目次

1.日本が輸入している食品輸送にかかるCO2排出は規制対象外!?
食品輸送とCO2規制

食料輸入によるC02排出
1997年12月に京都で開催された「気候変動に関する国際連合枠組み条約」第3回締約国会議で採択された京都議定書では、2008年~2012年のCO2など温室効果ガスの年間排出量の平均を1990年を基準年として5.2%削減することとした。

しかし、この京都議定書には、大きな残された課題があった。それは、この温室効果ガスは、陸上発生源からの温室効果ガスに限定されており、国際運輸にかかわる外航船舶と航空機から排出される温室効果ガスは対象外となっている点である。

そのため、京都議定書では、その第2条で「締約国は、国際民間航空機関及び国際海事機関を通じて作業を行い、それぞれ、航空機燃料及びバンカー油から排出される温室効果ガス(モントリオール議定書によって規制されているものを除く。)の抑制又は削減を検討しなければならない」とされ、検討課題とされたのである。

結局、日本は世界最大の食料輸入国で、フードマイレージで5000億t/kmもの食料を輸入しているにもかかわらず、その輸送に伴って排出される温室効果ガスは、京都議定書の規制対象外となっているのである。

しかしながら、私たちは、国際運輸にかかわる温室効果ガスが京都議定書の対象外だからといって、地球環境に与える影響を無視し続けるわけにはいかない。現に、国際海事機関(IMO)で、外航船舶からの温室効果ガスの排出に関する検討を行っことになった。そこで、国際運輸にかかわる外航船舶と航空機から排出される温室効果ガスが、どの程度のものなのかを探っていきたい。

環境省地球環境局は、2001年1月30日に「運輸部門からの1998年度二酸化炭素排出について」との文書を国会に提出した。そこでは、わが国のCO2総排出量のうち、運輸部門の排出量が2億5700万tで、全体の21.7%を占めるとした。そして、国際航空・船舶からのC02排出量は、国際航空が1830万t、国際船舶が1870万tであることを明らかにした。

2.日本の運輸部門の排出量の45.4%に…
しかし、この環境省によって明らかにされた国際航空・船舶からのCO2排出量は実態より少ないものになっている。それは、外航船舶の場合、給油は日本国内と海外とでなされるわけであるが、環境省は、計算の根拠として、日本国内での給油分しか見ていないからである。

外航船舶の1998年の国内給油分は原油換算で327万6000回であるのに対して、海外給油分は1042万5000回にもなる。この海外給油分も含めて計算をすると、外航船舶のC02排出量は、7820万tにも及ぶ。

国際航空の場合も同様に国内給油分しか見ていない。国際線の1998年の国内給油分は原油換算で296万2000回であるのに対して、海外給油分は326万8000回にもなる。外航船舶と同様に国際航空について海外給油分を含めて計算するとC02排出量は3850万tとなる。

結局、海外給油分を含めて計算し直すと、国際航空・船舶からのCO2排出量は、1億1670万tにもなり、日本の運輸部門のCO2排出量の45.4%にも及ぶのである。そして、それは、日本のC02総排出量の約10%を占めることになる。

日本の輸入貨物の総重量は、2001年で7億8946万tで、そのうち輸入食料の総重量は5774万t、輸入貨物に占める重量割合は7.3%である。その割合で食料輸入による1998年のCO2排出量を推定すると約852万tに及ぶことになる。

ただ、これあくまでも重量割合で推定しているだけで、実際の正確な試算をするなら、輸入食料の船舶数と航空機数を正確に把握し、排出量を計算しなければならない。

ただ食料は、穀物にしろかさばるものが多く、原油や鉄鉱石などの質量の高いものに比べて、輸送の船舶数は多くなるはずである。


また、食料は輸入価額の高いものは、輸送重量当たりのCO2排出量の多い航空機による輸送比率が高い。そうであれば、CO2排出量は、推定値より高くなることは明らかである。

外航船舶から排出される温室効果ガスはCO2に限らず財団法人シップ・アンド・オーシャン財団は、2001年6月に「船舶からの温室効果ガス(CO2等)の排出削減に関する調査研究報告書」を発表した。

この調査研究報告書では、世界中の外航船舶によって排出されるC02排出量は、世界中のC02排出量の1.7%を占めることが明らかにされた。そして、この外航船舶によって排出されるCO2排出量は、フランス1国から排出されるCO2排出量に相当するとしている。

また、注目される点として、冷蔵・冷凍コンテナ船からの代替フロンガス(H FCs)の漏洩が年間で約3100~ 5100tにも及ぶ可能性があることを明らかにしたことである。

この冷蔵・冷凍コンテナ船からの温室効果ガスである代替フロンガスの排出量は、外航船舶から排出される温室効果ガスの1.2~ 2.2%を占めていると推定している。また、冷蔵・冷凍コンテナ船の増加量は、コンテナ船の増加量を上回っていることから、代替フロンガスの排出量割合は今後も増加するとされている。

2000年の日本の食料輸入のうち、大づかみに見て穀物専用船で輸入される穀類2764万4000tと豆類516万5000t(大豆についても納豆や豆腐などの原料用はコンテナで輸送される)を除く2544万8000tが、コンテナ船で輸入されているといえる。特に、野菜300万2000t、果実484万3000t、肉類275万5000tなどは、冷蔵・冷凍コンテナ船で輸入されており、この点からも冷蔵・冷凍コンテナ船からの代替フロンガスの排出は、食料輸入大国日本に帰属する大きな問題である。





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