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活け締めや活魚には養殖が多く肝心なのは育った環境

活け締め魚と天然魚は殺し方より肝心なのは育った環境
魚の品質を表す言葉には紛らわしい言葉が多い。「活け締め」や「活魚」もその一つだ。ただ、「活」の字がつけば、どんな魚でも新鮮でおいしくて安全だと思ってはいないだろうか。

また、「活け締めや活魚と表示している魚は天然で、当然、生だ」と思ってはいないだろうか。実はそれは、単なる思い込みでしかない。

「活け締め」とは、鮮度を保つために、輸送の途中で死なないように魚を数日間絶食させたり、あるいは生け簀で飼っていた魚を殺すことをいう(「野締め」ともいう)。

一方、活魚は、生きた魚ということだが、主に養殖で育てた魚のことを指し、天然の魚が活魚で流通するということはあまりない。

JAS法の水産物品質表示基準では、養殖について、「幼魚等を重量の増加または品質の向上を図ることを目的として、出荷するまでの間、給餌することにより育成することをいう」と定義している。

活〆が生け簀で飼っているということは、この養殖となんら変わらない。とも天然とはいえないのだ。しかも、料亭や割烹でそのまま出せば生かもしれないが、小売店の店頭に並ぶ前に冷凍していれば生でもない。

つまり、活け締めという殺し方は、たしかに鮮度を長く保つ効果はあるかもしれないが、それと天然や生とは関係ないのである。活け締めはとくに、タイやヒラメといった高級魚に表示されていることが多いが、そのほとんどは養殖だ。

しかし、なかには養殖とも天然とも表示していないものもある。本来、天然でないものには「養殖」という表示をしなければJAS法違反だ。ところが、せっかく「活け締め」でイメージアップを図っているのに、「養殖」の表示でイメージダウンさせては元も子もないという事情があるからだ。

鮮魚で一番大切なことは、殺し方ではなく「どこで生きていたか」「どんな環境で育っていたか」である。生け簀で長期間飼っていれば、まさに養殖だ。養殖は、狭いところで飼っているので、病気の心配がある。「殺菌剤や抗生物質を使っていないか」「人体に影響のある餌を使っていないか」といった不安が常につきまとう。

海や川で捕れた天然ものがすべて安心だとは限らないが、養殖されたものよりは安心できるはず。もちろん、活け締めより天然のほうが安心だ。


アジとカツオでは法律上の分類が違う
アジのたたきとカツオのたたきは、スーパー等の鮮魚売り場ではどちらも刺身コーナーで販売していることが多いが、法律上の分類はまったく違う。

JAS法や食品衛生法では、鮮魚や精肉、青果などを、切ったり冷凍したりしただけのものは生鮮品、火を通したり塩を振ったりすると加工品に分類している。アジのたたきは、生のアジを細かく切っただけなので当然生鮮品の分類になる。

ところがカツオのたたきは、表面を火であぶるので加工品になるのだ。では、生鮮品と加工品では、どんな違いがあるのだろう。

JAS法では、生鮮品には原産地と「解凍」や「養殖」の表示を、加工品には原材料表示を義務づけている。このため、アジのたたきには原産地が必ず表示されている。どの海域で捕れたのか、あるいは日本のどの港に水揚げされたのか、あるいは輸入品なのかということが、必ずわかるのだ。

また解凍物であれば、解凍表示もされている。今のところ養殖物はないので、養殖という表示はない。ただし、マグロに続いて、サンマの養殖物が出回る日も近いようなので、将来アジが養殖されるようになっても不思議ではないが。

一方カツオのたたきは、加工品のため原産地表示の義務はない。しかも加工品の場合は、最後に加工した場所が産地になる。カツオのたたきなら、カツオが捕れた場所ではなく、火を通した場所(地域)が産地になるのだ。

これと似たものに、ウナギの蒲焼きがある。ただしウナギの蒲焼きの場合は、輸入品も多いため、2002年(平成14年)からは原材料(ウナギ)自身の産地表示も義務づけられることになった。

だがカツオのたたきは対象外だ。輸入品だろうがなんだろうが、国内で火を通せば国産カツオのたたきになる。どこで捕れようが、高知で火を通せば高知産になるのだ。

もう一つの問題は、鮮度にある。カツオに限らず、冷凍技術や冷凍設備の進歩で、今や鮮魚の半数、ものによってはそれ以上が冷凍物になっている。カツオも半数は冷凍と思って間違いない。

とくにカツオをたたきにする場合には、冷凍物で作られることが多い。冷凍物を解凍して火を通してしまえば加工品になるので、解凍表示の義務もなくなるからだ。

ただし、生のカツオをたたきにするのと、解凍物をたたきにするのとでは、味も鮮度も大違いだ。こうしたことから、鮮度や産地が確かという点で、アジのたたきのほうが安心して食べられるのだ。




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