食品」とも言われるのは主にこの考え方によるものです。

しかし、ここで重要なことは、バランスの偏りの質や量はひとりひとり異なる点です。ある人はビタミンが不足、ある人はミネラルが不足、またタンパク質は不足していて脂質は過剰になっているなど、欠乏と過剰が入り乱れていることも少なくありません。

その判断を間違ったまま、ただやみくもに健康食品を摂取することは、よりバランスを悪化させる原因にもなりかねません。

現実には、栄養学の知識があり、かなり厳密な栄養管理をしない限り、健康食品によるバランス修正は難しいといえます。バランス栄養食と銘打った製品もありますが、勘違いしないよう気をつけたいのは、これを食べたからといって決してバランスのよい栄養摂取が行なわれているわけではありません。むしろそうした思い込みは危険なくらいです。

そのため、栄養補助食品は栄養バランスの修正という意味あいより、比較的栄養学の知識がない人にも理解しやすい、その成分の欠乏による疾病予防を目的に利用されることが多いようです。そういう意味では栄養補助食品というより、栄養欠乏症予防食品といったほうが適切なネーミングかもしれません。たとえば、ビタミン・ミネラル系の健康食品には、「単品型」と「複合型」があります。


栄養成分と欠乏症状
タンパク質…スタミナ低下、貧血、肝機能障害、栄養失調症
脂肪…盧病、感染症
ビタミンA…夜盲症
ビタミンB1…脚気、疲労
ビタミンB2…口角炎、角膜炎
ビタミンB6…皮膚炎
ビタミンB12…悪性貧血
ビタミンC…壊血病
ビタミンD…骨粗しょう症
ビタミンE…冷え性、末梢血行障害
ビタミンK…大腸炎、肝機能障害
ナイアシン…口内炎、うつ病
パントテン酸…皮膚炎、筋力低下
パンガミック酸…心臓病
カルシウム…骨粗霧症、神経過敏
鉄…貧血、便秘
カリウム…筋無力症
ヨード…甲状腺腫
マグネシウム…充血、神経興奮
銅…貧血、精神障害
亜鉛…味覚障害、脱毛
食物繊維…便秘

②生体機能効果
①の栄養補助効果は、栄養の乱れや欠乏による健康への影響を健康食品で回復させようという考え方です。

これに対し、「生体機能効果」は、その成分が持っている生理作用を健康増進や疾病予防あるいは疾病治療にまで役立てようという考え方で、医薬品に極めて近い考え方です。

ただ、医薬品の効能は、対症療法的な西洋医学的な身体への生理作用を基本とした考え方であるのに対し、健康食品の効能はそれに加えて医食同源的な東洋医学的な見地からも考えないと正確な理解はできません。

つまり西洋医学的な考え方のみで健康食品を捉えることは、ほんのその一部しか健康食品の利点を利用できないということになります。

健康食品に対する否定論の多くは、西洋医学の考え方からくるもので健康食品本来の効能を考えないことによるものです。

このように健康食品の生体機能効果とは、西洋医学の対症的な医薬品の生理作用の考え方に加え、予防医学や生体機能の基本的な調整作用のバランスを保とうという東洋医学的考え方も含んだ広範な効果を期待したものです。
その生体機能効果について、これから具体的な成分作用を交えながら解説していきましょう。

3.からだの生理機能と主な機能性成分の例
血圧降下…EPA、DPA、レシチン、タウリン、リノール酸、β-カゾモルフィン、コレステロール制御…キチン・キトサン大豆サポニン、不飽和脂肪酸、レシチン、タウリン
血小板凝固防止…EPA
免疫力の活性化…β-D-グルカン
消化吸収機能の調整…オリゴ糖、食物繊維
アレルギー低減…α-リノレン酸

健康食品の栄養補助効果に関わるのが栄養素であるのに対して、生体機能効果に関わる健康成分は医薬品の薬効成分に匹敵するものといえましょう。これらは「機能性成分」と呼ばれています。

代表的な機能性成分として、サポニン、レシチン、カゼインなどがあります。オリゴ糖なども糖質の一つとして栄養素のジャンルに属するものですが、作用から見た場合は、「機能性成分」といえます。EPAやDHAも栄養学的分類は脂質ですが、やはり作用から見た場合は機能性成分です。

血圧が高くて危険な場合は、当然病院に行って降圧剤の服用や血圧降下のための治療を受けなければなりません。血圧が高くても病院に行くほど深刻でない場合は、何とか食事や健康食品で改善できないだろうかと考えるでしょう。そんなときには、血圧降下作用のある成分を含んだ食品や健康食品を試せばいいわけです。

健康食品の成分の生理活性機能をうまく使えば、医薬品の代用的な役割を果たしてくれます。医学的治療や副作用の強い医薬品を使う前に、食品成分で推状の進行を止めたり改善できれば、それはもっとも健康食品の上手な活用法とも言えるでしょう。

そういう意味で、食材や健康食品成分の生理活性作用を知り活用することは、病気予防のために大いに役立ちます。

このような健康食品の使い方は、対症療法的な西洋薬と同じ考えによるもので、身体に及ぼす局所作用を基本にして症状を改善させ健康を回復させよういう考え方を「生理活性作用」と言います。

これに対して東洋薬的な考え方、生体全体のリズムを調整し身体機能のバランスを保ちながら健康を維持しようという考え方を「生体調整作用」といいます。

食品の持つ生体調整作用の特徴は、西洋薬や生理活性作用に主に見られるように血糖値やコレステロール値などを上げたり下げたりする一方的な作用をするのではなく、1つあるいは複合的な成分が血圧の高い人には下げる作用をし、逆に低い人には上げる作用をするように、その人の状態に応じてときには逆の作用を現わし、常に正常値に持っていこうとする働きをするものが多い点です。

漢方薬にはこのような働きをするものが多いわけですが、このような医薬品や食品の身体の生体調整作用を重視した考え方をホリスティック医学と言います。
この「生理活性作用」「生体機能調整作用」について、西洋薬と漢方薬の違いを例にして、もう少し詳しく説明しましょう。

西洋薬はその物質の持つ生体への働きを厳密に探り出し、ある症状への治癒率や副作用発生率を検証しながら、医薬品としての有効性の精度を高めていきます。

つまりその医薬品がどのような生理作用をして何の症状に効くかがもっとも重視され、投与に対しては、ある症状の患者がきたらそれに対応したその薬を使うという対症療法的発想です。

感染症には抗生物質、高血圧には降下剤、アレルギーには抗アレルギー薬といった具合です。一方、東洋医学で使う漢方薬の特徴は、原料である生薬の組み合わせによってさまざまな病気に対し効果を発揮させる点と、患者の症状以上に患者自身の体質が重視され、同じ症状でも体質により使う薬が違ってくるのです。つまり薬の作り方も使われ方も西洋医学とはかなり異なっています。

なぜ、西洋医学と漢方薬ではこのように医薬品に対する考え方が異なるのか、次のたとえで説明してみましょう。

ガンに大きな作用を示す植物があったとします。その植物には発ガン成分と抗ガン成分の両方が含まれていて、ある人にはガンを発生させ、ある人には治す働きをするものとしたら、西洋医学ではその植物の抗ガンに作用する有効成分のみを抽出して抗ガン剤を作りだそうとするでしょう。ところが、なかなかうまく必要な成分をとり出せない、とり出してみれば抗ガン作用がなくなってしまうということがあります。

つまり、この植物のガン作用成分は発ガンと抗ガンの両方が作用しながら働いているため、抗ガン作用のみをとり出すことはできないのです。この段階で西洋医学では製薬をあきらめてしまうかも知れません。なぜなら少しでも発ガンの可能性のあるものを使うわけにはいかないのです。

ところが漢方薬的発想では、この植物がどういう人あるいはどういう場合にガン抑制に働き、あるいは反対に発ガンに働くのかを考え、この薬が有効と考えられる症状や体質の人だけに投与しようと試みるのです

このことからおわかりのように、漢方では時には薬にも毒にもなるような一見、危険とさえいえるものを、患者の体質に合わせて絶妙に使用することにより、効果を発揮させるのです。

こうした考え方が西洋薬にはない高い効果を現わし、西洋医学では治せないものを治してしまうことがあるのです。こういう漢方薬の特質を無視して西洋薬的な使い方をすると、副作用の多い極めて危険な医薬品に変わってしまいます。安全と思われがちな漢方薬に意外と副作用の被害例が多い一因には、こういった側面もあります。

人間の身体は、さまざまな機能が絶妙なバランスをとることで働いています。自律神経のバランス、血圧、体温、血糖値などすべて一定ではなく、揺らぎながらバランスをとっています。

また人間の身体にはもともとガン細胞を作る仕組みと、そのガン細胞を消す仕組みがあってこれもバランスをとって、ガンが成長しないように働いているのです。
西洋医学では、熱が出れば、解熱作用がある薬、血圧が高ければ血圧を下げる薬という使い方をします。つまりバランスが崩れた反対側の力を与えるわけです。

一方漢方薬は、相反する機能の両方に働きかけてバランスをとることで、本来その人が持っている回復力そのものに力を与えようとします。
西洋薬と漢方薬では、身体のバランス調整機能が違うと言えます。

食品の健康作用にも、この漢方薬と同様の働きがあります。食品中にはさまざまな機能性成分が含まれています。実は、一つの植物、あるいは牛乳や納豆といった一つの食材の中には、さまざま機能性成分が含まれていて、一つのものを術成しているのです。それらのさまざまな成分が補完的にあるいは相乗的に作用して、個々の成分を単独でとる以上に高い健康効果を作りだしていることが少なくありません。

健康食品の多くには、カキ肉エキス、シジミエキス、ニンニクエキスなどある食材をそのままエキス化したものがありますが、これは医薬品のように有効成分を単独抽出するのではなく、その食材が持つ全体的な健康効果を濃縮させたと考えるべきでしょう。健康食品には単にその成分が持つ生理作用だけでは捉えきれない、身体全体のバランスを整えながら、病気を回復させていこうという働きが存在するのです。これが医薬品、特に西洋薬の効き目の質との大きな違いです。

③抗酸化作用
ここ数年で健康食品業界に大きな変革を与えたといってもよい注目すべき身体の生理機能が「抗酸化作用」です。

抗酸化とは「酸化を防ぐ」という意味ですが、これが「活性酸素を抑える」という意味に使われるようになって、抗酸化物質は一躍健康食品の代表的なものとなりました。

まず、活性酸素とは何なのか、簡単に説明しておきましょう。
地球上の多くの生物は、酸素なしに生命を維持できません。人間にとっても身体の中のさまざまな代謝活動、例えばエネルギー代謝や解毒代謝活動などのために酸素は必要不可欠です。

体内の代謝過程では、さまざまな酸素が関与する化学反応が生じているのですが、その化学反応を通じて作り出される活性化された酸素の総称を「活性酸素」といいます。活性酸素は、酸素よりはるかに強いその酸化力によって身体にさまざまな影響を与えます。

活性酸素は、いわば代謝の過程で生まれる産業廃棄物のようなものですが、必ずしも害ばかり起こすのではありません。免疫系の中では外敵からの防御のためにこの活性酸素が使われ、免疫上の立派な武器の役割をするというメリットがあります。

私たちの身体は、活性酸素の有毒性を外敵の排除のためにうまく利用しているのです。

しかし、やはり体内で活性酸素が増えすぎると、身体への悪影響が発生します。不要な活性酸素はただちに体内の抗酸化作用を持った酵素によって処理されるので、この抗酸化処理機能がうまく働いているときはそれほど問題はありません。

ところが、何らかの原因でこの抗酸化機能が低下し、活性酸素の除去がうまく進まなくなると、活性酸素は直接正常な細胞を傷つけたり、また脂質などの過酸化やタンパク質生成に影響を与え、その結果、細胞のガン化や老化などの悪影響を与えます。

本来体内が持っている抗酸化作用が低下してしまったときに、私たちは食品中の抗酸化成分をとることによってその抗酸化作用を高めることができますが、注目を浴びているポリフェノールがその代表的抗酸化成分です。ココア、赤ワイン、緑茶など最近話題の食材はみんな、それらに含まれているポリフェノールの含有量の多さが注目されたわけです。

ポリフェノールをはじめとする抗酸化成分は植物の色素成分に存在します。なぜなら、植物は光合成を通じて酸素を作り出す作用があり、その酸素毒の影響をもろに受けるため、自身の体内にその毒性を防ぐための抗酸化成分を作っているのです。

人間を含めて動物も呼吸を通じて酸素をとり込むため、体内に抗酸化作用をする酵素を持っていますが、年齢とともに体内の抗酸化能力は弱まるため、どうしても食物から摂取しなければならなくなります。

特に人間の場合、環境の悪化、ストレスの増加、食品添加物など化学物質の摂取で、昔よりはるかに体内の活性酸素の発生量が増えているといわれ、体内の抗酸化成分で処理できないくらいの大量の活性酸素が発生し健康を蝕む原因になっています。

少しでも活性酸素の害から身を守るためにも、抗酸化作用のある食品の積極的な摂取をはじめ、一方で食品添加物、タバコ、化学物質など活性酸素を作り出す物質をとらないということも重要です。

食品選びに際しては、原材料表示をよく見て抗酸化作用の高いものを選ぶということと、化学物質系の食品添加物を含んだ食品は控えるなどの注意が必要でしょう。
活性酸素といっても多くの種類があり、その種類によってそれを処理する体内の機能や食品成分も異なります。


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