目次

1.家畜伝染病予防法や牛海綿状脳症対策特別措置法について
と畜場法
背景
国民に安全な食肉を供給するために明治39(1906)年「屠場法」が制定された。これを土台にして昭和28(1953)年に現在の「と畜場法」が制定された。その後平成15(2003)年5月の改正まで抜本的な改正は行われなかった。

平成13(2001)年わが国で初めて牛海綿状脳症(BSE)の感染牛の確認をはじめとして、偽装表示事件、無登録農薬の使用、中国産冷凍ほうれん草の残留農薬基準違反等の問題が発生したことにより、食品の安全性に対する国民の不安が高まった。

農林水産大臣と厚生労働大臣の私的諮問機関として「BSE問題に関する調査検討委員会」が設立され、平成14(2002)年4月2日に報告書がまとめられた。さらに、自民党食品衛生規制に関する検討小委員会の「食品の安全に関する信頼確保のための提言」(平成14(2002)年5月14日)、与党・食の安全確保に関するプロジェクトチームの「食の安全確保に関する提言」(平成14(2002)年6月4日)により、食品衛生法等の抜本的な見直し内容が個別具体的に提言された。

その後、厚生労働省により、これらの提言を踏まえて、「食品衛生規制の見直しに関する骨子案」が公表され、意見募集を経て、食品衛生法等の一部を改正する法律案が取りまとめられた。この法律案は、平成15(2003)年2月7日閣議決定を経て、平成15(2003)年の第156回通常国会に提出され、5月23日成立、同30日公布された。この法律により、食品衛生法、食鳥検査法とともにと畜場法も改正され、法の目的規定が見直され、国等の責務が明確化されたほか、と畜場における衛生管理および検査体制の充実が図られ、罰則の見直しが行われた。

目的
と畜場の経営および食用に供するために行う獣畜の処理の適正の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講じ、もって国民の健康の保護を図ることを目的とする。(法1)

定義
(1)「獣畜」:牛、馬、豚、めん羊および山羊。(法3。1)
(2)「と畜場」:食用に供する目的で獣畜をと殺し、または解体するために設置された施設。(法3・2)
(3)「一般と畜場」:通例として生後1年以上の牛もしくは馬または1日に10頭を超える獣畜をと殺し、または解体する規模を有すると畜場。(法3・3)
(4)「簡易と畜場」:一般と畜場以外のと畜場。(法3・4)
(5)「と畜業者」:獣畜のと殺または解体の業を営む者。(法3・5)
(6)「衛生管理責任者」:と畜場を衛生的に管理するために、と畜場の管理者または設置者がと畜場ごとに設置しなければならない者。(法7・1)
(7)「と畜業者等」:と畜業者その他獣畜のと殺または解体を行う者。(法9)
(8)「作業衛生責任者」:獣畜のと殺または解体を衛生的に管理させるため、と畜業者等がと畜場ごとに設置しなければならない者。(法10。1 )
(9)「と畜検査員」:と畜場において獣畜の検査等を行う者。都道府県知事は、都道府県の職員で獣医師の資格を有する者のうちからと畜検査員を任命する。(法19。1)




2.家畜伝染病予防法
背景
わが国における家畜の伝染病の予防に関する制度は、明治4(1871)年太政官布告として発せられた「予防法リンドルペスト家畜伝染病」に端を発する。明治6(1873)年、牛疫がわが国にも侵入し、被害を生ずるに至り、明治9(1876)年、内務省達として「疫牛処分仮条例」が公布された。明治19(1886)年「獣類伝染病予防規則」が制定されたが、その後牛疫が再侵入し、炭疸、鼻疸、狂大病等も発生。流行したことから、より強力な措置が必要となり明治29(1896)年「獣疫予防法」が制定された。

また、明治34(1901)年には当時流行していた牛結核病を撲滅するため別の法律として「畜牛結核病予防法」が制定された。その後、家畜の飼養頭羽数が増加し、畜産が重要産業化したことから、大正11(1922)年、「獣疫予防法」に代わり、対象家畜の範囲を拡大した家畜伝染病予防法(旧法)が制定された。

戦後、新憲法の制定に伴う一般行政法規ならびに獣医畜産、公衆衛生関係法規の制定、さらには畜産事情の激変により再び大改正の必要が生じ、昭和26(1951)年、1日法に代わって、①家畜の伝染性疾病の発生予防措置の導入、②家畜伝染病への牛流行性感冒、出血性敗血症、ニューカッスル病等の追加、③家畜の管理者を家畜防疫に関する直接の義務者に追加、④消毒の実施、家畜集合施設に対する制限の追加、⑤家畜の移動証明制度の合理化等を特色とする現行の「家畜伝染病予防法」が制定された。

その後、家畜の飼養密度、飼養形態の変化、家畜の疾病の発生状況の変化等に伴い、昭和46(1971)年には①家畜伝染病の範囲の合理化、②発生予防およびまん延防止措置の改正、③動物の輸入に関する事前届出制の導入、④患畜の殺処分に伴う手当金額の改正、⑤自衛防疫措置の導入を含む大幅な改正が行われたほか、平成9(1997)年には①家畜伝染病の範囲の合理化(伝達性海綿状脳症、水胞性口炎等の追加、対象家畜の一部政令指定等)、②家畜伝染病等の発生の届出先を市町村長から都道府県知事への変更、③輸入検疫対象疾病を監視伝染病への限定等を内容とする改正が行われ、平成12(2000)年にはわが国で92年ぶりとなる口蹄疫が発生し、そのまん延防止措置の実施の過程において発生農家における家畜のと殺処分等の課題が明らかとなり、①家畜の移動禁止期間および通行遮断期間の上限の延長、②穀物のわらおよび飼料用の乾草の指定検疫物または輸入禁止品への追加等の改正が行われるなど多数の改正が行われている。

平成15(2003)年には「食品の安全性の確保のための農林水産省関係法律の整備等に関する法律」により本法の改正も行われ、①特定家畜伝染病防疫指針の作成。公表、②飼養衛生管理基準の設定、③厚生労働大臣との連携等の規定が追加された。

目的
家畜の伝染性疾病(寄生虫病を含む。以下同じ。)の発生を予防し、およびまん延を防止することにより、畜産の振興を図ることを目的とする。(法1)

定義
(1)「家畜伝染病」:口蹄疫、狂大病、ヨーネ病、伝達性海綿状脳症、豚コレラ、高病原性鳥インフルエンザなど26疾病であって、特定の家畜についてのものをいう。(法2、政令1)たとえば、狂大病については、牛、馬、めん羊、山羊、豚についてのものをいい、大の狂大病は本法の対象となっていない(犬の狂大病には、狂大病予防法が適用される)。家畜伝染病の発生時にはこの法律に基づく強制的なまん延防止措置がとられる。
(2)「届出伝染病」:家畜伝染病以外の伝染性疾病で農林水産省令で定めるもの。(法4。1)アカバネ病、牛伝染性鼻気管炎、オーエスキー病など71疾病が届出伝染病として定められている。
(3)「監視伝染病」:家畜伝染病または届出伝染病。(法5・1)
(4)「新疾病」:既に知られている家畜の伝染性疾病とその病状または治療の結果が明らかに異なる疾病。(法4の2・1)
(5)「特定疾病」:都道府県知事が新疾病の発生の疑いがあるとしてその発生状況を把握し、その病原および病因を検索するための検査の実施を目的として公示された疾病。(法6。1)
(6)「患畜」:家畜伝染病にかかっている家畜をいう。(法2・2)
(7)「疑似患畜」:患畜である疑いがある家畜および牛疫、牛肺疫、口蹄疫、狂大病、鼻疸またはアフリカ豚コレラの病原体に触れたため、または触れた疑いがあるため、患畜となるおそれがある家畜をいう。(法2・2)
(8)「特定家畜伝染病防疫指針」:家畜伝染病のうち、特に総合的に発生の予防およびまん延の防止のための措置を講ずる必要があるものとして農林水産省令で定めるものについて、検査、消毒、家畜等の移動の制限その他当該家畜伝染病に応じて必要となる措置を総合的に実施するための指針。(法3の2・1)
(9)「飼養衛生管理基準」:政令で定める家畜について農林水産省令で定めた当該家畜の飼養に係る衛生管理の方法に関し家畜の所有者が遵守すべき基準。(法12の2)
(10)「家畜防疫官」:この法律に規定する事務に従事させるために農林水産大臣により任命された者。(法53・1および2)
(11)「家畜防疫員」:この法律に規定する事務に従事させるために都道府県知事により任命された者。(法53・3)
(12)「指定検疫物」:動物、その死体または骨肉卵皮毛類、穀物のわらおよび飼料用の乾草、敷料であって農林水産大臣が定めるもの。(法37・1)



3.牛の個体識別のための情報の管理及び伝達にする特別措置法(牛肉トレーサビリティ法)
背景
平成13(2001)年9月のわが国での牛海綿状脳症(BSE)の初めての発生と翌年の農畜産物・食品の偽装表示事件の発覚等により、国民の牛肉の安全性に対する信頼が大きく揺らいだ。このような事態に対処するため、一連のBSE対策の1つとして、「家畜個体識別システム緊急整備事業」が実施され、平成14(2002)年度以内にわが国で飼養される牛約450万頭全頭に耳標を装着することとなり、牛が出生してからと家畜されるまでの個体情報を管理するシステムがほぼ確立した。

また、平成15(2003)年7月、第154回通常国会で議員立法により成立した「牛海綿状脳症対策特別措置法」においては、牛の所有者に対し、個体識別のための耳標の装着、必要な情報の提供を義務付ける規定が設けられた。さらに、BSEのまん延防止措置の的確な実施と牛肉の安全性に対する信頼確保の観点から、牛の個体識別情報の伝達を牛肉の流通段階まで義務付ける制度の法制化が農林水産省において検討された。

法案は、平成15(2003)年2月閣議決定を経て、第156回通常国会に提出され6月に成立した。この法律の生産段階における個体識別情報の伝達に関する規定は平成15(2003)年12月1日に、流通段階における伝達に関する規定は、平成16(2004)年12月1日に施行された。

目的
牛の個体の識別のための情報の適正な管理および伝達に関する特別の措置を講ずることにより、牛海綿状脳症のまん延を防止するための措置の実施の基礎とするとともに、牛肉に係る当該個体の識別のための情報の提供を促進し、もって畜産およびその関連産業の健全な発展ならびに消費者の利益の増進を図ることを目的とする。(法1)

定義
(1)「個体識別番号」:牛の個体を識別するために農林水産大臣が牛ごとに定める番号をいう。(法2・1)
(2)「管理者」:牛の所有者その他の牛を管理する者(当該牛の運送の依託を受けた運送業者を除く。)をいう。(法2・2)
(3)「特定牛肉」:食用に供される牛の肉であって、牛個体識別台帳に記録されている牛から得られたものをいう。(法2・3)加工・調理肉、ひき肉等を除く。(省令2)
(4)「特定料理」:牛の肉を主たる材料とする料理で焼肉、しゃぶしゃぶ、すき焼きおよびステーキをいう。(法2・4、政令1)
(5)「販売業者」:牛の肉の販売の事業を行う者をいう。(法2・5)
(6)「特定料理提供業者」:特定料理の提供の事業を行う者であって①料理の提供を主たる事業としていること、②その者の提供する料理が主として特定料理であることのいずれの要件にも該当するもの。(法2・5、政令2)



4.牛海綿状脳症対策特別措置法
背景
平成13(2001)年9月のわが国での牛海綿状脳症(BSE)の初めての発生と翌年の農畜産物・食品の偽装表示事件の発覚等により、国民の牛肉の安全性に対する信頼が大きく揺らいだ。このような状況の下、BSEの発生を予防し、およびまん延を防止するための特別の措置を定めること等により、安全な牛肉を安定的に供給する体制を確立し、もって国民の健康の保護ならびに肉用牛生産および酪農等の健全な発展を図ることが必要であると立法府で判断された。

このため、与野党協調の下、平成14(2002)年5月30日に農林水産委員長提案(議員立法)として「牛海綿状脳症対策特別措置法案」が衆議院に提出され、国会内での手続きを経て6月7日に同法案が成立し、「牛海綿状脳症対策特別措置法(平成14(2002)年法律第70号。以下「法」という。)」が平成14年6月14日に公布、平成14年7月4日に施行された。この法律の制定に伴い、BSEの防疫に万全を期すため、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(飼料安全法)、家畜伝染病予防法および獣医師法の一部が改正され、平成15(2003)年6月「牛の固体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」が制定された。

目的
牛海綿状脳症(BSE)の発生を予防し、およびまん延を防止するための特別の措置を定めること等により、安全な牛肉を安定的に供給する体制を確立し、もって国民の健康の保護ならびに肉用牛生産および酪農、牛肉に係る製造、加工、流通および販売の事業、飲食店営業等の健全な発展を図ることを目的とする。(法1)


国および都道府県の責務
国および都道府県(保健所設置市を含む。以下同じ。)は、BSEの発生が確認された場合またはその疑いがあると認められた場合には、次の基本計画に基づき、速やかにBSEのまん延を防止する等のために必要な措置を講ずる責務を有する。(法3)


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