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日本人が1年間に食べた「食」の総額と量について
目次
1.日本人が1年間に食べた「食」の総額と量について
日本人が1年間に食べた「食」の総額は80兆円である。これは10年前と比べて1.4倍。20年前と比べると2.6倍になっている。不思議なことに、この金額は国家予算とほぼ同額である。80兆円の食の内容をみると、生鮮食品が20%、加工食品が50.5%、外食が29.5%となっている。
生鮮食品とは、農業・漁業、いわゆる第一次産業から何ら加工されずに、素材形態で消費者家庭に入ってくるもので、野菜、果物、精肉、鮮魚等である。加工食品とは、製菓・製パン、牛乳・乳製品、かまぼこ・はんぺん等のように、第一次産業で収穫・漁獲された素材品を原料として加工して消費者にわたる食品である。外食とは、消費者が飲食施設や給食施設、あるいは宿泊施設等に出向いて口にするものである。
一般に、消費者は素材品である生鮮食品を購入し調理して食べるか、加工・調理した加工食品を食べるか、あるいは、家庭の外に出て外食するかして、自らの生命を維持しているのだ。
食の内容別にみて、最大の部門は加工食品である。食市場80兆円のうち、実に半分以上を加工食品が占めているのである。しかもその位置を年々高めているのだ。
以前は、生鮮食品である素材品を購入して、家庭で調理して食べていたが、今日では、加工したものあるいは調理したものを購入して食べているのである。加工食品は、多忙な現代人にとってきわめて便利な食べものなのだ。
食市場のもう一つの特色は、外食の増加である。1970年代には、生鮮食品よりも小さな部門であったが、今日では生鮮食品を上回り、加工食品に次ぐ部門となっている。これは、調理の必要がないうえに後かたづけの必要もなく、きわめて便利なのだ。
20世紀の後半、特に1980年からの20年間で、食市場は大きく変化したが、その最大の変化は、最終消費が、生鮮食品から加工食品、さらには外食に移行したことである。
なお、注意しなければならないことは、精米・精麦等の精穀部門と食肉のと畜部門、それに冷凍魚介部門が加工工程でなく、生鮮工程として取り扱われている点である。これらの工程を加工とみると、加工食品の割合はさらに高くなる。
2.日本人が1年間に食べる量
日本国民が1年間に食べている量は、食料の国内消費仕向量のうち人間が直接食べる量6600万トン弱(平成7年)を人口1億2600万人で割ると1人当り約520キログラムになります。これを365日で割ると1人1日1.4キログラム程度になります。この1人1年間500キログラム強の数字は、通常純食料と呼ばれるもので、直接人間が食べる量を指しますが、日本の食料の全消費量の中には、この純食料の他に家畜の飼料や加工用の原料などが含まれ、これらをすべて加算した量が日本の全食料消費量です。この全食料消費量は、1人1年間1トン弱です。いいかえると、日本では、人が直接食べている量に近い量が、家畜の飼料や加工用原料に使われていることになります。
世界の食料消費量は、FAO(国連食糧農業機関)の資料から計算すると1995年では、世界全体で1人当り450キログラム程度になりますので、日本の1トン弱の半分程度です。すなわち、日本人1人が外国の2人分の食料を消費していることになります。日本人は大変豊かでぜい沢な食生活をおくっているといえます。
しかし、日本人の純食料消費仕向量が500キログラム程度になり、供給カロリーでも1人1日2600キロカロリーになったのは、日本の経済が発展した最近の20年以内と報告されています。
それ以前に遡ると、第2次大戦後日本人は、厳しい食料難を経験し、さらにその昔は、きわめて貧しい食生活を営んでいたようです。昔の貧しく質素な食事は、「1汁1菜」すなわち、みそ汁1杯とおかず1品という言葉に表わされています。「1汁1菜」でも庶民にとっては、結構なメニューであったようです。
現在の豊かな食生活の時代を「飽食の時代」と呼んでいるのはまことに適切な表現です。さらに、単に「飽食」というだけでなく、日本人の食事の栄養のバランスすなわち、P(たん白質)、F(脂質)、C(炭水化物)のバランスが良いといわれています。
このように、量・質ともに豊かな食生活を調歌できるようになったのは、日本の経済力が強くなり、日本で消費する食料の半分以上を海外から買うことができるようになったのが最大の理由です。
では、今後はどのようになるのでしょうか。私達日本人も、周囲を見直し、世界の流れを知っておかねばならない時を迎えつつあるようです。
現在世界には8億人以上の飢餓や栄養不良に苦しむ人々がおり、1996年に開かれた世界食糧サミットにおいても、この対策が主要な議題であったと報道されています。また、世界の耕地面積は増加しておらず頭打ちか減少の傾向といわれており、一方、世界の人口は増加が続いており、とくに中国、インド、東南アジアの増加が注目されています。中国をはじめとするアジア各国の経済は平成10年(1998年)には深刻な不況にありますが、過去には著しい経済発展があり、それに合わせて長期的には飼料穀物などの消費量が増加してゆくものと思われます。
一方、日本については、食料の貿易自由化の流れの中にあって国内生産の競争力をどのように高めるのか。都市部を中心として、とくに若年層に摂取栄養素に偏向が見られること。
とりわけ日本が今後も永久に外国から多くの食料を輸入できる経済力を保ち続けられるのかなどなど、多くの内外の課題が、直接消費者の食卓に影響を及ぼす時代となって来ました。いずれにしても、食料の半分以上を輸入に依存している日本にとっては、永久に現在のような恵まれた状況が続くとは考えにくいようです。
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