目次

1.「仮想水」が明らかにする日本の水資源への異常な依存度
牛肉1キログラムの輸入水20.6トンを輸入していることになる。
農産物を生産するには、当然灌概用水を必要とする。また、牛や豚、鶏を育てるには、飼料が必要であるが、その飼料、主にはトウモロコシであるが、その飼料作物を育てるにも灌概用水が必要となる。

牛などの家畜は、その育成に大量の飼料を必要とするから、その大量の飼料を生産するために大量の水が必要になる。このように農産物や牛などの畜産物の輸入は、それらの生産や育成に使った「水」を輸入したことになる。

このような考え方を仮想水(バーチャル・ウォーター)といい、この仮想水に基づいて日本がいかに水を輸入しているかを明らかにしたのが、東京大学生産技術研究所である。
試算によると農産物の輸入だけで、日本は408億トンの水を輸入したことになるのである。

そして、畜産物についても、鶏肉、豚肉、牛肉1キログラム当たりどの程度水資源が必要か試算し、鶏肉は4.5トン、豚肉は5.9トン、牛肉で20.6トンの水がそれぞれ必要となることを明らかにした。日本の畜産物の輸入だけで、223億トンの水を輸入したことになることが明らかになった。

2.631億トンの水を輸入
そして、農産物と畜産物の輸入で総計631億トンの水を輸入したことになる。
それは、日本国内の年間灌概用水使用量の590億トンをはるかに上回る水が輸入されたことになる。このことは、日本が世界の水資源に依存することによって農畜産物の輸入を実現している現実を明らかにしたのである。

しかし、世界の水資源は、決して楽観できる状況ではない。1997年の国連事務総長報告「世界の淡水資源についての総括的アセスメント」によると、水不足の状態に置かれると予測される人口は、2025年には全世界の人口の約3分の2になるとしている。全世界の約3分の2の人口が水不足にさらされているときに、日本が世界の水資源に依存することが許されるのであろうか。

さらに地球温暖化の進行は、干ばつの頻発を招くとも言われている。
現に06年に、オーストラリアで地球温暖化によるとされる大規模な干ばつが起こり、オーストラリアの小麦生産を激減させ、日本への小麦輸出に影響を与えたのである。農畜産物の輸入依存を続けることができなくなる日が来る可能性があるのである。

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