目次

1.食品から人に感染する可能性がある寄生虫症一覧
近年の食生活の多様化に伴い、これまでその存在が忘れ去られた寄生虫症が復活している。特に有機栽培野菜の生食による感染、輸入食品からの感染が多い。

食品からの感染は生のまま、または加熱不十分な料理の食材に付着する虫卵や寄生している感染幼虫を経口的に取り込むことにより発症します。加熱処理された食品からでは寄生虫の感染は起こりません。

起因寄生虫は線虫類(回虫・旋毛虫等)・吸虫類(肺吸虫・横川吸虫等)・条虫類(広節裂頭条虫・有鈎条虫等) 等に分けられる。

2.線虫類感染の寄生虫症
回虫症
回虫の成虫は小腸に寄生する。症状は腹痛・下痢・食欲不振等である。有機栽培や輸入された生野菜に付着した虫卵をサラダ等として摂取することで感染します。キムチや漬け物からも感染することがある。ヒトの体内に入った虫卵は 約2カ月で体長約25cmくらいの成虫になる。ミミズかうどんのような大型の線虫である。寿命はおおよそ1~2年と考えられています。

アニサキス症
アニサキスとよばれる一群の線虫類の成虫はクジラやイルカ等の海棲哺乳類の胃内に寄生する。本来感染幼虫が寄生している魚等を海棲哺乳類が摂取することで成虫まで発育するが、その幼虫をヒトが摂取すると幼虫(体長約25mm、体幅約0.5mm) は発育できず、胃壁や腸壁に侵入し激しい腹痛を発症させます。わが国では毎年2,000例近くが報告されています。

感染源はサバ、タラ、オヒョウ、スルメイカ等に寄生する感染幼虫で内蔵や筋肉内に寄生率が高く、これらの魚を寿司や剌身等で生食することにより感染します。 アニサキスの幼虫は酢でしめたくらいでは死なず、またワサビや塩でも効果がない。60°C以上の加熱なら数分で、-20℃以下まで温度を下げれば数時間で死滅します。

旋毛虫症
旋毛虫成虫は、体長約1.5mm ~ 4mm、 体幅約0.05mmのきわめて小さな線虫である。成虫はヒト、ブタ、イヌ、クマ、ネコ、ネズミ、イノシシ等種々の動物の小腸粘膜内に寄生する。雌虫は小腸粘膜内に体長0.1mmの幼虫を産み(卵胎生)、幼虫は血行性に体内に移行し最終的には横紋筋内で被襲し寄生する。

ヒトへの感染は、 被襲幼虫が寄生する獣肉の生食による。欧米では、加熱不十分な自家製ソーセージ等を摂取することで感染している。成虫が寄生した場合、下痢症状を示す。幼虫の筋肉内寄生では発熱、筋肉痛、浮腫,心筋炎等を呈する。わが国ではクマの剌身を食べて感染した症例がある。またタイで豚肉、チベットでクマ肉を食べて感染した日本人症例もあります。

有棘顎口虫症
有棘顎口虫成虫は体長約11~54mmの円筒形でネコ、イヌの胃壁に腫瘤を形成しその中に寄生する。感染幼虫が寄生するドジョウ等淡水産の魚類をネコ、イヌが摂取することで成虫にまで発育する。ヒトが感染幼虫を摂取すると、幼虫は成虫に発育せず消化管を貫通し肝臓に移行する。続いて皮下を自由に移行する。

症状は突然皮下が腫脹し発赤と疼痛またはかゆみをきたすが、数日後には自然消失し再び別の場所に現れる。ヒトへの感染は雷魚やナマズの刺身からが多い。わが国では最近、有棘額口虫症の発症がみられなくなったが、東南アジアやアフリカ等で現地の魚の刺身を食べて発症した症例がある。

また最近中国、台湾や韓国からの輸入ドジョウに由来する有棘顎口虫よる有棘顎口虫が報告されている。本症はドジョウの躍り食い等によって感染する。症状は 遊走性限局性皮膚腫脹のほか、 ミミズ腫れの様な線上の丘疹あるいは出血班様 を形成します。

旋尾線虫幼虫症
旋尾線虫上科に属する線虫の幼虫(体長約7mm、体幅約0.1mm)がヒトの消化管に穿入してアニサキス症様の消化器症状や額口虫症様の皮膚爬行症を引き起こす。ホタルイカの生食により感染する。これまでの報告では約3 %の日本産ホタルイカに幼虫感染が発見されている。感染者の報告は現在のところわが国だけである。旋尾線虫の成虫はまだ不明であり、種の確定はできていない。

広東住血線虫症
広東住血線虫成虫は、体長約27mm,体幅約0.4mmの線虫で、ノネズミの用市動脈に寄生する。感染幼虫はアフリカマイマイやナメクジ等の陸棲貝の筋肉内に寄生する。ヒトが感染するのは、陸産貝を経口摂取することによる。幼虫はヒト体内では成虫にまで発育できず、幼若成虫として脳のクモ膜下控に寄生し発育を停止する。

症状は、好酸球性髄膜脳炎に起因する激しい頭痛、吐き気、嘔吐、知覚異常等を示し、重傷例では痙攣、昏睡等をきたし死亡することもある。感染源は加熱不十分の貝料理や流行地で誤ってサラダに切り込まれた感染したナメクジ等である。また喘息の治療薬として生のナメクジを飲む習慣のある地域でも発症する。

3.吸虫類感染の寄生虫症
肺吸虫症
ウェステルマン肺吸虫成虫はコーヒー豆状の大きさで、肺に虫嚢を形成し寄生する。症状は咳と血痰である。肺吸虫は肺以外の臓器にも寄生することがあり( 異所寄生) 脳・皮下・眼・泌尿生殖系等人体各所に寄生し障害を引き起こす。

脳寄生は脳肺吸虫症とよばれ、頭痛・區吐・てんかん様発作等脳腫瘍に似た重篤な症状を示す。感染源はカニ( モクズガニ、サワガニ) に寄生する幼虫( メタセルカリア) である. ヒトはモクズガニの老酒漬け等から感染する。最近はイノシシが感染しているカニを摂取し、イノシシの筋肉内に移行した幼虫をその生肉と一緒に摂取して感染する例が多いです。

肝吸虫症
肝吸虫
成虫は柳葉状(体長約15mm、体幅約4mm)で胆管系に寄生する。症状は食欲不振・全身倦怠・下痢・肝腫大等であるが感染虫数が少ない場合、自覚症状はない。

感染源は淡水魚( コイ、フナ、モツゴ等) の筋肉内に寄生する幼虫( メタセルカリア) である。ヒトは幼虫が寄生する肉をあらいや刺身として摂取することで感染する。肝吸虫は、わが国・韓国・中国・台湾・ベトナムに分布している。

また、タイには肝吸虫と同様なタイ肝吸虫による肝吸虫症がある。感染患者数は現在700万人と推測されている。主要な感染源はKoi-plaとよばれる淡水魚の生魚のすり身が含まれるソースといわれている。

横川吸虫症
横川吸虫成虫は小さく (体長約1mm,体幅約0.6mm) 小腸上部に寄生する。ほとんど自覚症状はないが、多数寄生の場合に下痢、腹痛を起こす。 感染源は淡水魚 (アユ、シラウオ、ウグイ等) の鱗片下に寄生する幼虫(メタセルカリア) である。

ヒトは幼虫が寄生する淡水魚、特にシラウオの生食やアユの三杯酢等を摂取することで感染する。自覚症状がないので正確な寄生例はわからないが、シラウオやアユの幼虫寄生例から、わが国では一番感染者が多い寄生虫であると推測されている。

肝蛭症
ヨーロッパ、オーストラリアに分布する肝蛭とアジア、アフリカ、ハワイに分布する巨大肝蛭の成虫はウシ、ヒツジ、ヤギ等の草食獣に寄生する大きな木の葉状の吸虫(体長約25mm、体幅約12mm)で、ヒトにも感染する。

高頻度の症状は胆石様の激しい疝痛発作で、発熱、食欲不振、黄疸、毒麻疹等の症状がこれに続く。感染源は水生植物に付着する幼虫(メタセルカリア)である。ヒトへの感染は水生植物( クレソン、セリ、ミョウガ等) のサラダ等による生食や、 不完全加熱調理による食材の摂取による。

さらに肝蛭幼虫を含むウシ肝臓の生食の危険性も指摘されている。人体寄生例は世界でこれまで1,300以上報告がある。わが国では50例以上の報告があるが、ウシ等に多くの寄生例があることから、ヒトへの感染の危険性は大きい。

棘口吸虫症
棘口吸虫成虫はヘラ形で、大きい種、小さい種含め体長2 .5~22mm、体幅2 . 2~ 6 . 5 m m である。わが国には広く分布し、通常ネズミ、イタチ、イヌ等の小腸に寄生するが、ヒトの小腸にも寄生する。

わが国での人体寄生の証明されている種は浅田棘口吸虫、移睾棘口吸虫、巨睾棘口吸虫等5種である。少数寄生の場合自覚症状はないが、多数寄生では下痢、腹痛、幅吐、発熱を伴うことがある。 感染源はドジョウ体内に寄生する幼虫( メタセルカリア) である。 わが国ではこれまで70例以上の報告があるが、感染は主にドジョウの躍り食いによると考えられている。東南アジア一帯でも感染例があるが、感染は淡水産貝の生食によるものである。

4.条虫類感染の寄生虫症
裂頭条虫症
一般的にはサナダムシといわれている寄生虫である. 広節裂頭条虫、日本海裂頭条虫の両種がある。
両種間で成虫の形態が酷似していたため、これまで種の同定に関して混乱があった。成虫は大型で体長5~10mに及び白色のきしめん状で数千の片節(最大幅約13mm)から構成され、小腸に寄生する。

自覚症状としては下痢、腹痛がもっとも多く、次いで吐き気、倦怠感、体重減少等である. 虫体一部の肛門からの自然排出以外に自覚症状のない例が15~30 %存在する。

感染源はサクラマス、カラフトマス、べニザケ、シロサケ、カワカマス等の筋肉内に寄生する幼虫(プレロセルコイド) である。ヒトは幼虫が寄生する魚の筋肉の刺身や寿司等による生食で感染する。

大複殖門条虫症
大複殖門条虫成虫は体長7m前後、体幅最大約30mmで小腸に寄生する. 症状は虫体一部の自然排出の他、下痢,腹痛、吐き気、倦怠感,食欲不振等の消化器症状が主体であるが、裂頭条虫症同様、重篤な症状はない。 感染源は現在まで特定されていないが、感染者からの食歴調査による感染源魚種としてサバ、カツオ、イワシ、アジ、ハマチ、イカ、ヒラソウダ、ウルメイワシ、シイラ等が疑われている。

マンソン孤虫症
マンソン裂頭条虫成虫は広節裂頭条虫に似るが、体長は約80cm と短く、イヌ、ネコの小腸に寄生する。 両棲類,爬虫類,鳥類、哺乳類の体内に寄生する10~50 cmの乳白色で糸くず状の感染幼虫(プレロセルコイド)をイヌ、ネコが摂取すると成虫に発育する。

ヒトが感染幼虫を摂取すると、感染幼虫のまま体内へ移行する。幼虫の寄生部位は皮下組織がもっとも多いが、眼險、脳内,脊髄等に寄生し重篤な症状を引き起こした例もある。皮下寄生の場合、顎口虫症の遊走性限局性皮膚腫脹に似た拇指頭大から鶏卵大の痛痒または無症状の腫瘤を示す。ヒトへの感染源の主なものは、ヘビ、カエル、トリ、イノシシ等の肉の刺身である。

無鉤条虫症
無鉤条虫成虫は体長約5m,最大幅約5mmで、ヒトの小腸に寄生する。症状として腹痛、下痢、腹部不快感を訴えることもあるが、ほとんどは無症状である。ヒトはウシ、カモシカ、ヒツジの筋肉内に被要し寄生する約10mmの球および楕円形の感染幼虫(無鈎嚢尾虫) を、生肉やレアーのステーキ等から摂取して感染する。

有鉤条虫症
有鈎条虫成虫は体長約3m、最大幅約5mmで、ヒトの小腸に寄生する。症状は無鉤条虫症と同様である。 感染源はブタの筋肉内の感染幼虫 (有鉤裏尾虫) を生や不完全加熱調理による料理から摂取して感染する。
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