目次


1.種類も名称もさまざま
健康食品はさまざま

一口に健康食品といっても、イメージするものは人によって違うでしょう。黒酢や雑穀のような、見た目は一般の調味料や食べ物とほとんど変わらず、なんとなく健康によさそうだといわれている商品、ビタミン剤など栄養補給用のサプリメント、ガンを治すなど病気への効果を宣伝しているもの。 実に幅広い種類があります。

商品につけられている名称も、 特定保健用食品」「栄養機能食品」「栄養補助食品」「栄養調整食品」「健康補助食品」「サプリメント」など多種多様

いずれも、なんとなく一般の食べ物より健康によさそうだと思わせる名称です。
でも、そもそも特別に健康によい食品とは、何を意味しているのでしょうか?

すべての食べ物はもともと健康食品
食べ物には3つの機能が備わっているといわれています。
①第一の機能=炭水化物、タンパク質、ビタミンなど、生きていくために必要な栄養の摂取源。
②第二の機能=味や香りなど食事を楽しむ。
③第三の機能=抗酸化作用、免疫力の強化、血圧や血糖値の調整など、体調を整える。


2.栄養素補充型と薬効期待型
市販されている健康食品は、 栄養素補充型と薬効期待型に分類できます。

栄養素補充型は、ビタミン剤やミネラル剤など、食生活の乱れによって必要な栄養素が不足した場合の補充を目的としたものです。きちんとした食生活ができていれば、摂る必要はありません

薬効期待型は、血糖値を下げる、ダイエット、生活習慣病やガンの予防や治療などの効果を期待して摂取するものです。

果物として食べるグァバの葉に含まれるポリフェノールによる血糖値の低下効果、ウコンの肝臓保護作用、グルコサミンの膝関節治療効果、アガリクスのガンへの効果など、たとえ食生活がきちんとしていても、それだけでは得られない薬効が期待されています。

しかし、薬効を期待させるような表示は本来、医薬品にしかできません。医薬品は、薬事法で以下のように定められています。

1、日本薬局方に収められている物
2、人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物
3、人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物

つまり、「病気の治療や予防」だけでなく「身体の構造又は機能に影響を及ぼす」目的をもって使われるものは、医薬品なのです。

直接病名を出さなくても、「血糖値を下げる」とか「抗酸化作用で細胞を活性化」「老化防止」などの表現も「身体の構造又は機能に影響を及ぼすこと」に該当するので、医薬品的表現とみなされます。

医薬品は、使い方によっては毒にもなるというのが前提なので、販売前に有効性や副作用などの安全性が審査されて、承認されなければなりません。

医薬品と違い、食品はもともと安全であることが前提なので、事前に安全性審査などは必要とされていません。だから、何の規制もせずこうした薬効を期待させるような表示や宣伝を食品に認めるのは、たいへん危険です。

3.食品に効能表示できるのは保健機能食品だけ
そこで国は、一般の食品と区別し、特別に薬効を表示できる食品として、「特定保健用食品」(通称トクホ)を91年に定めました。人間に対して本当に効果があるのか、安全性に問題はないのかが個別の食品ごとに審査され、許可されています。

さらに01年4月1日には、栄養素補充型用に「栄養機能食品」を新設しました。これは、ビタミンやミネラルのように、栄養素としての動きや必要な摂取量が科学的に解明され、成分の効能表示ができる食品です。適切な量の範囲であれば安全性は高いので、個別の成分について国が定めた規格基準(含有量など)に従っていれば、許可や承認の必要はありません。

そして、この2つをあわせて「保健機能食品制度」を施行したのです。
それ以外の「栄養補助食品」「栄養調整食品」「健康補助食品」「サプリメント」などは、便宜上「いわゆる健康食品」と呼ばれます。基本的に一般食品と同じ扱いで、有効性や安全性の審査も受けていませんし、栄養素としての必要性も認められていません


4.「あやしいサプリメント」が、健康被害を起こす
ここ数年、急速な伸びを示しているサプリメントの需要。いまや国内市場は四千億円とも五千億円ともいわれている。しかし、広告の謳い文句を鵜呑みにして、やみくもに飲んでいたのでは効かないどころか、体の害になることもある。

「サプリメントは、栄養補助食品などいろいろな名称で呼ばれていますが、日本語にすると健康食品であり、法律上は食品です。しかし、 一般の消費者は、サプリメントは医薬品と食品の中間のように捉えている。医薬品と違うから副作用の心配もない、安全である程度の効果があるだろうと都合のよい解釈をして気軽に飲んでしまう傾向があります。

でも、安易な服用は重大な健康被害を引き起こすことになる。なぜなら、サプリメントの中には、近年まで医薬品となっていた成分もあるからです。そんな成分を過剰に摂取したらどうなるか、当然、副作用が出てくる可能性がある。


5.メリットのみ強調する企業
これら、医薬品から食品に移行されたサプリメントを調べたところ、医薬品としての基準量をはるかに超えた摂取量を勧めているメーカーが多い。

厚労省は、医薬品を食品に移行する際に、「薬品としての基準量を超えないように」と通達を出している。しかし、この通達を無視して量を定めているメーカーもある。

どのサプリメントに関しても、科学的根拠がなさすぎる。CoQ10が老化防止や疲労を防げたという学術的な研究報告なども、調査では見つからなかった。

しかし、業界はもちろん損になるような情報は出さず、よい面ばかりを強調して消費者にアピールする。結果として、マイナス面の情報は、消費者に届かないまま、市場にサプリメントが出回ってしまっている。また、医師や化学者の中にもメーカー側からの依頼を受けて、プラス面ばかりを誇張して研究データをまとめる者も少なくない。

さらに、多くの商品は原材料レベルでのデータしかなく、肝心の商品を摂取した際のデータなどないものが溢れている。原材料がどんなに優れていても、含有量が極端に少なく、添加物が混入されていれば効果は期待できないものだ。

「あいまいなデータが宣伝に利用され、消費者はすっかり信じてしまう。一般の人がサプリメントの情報を得るのは、テレビや雑誌、広告などで、医師や薬剤師などの医療の専門家から情報を得ることなく、サプリメントを購入してしまいます」

東京都が実施した医療機関への健康食品に関するアンケートによると、サプリメントが原因で体調を崩したと思われる患者を診たことが「ある」と答えたのは、全体の3割にものぼっている。

このことからも、サプリメントの健康被害者は、かなりの人数にのぼっていると考えられるのだが、国に報告がいかないのは理由がある。厚労省は医療機関に、健康食品による健康被害情報を提供するように02年に通達を出していたが、アンケートによると、この通達を知らなかった医師が七割にものぼっていることがわかった。また、診察の際に患者がサプリメントを利用しているかどうか確認をとっているのは4割の医師だけだ。

これではサプリメントの健康被害の実態が把握できるわけがない。
東京都が公表したサプリメントを含む健康食品の表示実態を具体的に調査した「健康食品行政指導」の報告書を見ると、驚くことにその九割の商品に違反が見つかって行政指導の対象となっている。

違反の多くが、消費者に誤解を与える商品説明をしている「不当表示」だが、「使用上の注意」の表示に関しても問題のある商品が八割にも達していた。
容器包装に摂取量の目安は示されているものの、妊婦や産婦に限られた回避。禁止表示しか明記されておらず、そのほかの疾患を持つ人に対しての使用禁止表示が書かれていない商品がほとんどだった。

6.健康食品の問題点
今や健康食品は2人に1人どころか、3人に2人は利用しているといわれるほど。
健康食品を利用している人にとっては、何がそんなに問題なの?と思う方もいることでしょう。もう少し詳しく、健康食品の問題点をあげてみましょう。

安全性と品質は大丈夫か
健康食品というと、基本的に大切なのは安全性と品質です。独立行政法人「国民生活センター」(消費者庁所管)では健康食品について種々のテストを行っています。
そのテスト結果を見ると、うたわれている有効成分が入っていなかったり、品質や安全性の点で問題のある品がたくさんあることがわかります。
ここで1例をあげますと、2007年2月号の『たしかな目』に「高麗人参を主原料とする健康食品」の場合が載っています。

それによると、「有効成分ジンセノサイドは商品により大きく異なり、医薬品との境界も暖昧だった。残留基準を上回る農薬が検出された品もあり、品質もまちまち」と報告されています。
また数からしたら多くないかもしれませんが、発疹や下痢、アレルギー性の疾患、あるいは肝機能障害などの健康被害も耳にしています。一般食品でも安全でないものはあるにしても、少なくとも健康になりたくて利用する健康食品で健康を害したくはない。したがってその成分の純度や配合成分も含めて、安全性に不安があるようなものはあえて口にしたくないと思うのです。

やはり健康食品としての法規制がないのが、一番の問題なのでしょう。
また、量のことも気になります。「摂取目安量」は書いてありますが、過剰に摂取したらどうなるか。とにかく、いろいろと不安
がつきまといます。

取材中に、「添加物の塊のような加工食品は食べたくないので」といいながら、サプリメントを何種類も飲んでいる女性に出会いました。サプリメントこそ食品添加物の塊なのに(原材料欄の表示をみると明白)、誤解もいいところです。

添加物については、有用なものも多く、またプラス面も承知しているつもりですが、普通の食品でもなるべく加工度の低いものが好ましく、「自然が一番!」と思う私にとっては、添加物を使ってあれこれの加工を施したサプリメントは好ましくない。また広告で「これは自然のものだから」というのをよく見かけますが、それはそれで品質的に信用できないものが多い気がします。
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