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購入場所としてスーパーと比較したホームセンター・ドラッグストアの位置づけ
目次
1.食料品購入場所の変化
かつては、町の中心に商店街があり、にぎわっていた。そこには青果店、鮮魚店、精肉店といった食料品店があり、生鮮食品を中心に販売していた。昭和30年代に米国から導入されたスーパーマーケットが開店すると、たちまち日本中に広がりをみせた。1箇所ですべての買い物をすますことができること、品物が豊富なこと、売場がきれいなことなど主婦を引きつける魅力が多数あったからである。さらに、当初は一般小売店よりも廉価であった。当初はと断ったのは、その後必ずしも廉価ではなくなったからであるが、そのことにここではふれない。
そのために、年々スーパーマーケットの利用は増加し、現在は一般小売店の食料品販売シェアは14%まで縮小している。
スーパーマーケットの特徴は、商品代金の精算をレジで行うことである。レジ精算という。これに対して、一般小売店の精算は、販売員と直接行う。対面販売という。レジ精算と対面販売では、融通性に差がある。レジ精算では、精算を効率的に行うために商品の価格にばらつきがないことが求められる。
たとえばトマトが1個1個価格がバラバラであれば精算しにくい。自ずと商品の品質に均一性が求められる。これが、対面販売であれば、個々に値段を決め、販売することが可能であるので、品質がバラバラでもかまわない。このことからスーパーマーケットに陳列される商品は、個性がない同品質なものが並ぶことになる。
やがて、それは生鮮食材の品種の単一化をも生み出している。そんななかで、品質の均一化の最たるものが加工食品である。たとえば、生鮮のマグロの身には品質のばらつきがあるが、これらを混ぜて刺身盛り合わせにすれば、品質は均一化する。販売する側にとっても、購入する側にとっても都合がよい。こうして、だんだんと中食が増加していく。ちなみに、尾頭付きの魚は生鮮食品だが、刺身盛り合わせは法律上、加工食品である。
2.ホームセンターとドラッグストア
21世紀になると、スーパーマーケットの競合相手として、「ホームセンター」、「ドラッグストア」など新興のチェーンストアの台頭がめざましく、一部食品の取り扱いをめぐって、スーパーマーケットと激しく競合するようになっている。以下では、これら新興のチェーンストアの概要を述べて、これらが食品小売の担い手として無視しえない存在であることを確認しておく。消費者の日常生活を営むうえで必要とされる「衣・食・住」のうち、「食」生活の供給を引き受けたのがスーパーマーケットである。これに対して、 日常的な「住」生活の供給を引き受けようというのがチェーンストアとしてのホームセンターである。
「住」生活対応の専門業種店には、かつては「家具」、「建具」、「畳」、「金物」(鍋、工具など)、「荒物」(ほうき、ざるなど)、「陶磁器・ガラス器」などの小売店があった。これらも各種の「食料品小売店」と並んで「商店街」に多く立地していた。ホームセンターは、住関連のこれらの業種商品を糾合して、「ワン・ストップ・ショッピング」を可能としたうえで、かつ品ぞろえが圧倒的に多い「住関連」大型小売店として、1990年代以降に急増店した(それ以前では「ドゥー・イット・ユアセルフ」の店と呼ばれていた)。
ホームセンターの品ぞろえでスーパーマーケットと直接に競合する商品群としては、「台所用品」をはじめとして、以下のようなものがある。これらの場合には、スーパーマーケットよりもホームセンターのほうが、品ぞろえが豊富であるので、スーパーマーケットのシェアが侵食されているとみなければならない。
まず、飲料や菓子などの加工食品がある。ホームセンターの立地は、郊外が基本であり、消費者は自動車で来店することを想定している。飲料や菓子などの加工食品は、生鮮食料品と違って日持ちがするので、まとめ買いしやすい。
とくに、飲料は重量がかさむので、自動車での買い物ついでに、まとめ買いしておけば、便利である。
次には、食品ではないが、スーパーマーケットでも扱いが一般的である洗剤など台所用品、歯ブラシなどの日用品、またスーパーマーケットでは扱いが薄い弁当箱や食卓まわり用品がある。
そして、ペットフードである。ペットフードは、スーパーマーケットでも取り扱いが一般的な基本商品分野である。
さらには、屋外園庭でのバーベキューセットの道具やガステーブルなどもある。これらはスーパーマーケットでは、通常取り扱いがないが、広い意味での食卓まわりの用品である。
ホームセンターとスーパーマーケットとの店舗条件の違いは、通例ホームセンターのほうが売場面積的に広く設定されるために、同じ分野で品ぞろえすると、種類を多く置けることである。また、荷姿も1個単位にしないで箱ごと積み上げることも可能である。そのために、分荷のためのコストなどを不要とする分を価格に反映させて、スーパーマーケットよりも低い販売価格を設定しようとしている。
スーパーマーケットは、生鮮食料品を中核に品ぞろえして陳列するので、前記のように売場の背面に下処理場(バックルーム)を用意しなくてはならない。また、消費者の買い物もほとんど毎日とか1日おきとかの高い来店頻度を想定している。
そのために、店舗サイズの範囲も広くし過ぎて買いやすさを逸脱しないようにしなければならない。これに対して、ホームセンターでは、頻度高く利用する人でもせいぜい週1回程度を見込んでおけばよく、大半は月に1回程度とすると、一度のまとめ買いを奨めるような商品陳列が有効なのである。
ドラッグストアも、1990年代以降に急増店したチェーンストアである。
ドラッグストアは、消費者の心身の健康をサポートするという役割を担おうという業態である。したがってここでは、健康食品、特定保健用食品(通称トクホ)などは、品ぞろえの本筋であり、スーパーマーケットとは比較にならないほどの豊富な品ぞろえを確保している。
なにより、サプリメント(栄養補助剤)の品ぞろえと供給においては、ドラッグストアは最も主要な小売チャネルである。また、飲料や菓子など加工食品も多く品ぞろえしている。さらに、歯ブラシなどの日用品も、健康グッズあるいは病気予防グッズの観点から、それなりに品ぞろえの幅を広げて、ドラッグストアにおける得意分野としている。
同様に、石けんや洗剤なども、化粧品、医薬品との中間的な商品として、幅広い品ぞろえがある。以上のように、1990年代以降に全国で増店を続けたホームセンター、ドラッグストアなど新興のチェーンストアは、その品ぞろえの基本として、食品の取り扱いを必須とする小売業であり、またそこにはスーパーマーケットにはない特有の品ぞろえの考え方がある。したがって、ホームセンター、 ドラッグストアは、食品市場の一角を担うしっかりとした業態のチェーンストアであると位置づけることができるのである。
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