メニューに使われる食材の賞味期限は店側が決める

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賞味期限は店側が決める
せっかく仕入れた食材を、いかに無駄なく使いきるか。店の経営を左右する大問題だ。レストラン業界の隠語に「アニキ」「オトウト」というのがある。

使おうとしている食材に古いのと新しいものがあったら、古い食材は「アニキ」、新しい食材は「オトウト」。たとえば新米のシーズンになると、新米を「オトウトの米」、今までの米を「アニキの米」と呼ぶ。
「アニキ」をどううまく使い回して調理するかは、料理人。シェフの腕が試されるところでもある。
問題は、肉や魚のアニキたち。通常、冷蔵保存した肉の賞味期限は鶏肉で2~3日、豚肉で4~5日、牛肉で1週間ほどと言われる。しかし、賞味期限を少々過ぎても、ベテランの料理人がにおいをかいで「大丈夫」と判断したら、捨てないで使いきるところが多いようだ。

牛肉なら仕入れた直後は生肉のまま刺身やユッケ、次にしゃぶしゃぶ、すきやき、ステーキ、焼き肉などに出す。素材そのままで勝負するには味が落ちてきたら、浸けダレにつけて味付け肉として使用する。
もっと鮮度が落ちたら?

「そろそろ限界かなと思ったら、スパイシーな鍋モノの具材にします。多めに香辛料を入れて混ぜ合わせれば、はやりのピリ辛鍋になりますから。たとえば唐辛子をきかせたチゲ風鍋とかね。
ちょっと値段を安くして『本日の限定スベシャルメニュー』として出せば、よく売れます」(大手チェーン和食店従業員)

冷凍庫を整理していたら、奥の方からいつのものかわからないアニキ肉のカタマリが出てきた。そんな時は、シチューやカレー系の煮込み料理になる。
そして、最後はミンチとなり、ハンバーグ、ミートボール、ギョーザなどのひき肉料理に変身する。とりわけミートボールは、濃いソースをたっぷりからめることが多いからはっきりと肉の味はわかりづらい。

魚の場合も、刺身←焼く。蒸す。さっと煮る。煮付ける、となる。大衆居酒屋のお通しでよく出てくるまぐろやカツオの「大和煮」は、典型的なリサイクルメニューの場合が多い。甘辛味でしっかり煮つけて、毒消し役のしょうがもたっぷり入れるから、古くなった「アニキ」でも使うことはあるという。カレー味も、におい消しに最適なのだそうだ。

「イタリアンの場合は、ミートソースともうひとつ、魚介類を刻みこむラグーソースもあり、ランチ用のパスタなどにも使えます」
フレンチも含めて、ヨーロッパの料理は香草がたっぷり使われ、ソースも煮込み料理も種類が多く、マリネ(酢漬け)、くん製など保存食の技術も多彩だから、アニキを使い切るのに和食ほどは苦労しないようだ。

あまり知られていないが、牛肉、豚肉の切り立ての肉はやや黒ずんだ赤色をしている。食肉中に含まれるミオグロビンという色素タンパク質が空気に触れることにより、酸化して鮮紅色になるのだ。

しかし時間がたって黒くなるのは、細菌が増殖して腐敗しはじめている古い肉。高級ステーキ店などで牛肉を冷蔵庫で2カ月も熟成させる場合などもあるが、それはきちんと管理をした上での下ごしらえ。調理時にはまわりの使えない部分はすべて捨てるという。
しかし、食肉業者の段階で、古い肉に発色剤を振りかけて鮮紅色に変えられたりするご時世だから、それほど気にすることでもない。



お通しは勇気をもって拒否しよう
「お通し」は本来、客の注文した料理が調理場に通った印として店が出す簡単な一品のこと。類似される「突き出し」「先付け」は日本料理のコースで最初に出てくる酒の肴のこと。どちらにしても店に入って最初に口をつける料理には違いないのだが、これも店によって雲泥の差がある。

お通しの平均単価は200~500円だが、チェーン系の居酒屋では、この料金はほとんど席料とみなされていると言っていいお粗末な内容である。よくあるのが業務用のきんぴらや、味付けもやしをそのまま盛っただけのもの。この場合、原価は10円ほど。さらにポップコーンなどのスナック菓子にすればさらに安くなるという。

チェーン店にとってお通しの売り上げは、平均客単価を左右し、なくなれば経常利益が5%は違ってくるという大きなものなのだ。だが食べたくないものに金を払うくらいなら、その分もう1杯飲むなり別のことに使いたいというのが客側の正直な感想だろう。

強制的にもってこられるので断りにくいが、いらなければ勇気を出して「お通しは入りません」と言ってみることだ(大手居酒屋2大チェーンは最初に言えば断ることが可能)。断れなくても種類を変えてくれたりすることもある。

本来、お通しとは手前どもではこんな味の料理を出しておりますという、挨拶代わりの一品。客がお通しを美味しいと思えば、後に続く飲み食いも活発になり売り上げにもつながる。このことをふまえて残り物ではない自家製のお通しを出す店は、良心的な良い店と言える。逆に残り物やビニール袋キロいくらの惣菜を出しているところは、あまり信頼できる店ではないだろう

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