目次

1.通常のものよりトクホが良い
トクホは予防的意味しかない!

特定保健用食品(通称トクホ)は、「おなかの調子を整える」とか「血糖値の上昇を抑制する」というように、効能・効果の表示が許可された食品です。
本来は、もともと食品中に存在する成分だけを対象とするはずでした。

ところが、97年からは大塚製薬のファイブミニに使われる食物繊維など化学合成品も認められています。

また、薬事法への抵触を避けるため、当初は一般の食品と同じ形態しか許可されていませんでした。しかし1年の保健機能食品制度の施行以降は、カプセルや錠剤の形態も認められています。

トクホの出発点は、84年に文部省(当時)が始めた食品の機能性についてのプロジェクトです。 食品の三つの機能という概念がつくられたのも、このプロジェクトの成果でした。 そして、88年に厚生省(当時)が機能性食品の制度化のために懇談会をつくり、91年に制度化されたのです。

トクホは、効能・効果の表示を許可する条件として、有効性と安全性について人間での臨床試験による証明を義務付けています。

食品に人間での臨床試験を義務付けている制度はトクホ以外に世界的にもなく、画期的であると評価されてきました。 その審査は有効成分に対してではなく、個別の商品に対して行われます(個別認証)。たとえ有効性がある成分が入っているとしても、食品の形態によって成分や組成は変わります。

だから、同じ成分を使っていても、たとえば粉末とミルクや油では消化や吸収のされ方などに変化が生じるわけです。ここに、商品化された食品ごとに有効性を検討する大きな意味があります。

審査を受けて承認された商品には、マークがつけられます審査は医薬品ほど厳しくない医薬品の場合、まずマウスやラットなどの実験動物を用いて、毒性と有効性の試験を実施。 これをパスすると、人間を対象にした臨床試験に入ります。

臨床試験は三段階あり、一段階で健康な人、二段階で少数の患者に対して、安全で有効な用法と用量を調べます。そして三段階で、より多くの患者を対象に、実際の治療に近い形で有効性と安全性を確認します。医薬品の開発にかかる期問は10-20年、費用は平均数百億円程度です。

トクホの場合も、まず実験動物による試験を行いますが、人間による臨床試験は医薬品ほどの厳しさではありません。医薬品の第一段階と第二段階の中間くらいに位置する試験が行われます。

たとえば「食後の血糖値の上昇抑制」では、健康な人と健康診断などで血糖値が高めな人をそれぞれ対象にして、適正用量、過剰摂取の影響、有効性などを調べます。開発期間は3 -10年、費用は数千万-数億円程度です。

2.予防的意味しかない
トクホに関して注意しなければならないのは、あくまで予防的意味しかないということです。

効果があるといっても、その効果は病人を対象にした試験で得られたものではありません。

トクホの試験対象者は、病気予備軍と呼ばれる人たちです。血糖値を例にとると、空腹時の血糖値が、正常値(110mg/de未満)と糖尿病と診断される値(125mg/de認以上)の間の人たち(境界域)を対象にしています。

したがって、糖尿病と診断された患者の場合は、トクホに頼らず、きちんとした治療を受ける必要があるわけです。


高濃度茶カテキン飲料商品
緑茶の渋み成分である茶カテキンもポリフェノールの1つで、近年、その健康効果が宣伝されています。すなわち、「抗酸化作用がある」「コレステロールを低下させる」「抗菌作用がある」「ガンに効く」等々。

緑茶飲料がいろいろ出ているのもそうした背景があってのことでしょうが、中でもひときわ目立つのが高濃度茶カテキン飲料です。トクホマークつきで、「エネルギーとして脂肪を消費しやすくするので、体脂肪が気になる方に」と許可表示がされています。

緑茶に茶抽出物(茶カテキン)を添加したもので、関与成分である茶カテキン量は普通の緑茶のおよそ2倍だそうで、飲んでみるとやはり渋くてちょっと苦い。

「良薬は口に苦し」なのかと思うと急に効果の程度が気になって、トクホの評価データ(審査結果)のほうも見てみました。それによると、「男女別名を対象に、高濃度茶カテキン摂取群とコントロール群に分けてヒト試験を実施した結果、前者は腹部全脂肪、内臓脂肪、皮下脂肪などの点で有意な低減効果を示した」というデータがあり、茶カテキンによる効果が認められたことがわかります。それと、ヒトの脂質代謝試験で脂肪の燃焼効果が上がったというテスト結果もあります。

だが、しかし……です。種々の要素がからまる実生活ではどうか。
ここで、はからずも「人体実験」をして見せてくれたある男性の場合をご紹介しましょう。
職場での昼食時、他の人は普通に急須でいれた緑茶を飲む中、彼だけが毎日このお茶を飲んでいました。外食のときは帰ってから必ず。理由を聞くと「BMIは普通なので、体重はちょっとだけ減らせばいいが、何せ体脂肪が多いので」。

「効くといいわね」とか何とか言って様子を見守っていたのですが、3ヶ月飲み続けた結果は、「体脂肪も体重も減らない」。そして6ヶ月後、「変わらないんですよ」。

ウーロン茶含有ポリフェノール商品
「脂肪の吸収を抑える」をウリにした烏龍茶。トクホには2006年に認定されており、関与成分はウーロン茶含有ポリフェノール(OTPP)です。このOTPPは、ワインに多いアントシァニンや緑茶のカテキンなどと同じポリフェノールの仲間。

烏龍茶は緑茶(不発酵)や紅茶(全発酵)とは違って茶葉を半発酵させて作りますが、その過程で、カテキン類が重合してできる特有の成分があり、その中でもとくに脂肪の吸収抑制効果が高い一部の成分をこう呼んでいるとか。本品の色が濃いのはこのOTPPを含んでいるからですが、さっぱりした味わいとあいまって「濃い色=黒」がいかにも効きそうな感じ。

メカニズムとしては、OTPPがリパーゼ(脂肪分解酵素)の働きを阻害するので、それによって脂肪の吸収が抑えられ、結果として血液中の中性脂肪の上昇が抑制されるということだとか。なるほど!とは思うものの、問題は効果の程度。つまり脂肪の吸収をどの程度抑えられるかです。
そこでトクホの審査基準になったヒト試験のデータを見てみました。

「中性脂肪がやや高め(100~250)の成人男女別名を対象にして対照飲料を高脂肪食と同時に摂取させて調べたところ、摂取3~5時間後の血中の中性脂肪の上昇が有意に抑えられたとのことです。

これを知って驚きました。「脂肪含有量」といったら、成人男性が1日にとりたい脂肪量の3分の2近くです。それほどに脂っぽい食事のときに一緒に飲めば効果があるということ。それなら最初から脂肪分を減らした食事にすればよいと思うのです。「脂肪分を減らす」というのは、その気になれば決してむずかしいことではないはず。


3.トクホに認定する国の基準が間違っている
危ない「トクホ」 花王の人気トクホ(特定保健用食品)の主成分である「ジアシルグリセロール」について、国立がんセンター研究所が「発ガン促進作用の可能性が示唆された」という実験結果を2005年5月に提示した。 同センターによると、「遺伝子組み換えラットの舌において、傾向解析によって扁平上皮がんの促進作用が示唆された」というもの。

実験報告によると、ジアシルグリセロールには「1 ・21DAG」と呼ばれる物質が約20パーセントほど含まれている。これが発ガン促進作用を及ぼす可能性のある物質として指摘されているのだ。 これを受けて、厚生労働省が本格的な二段階発ガン性追加試験に着手することを決め、食品安全委員会も健康影響評価の検討会を開始した。

ジアシルグリセロールは、通常の植物油には数パーセントしか含まれていないが、花王はこれを80パーセントにまで高め、エコナ関連商品に使っている。そのクッキングオイルが98年に、油脂分野で初めてトクホ認定。

「体に脂肪がつきにくい」などの表示が認可され、健康油ブームの火付け役になった。 実は、ジアシルグリセロールの安全性は、2003年に「エコナマヨネーズ」タイプ のトクホ承認時にも厚生労働省審議会で問題になっていた。

トクホとは「身体の生理学的機能等に影響を与える保健機能成分を含んだ食品であって、健康の維持増進及び特定の保健の用途に資するもの」と定義されており、91年から栄養改善法(現。健康増進法)で定められている。

つまりは、医薬品ではないが、体に何かしらの有効性があると厚労省がお墨付きを与えるものだ。

この審議会で、エコナをトクホとして承認する一方、発ガン促進作用の疑いが否定できないとして念のために追加試験の実施が要請され、国立がんセンター研究所での実験となったのだ。

つまり、国は安全性も確認できていないものを、先に「健康にいい」とお墨付きを与えていたのだ。 主婦連合会や、日本消費者連盟などは、「発ガン関連試験の対象品がトクホとして推奨販売され続けるのはおかしい、即刻トクホ承認を撤回するとともに、安全性が確認されるまで、販売停止にするべき」と要求している。

これに対し、花王はホームページ上で、「エコナ製品の安全性については十分に確認しております。ご安心してお使いください」とする見解を発表。

「ジアシルグリセロールならびにエコナの安全性については問題ないと判断している」とし、これまで花王側でおこなった実験や文献調査結果を掲載して、平然と売り続けている。 花王の問題は根深いところにある。

こうした発ガンの疑いがあるものを、国がトクホと認定したため、花王は大手を振って健康機能をパッケージに記載したり、宣伝の謳い文句として用いたため、消費者はこの油は健康にいいとすっかり思い込んでしまったのだ。
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