目次

1.「店長のおすすめ」「シェフのおすすめ」の裏側
ともに、新鮮で旬の食材が入ったので通常より低価格な特別メニューがご用意してあります、との印象を客に与える。
もちろん、数あるレストラン、料理店のなかには、本物のサービスとしてそんな特別メニューを用意してあるところもある。だが、中堅クラスのレストラン、料理店に大衆レベルのレストラン、居酒屋クラスになるとこの「店長のおすすめ」「シェフのおすすめ」には仕掛けがほどこされている場合が多い。

高級、中堅、大衆を問わずどのレストラン、料理店にも仕入れの見こみ違いはある。客の入りなどによってこのぐらいの量なら消費できると判断した素材が残ってしまったり、あるいは通常価格よりはるかに安い素材が大量に入手できた場合がそうだ。

残った素材を早目に処理したい。素材に期限があるからだ。そこで、悪知恵の働く者が現れた。どこの誰かは判明してないが。何を食べようかと迷っている客は「店長のおすすめ」「シェフのおすすめ」と言われれば、その文句にツラれてついついオーダーしてしまう。

それでも「シェフのおすすめ」には、料理人(シェフ、板前)のプライドがあるのでそうそうあこぎなことはできない。だが、「店長おすすめ」になるとこれは経営が優先するのでとにもかくにも「残りもの一掃」のためのメニューとなることが多い

この「店長のおすすめ」が氾濫するのはランチ時である。都会ではランチ戦争が激しい。どこのレストラン、料理店も安くておいしいランチを提供しようと必死。そこに安さと量ならどこにも負けない「店長のおすすめ」が登場する、というわけである。



2.日本人の国民性でコースやメニューの真ん中を選ぶ
レストランに数人で入って、ひとりがA定食を頼むと、みんなが右へならえで「同じものを」。日本人ほど和を尊ぶ(あるいは付和雷同な)国民も珍しい。
欧米人はホテルの朝の目玉焼きひとつでも、半熟からサニーサイドアップまで、とことん自己主張する。
日本人は「中庸志向」の見栄っぱりで、「金を持っていないと思われたくない」「ケチに見られたくない」気持ちが強く働くという。その日本人気質が「松竹梅」のチョイスに遺憾なく発揮される。

うなぎや天丼からホテルの披露宴に至るまで、松竹梅、A~Dなどの値段別コースがあると、客のほとんどが「まんなか」か「下から2番目」を注文する。
松や高いコースを注文するのは、接待などでふるまう立場にある人が多い。

つまり店にとって「梅」や「一番安いコース」は、たくさん売りたい「竹」や「下から2番目」を指名させるためのダミーに近く、売る気はほとんどない。つまり、とにかく梅には手間をかけたくないから、竹のおかずを適当に減らす程度。内容は竹とさほど変わらないのに、梅の値段は3割程度安く設定されているから、文旬なくお得だ。「ハイ、こちら梅一丁!」と店員に大声で念押しされても平常心でいられるなら、迷わず梅を選ぼう。

では高級な松はどうか? 日替わりでも「刺身ならトロ」といった、定番の「お約束」食材が決まっていて、内容的には意外に面白みがない。竹や梅の方が、旬の活きのいいネタを楽しめる。店にとっても、松は値段が高い分、竹とはっきり区別する必要があるので、仕入れ値も高くなり、手間も余計にかかる。
竹がたくさん出る方がありがたいそうだ。
ともあれどの角度から見ても、「梅」は買いなのである。

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