目次

1.農用地で農耕・牧畜をして肥料を使用して農林物を作るための法律
農耕・牧畜の開始とリスク
数百万年の人類の歴史の中で、人間が農耕を始めたのは1万数千年前と言われる。それまでの自然界を相手にした狩猟や採取という手段と異なり、農耕は計画的に食べ物を確保可能であり、単位面積当たりの収穫効率も格段に高くなった。人々はそれまでのように周辺を身軽にして食べ物を求めて移動する必要もなく、むしろ子供を多く産むことにより労働力を高めることができるようになった。その結果、自己触媒的に人口と食料生産力が増加していった。

一方、野生動物を餌料と繁殖の両面をコントロールすることにより家畜化すること、すなわち牧畜は農耕とのマッチングさせることにより、よりー層食料確保効率を高める効果をもたらした。家畜から得られる肉や乳は蛋白質源として重要な食料を供給してくれるばかりか、糞尿は有機質肥料として活用できる。また、家畜は農耕作業の労力源や収穫物の輸送手段としても有効である。

このように人間の食料確保にとってきわめて大きなベネフィットを有する家畜であるが、同時に家畜由来の恐ろしい疾病の影響というリスクももたらすこととなった。すなわち、天然痘、インフルエンザ、結核、マラリア、ペスト、麻疹、コレラ等、歴史上これまで人間に多大な影響を及ぼしてきた主な疾病の原因はこうした人畜共通感染症によるものである。また、カンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌など現在発生している食中毒の主な原因菌も、その多くが家畜由来となっている。

人類は、ベネフィットとリスクを天秤に掛けて牧畜の導入を進めてきたわけであるが、現代に生きる我々もこれらのことを再認識する必要がある。





2.農用地の土壌の汚染防止等に関する法律
背景
昭和30年代(1960年代後半以降)、日本は高度経済成長期であり、それに伴い、水質の汚濁、大気の汚染等による公害が各地で発生した。例えば、富山県神通川流域のイタイイタイ病昭和30(1955)年、熊本県の水俣病昭和31(1956)年、四日市のぜん息昭和36(1961)年、新潟水俣病昭和40(1965)年、カネミ油症PCB汚染昭和43(1968)年、などである。カドミウム、銅等重金属類による農用地の土壌の汚染も、人為的汚染あるいは自然的汚染との重複の形で顕在化し、人の健康の保護および生活環境の保全の観点からきわめて大きな社会問題となった。

農用地の土壌の汚染は、そのほとんどが水質の汚濁あるいは大気の汚染を通じて土壌が汚染されるという過程をたどり、従来から公共用水域の水質の保全に関する法律、大気汚染防止法等によりこれに対処してきた。しかし、重金属類による土壌の汚染は、ひとたび汚染されると特定有害物質が土壌中に蓄積したままほとんど流失しないという性格があり、工場あるいは事業場からの排出水、ばい煙等を規制するのみでは必ずしも十分な対策とはいえず、これらの規制措置を有機的な関連のもとに、土壌の汚染防止のための事業の実施、汚染された農用地の復旧等の措置を講ずることが必要であった。

このような見地から、農用地の土壌の汚染の防止および除去ならびに汚染された農用地の利用の合理化を図るために必要な措置を講ずることにより、人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産されまたは農作物等の生育が阻害されることを防止するため、「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」が昭和45(1970)年に制定された。

また、平成18(2006)年8月には食品中のカドミウムの規制基準がCOdexの食品添加物・汚染物質部会(CCFAC)で検討されたが、日本農用地の土壌の汚染防止等に関する法律の基準と異なっている。

目的
この法律は、農用地の土壌の特定有害物質による汚染の防止および除去ならびにその汚染に係る農用地の利用の合理化を図るために必要な措置を講ずることにより、人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、または農作物等の生育が阻害されることを防止し、もって国民の健康の保護および生活環境の保全に資することを目的とする。(法1)

定義
(1)「農用地」:耕作の目的または主として家畜の放牧の目的もしくは養畜の業務のための採草の目的に供される土地をいう。(法2・1)
(2)「農作物等」:農作物および農作物以外の飼料用植物をいう。(法2・2)
(3)「特定有害物質」:カドミウム等その物質が農用地の土壌に含まれることに起因して人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、または農作物等の生育が阻害されるおそれがある物質(放射性物質を除く。)であって、政令で定めるものをいう。(法2・3)
政令で定めるものは①カドミウムおよびその化合物、②銅およびその化合物、③砒素およびその化合物、である。(政令1)



3.農林物資の規格化及び品質表示の適正化にする法律(JAS法)
背景
この法律は昭和25(1950)年5月に「農林物資規格法」として制定され、発足当時は一般消費者にはなじみの薄い農産物および林産物を主な対象品目としていたが、昭和35(1960)年頃から対象品目が加工食品を中心に徐々に拡大されてきた。

その後、昭和43(1968)年5月に消費者保護の必要性から制定された「消費者保護基本法(現在の消費者基本法の前身)」を受けて、昭和45(1970)年6月に旧法が大幅に改正され、「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(いわゆるJAS法)」として、消費者保護の一環としての内容に大きく様変わりした。

以下、それ以降の主な法改正と当時の背景等について記す。
(1)品質表示基準の対象拡大等(平成5(1993)年6月の改正)
当時、特別な生産方法や特色のある原料を使用したことを表示で強調したいろいろな食品が出回っていた。しかし、消費者にとっては、これらの表示が本当にその表示にかなっているかを自ら判断することは難しい状況であった。また、強調されたこれらの表示を保証するシステムもなかった。

そのうえ、品質に関する表示(品質表示基準)については制度上、JAS規格が制定されている品目のみにしか基準(品質表示基準)の制定ができないことになっていた。したがって、日持ちのしない、いわゆる日配品については品質表示基準の対象になっておらず、消費者側にとっては、提供される情報が不足していた。

こうした状況を踏まえて、平成5(1993)年5月、国会で「消費者に対する正確で、分かりやすい食品情報の提供を促進する」ということを改正の趣旨としたJAS法の一部改正が承認された。この改正によって、特別な生産方法や特色のある原材料に着目したJAS規格(特定JAS規格)が制定できるようになった。

品質表示基準の対象範囲に関しては、それまでのJAS規格制定品目に限定されていた必要条件が緩和され、JAS規格が制定されていない品目にも拡大された。具体的には、「品目の特性からJAS規格の制定が困難で一般消費者が購入に際して品質の識別が困難なもの」との要件が加わった。この要件の下、品質変化が急激な品目も対象とすることができるようになり、青果物やパン類の基準が制定された。
(2)有機表示に関する制度化等(平成11(1999)年7月の改正)
当時、食品消費形態の多様化ならびに輸入食品、総菜類および新商品等の増加に伴い、消費者の食品に対する味、鮮度、健康および安全性等への関心が高まっていた。

このような状況下で、有機食品については、①有機農産物等の生産の取り組みが増えていること、当時発表されていた、②「有機農産物及び特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」では強制力がないこと、③有機質肥料を使用しただけで、「有機栽培」と表示がされているなど有機栽培の表示が混乱していること、さらに、有機農産物加工食品についても、④有機的に栽培した原料を使用しても加工、流通での取扱いが不明のまま「有機」と表示していることなど消費者に誤認を与えかねない表示が氾濫していたことから生産者および消費者双方から有機関係表示についての適正化の要望が一段と強まっていた。

その一方、規制緩和の動きの中で、行政が広範囲に渡って責任を持つことが期待される社会から、自己責任原則を基本とする社会への移行が求められていた。国際的にはWTO体制下で、平成7(1995)年に「貿易の技術的障害に関する協定(TBT協定)」が発効するなど、貿易の円滑化に向けて、国際的に公平で調和の取れた表示・規格制度の構築が重要な課題となっていた。

また、前年の12月に決定された「農政改革大綱」において、消費者の視点を重視した食料政策構築の観点から、①食品表示制度の改善・強化、② JAS規格・認証制度の見直し、および③有機食品の表示の適正化を図ることとしていた。

これらの情勢を踏まえて、①一般消費者向け全ての飲食料品を品質表示基準の対象とし、併せて、全ての生鮮食料品の原産地表示を義務付ける、②有機食品の検査認証制度を創設し、認定を受けたもののみに「有機」表示ができるようにする、③事業者が登録認定機関の認定を受けて自ら格付けしてJASマークを添付できるようにする、④ JAS規格を5年以内ごとに見直しを行うこととする等の内容の改正がなされた。

(3)不正表示の罰則強化及び生産公表JASの制度化(平成14(2002)年6月の改正)
それまで、品質表示基準違反者に対して、農林水産大臣の指示に従わない場合は、企業名等を公表することとしていたところを、迅速に違反者名を公表することができるようになり、速やかな消費者への情報提供が可能になった。併せて、農林水産大臣の指示を遵守すべき旨の命令に違反した場合の罰則(懲役、罰金)を大幅に強化した。

この頃、平成13(2001)年9月に初めて国内で発生したBSE問題で、消費者の食品に対する安全。安心に対する不安感が高まり大きな社会問題となっていた。このことを受けて、国は食肉に対する消費者の不安感を取り除くため、平成15(2003)年12月にBSEの全頭検査を実施することを決定すると共に、牛一頭ごとに、出生からと畜までの個別識別情報を消費段階まで伝えることができる、「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法(牛トレーサビリテイ法)」が制定された。


また、ほぼ同時期に、生産情報公表JAS制度が定められ、「牛トレーサビリテイ法」の公開情報に、さらに、給餌。投薬履歴情報を加え、より多くの情報を知ることができる「生産情報公表牛肉のJAS規格」が制定された。

(4)流通JAS制度等(平成17(2005)年6月の改正)
民間の高度な流通管理の促進および流通方法に特色のある農林物資について、消費者が選択できるようにするため、流通の方法についての基準を内容とするJAS規格(流通JAS)の制定が可能になった。同時に、農林水産大臣あるいはその代行機関(法改正以前の登録認定機関)が、JASマークを自ら貼付することのできる製造業者等(認定事業者)を認定する仕組みを、JAS規格制度に対する規制緩和の観点から国の関与をできるだけ減らし、民間活力を活用するという考え方から、民間の第三者機関でこの認定ができる仕組みに移行した。

加えて、従来の登録格付機関、都道府県および(独)農林水産消費技術センター(当時の名称)による格付けを廃止、登録認定機関から認定を受けた認定事業者がJASマークを貼付する仕組みに統一された。

認定事業者の範囲については従来の製造業者等に加えて、製造工程を管理し製品がJAS規格に適合するかどうかの検査を行う能力を有する販売業者や輸入業者も認定事業者となることができるように拡大された。さらに、日本へ農林物資を輸出する外国の輸出業者も同様な扱いとなった。
なお、本法の内容は、任意の制度の〔日本農林規格(JAS規格)制度〕と強制の制度の〔品質表示基準制度〕から成り立っている。この法律に基づくこれら2つの制度を併せてJAS制度と呼んでいる。

目的
適性かつ合理的な農林物資の規格(JAS規格)を制定し、これを普及させることによって、農林物資の①品質の改善、②生産の合理化、③取引の単純公正化、および④使用または消費の合理化を図るためのJAS規格制度、ならびに農林物資の品質に関する適正な表示を行わせるための基準(品質表示基準)を制定し、もって、一般消費者の選択に資するための品質表示基準制度、これら2つの制度を併せて、公共の福祉の増進に寄与することを目的としている。(法1)

主な定義等
(1)「農林物資(酒類、薬事法に規定する医薬品、医薬部外品および化粧品を除く)」:
①飲食料品および油脂
②農産物、林産物、畜産物および水産物ならびにこれらを原料または材料として製造し、または加工した物資(飲食料品および油脂を除く)であって政令で定めるもの。(法2)
(2)「JAS」:日本農林規格の英訳、「Japanese Agricultural Standard」の頭文字を取った略称であるが現在は制度全体を表す言葉として使用されている。
(3)「JAS規格制度」:農林物資について、農林水産大臣が制定した日本農林規格(JAS規格)に基づく検査に合格した製品に、JASマークを付けることを認める任意の制度
(4)「品質表示基準制度」:農林物資について、一般消費者の選択に資するため、農林水産大臣が制定した品質表示基準に従って、原則として全ての事業者に表示を義務付ける強制の制度
(5)「JAS制度」:JAS規格制度と品質表示基準制度を併せてJAS制度と呼んでいる。
(6)「JAS規格(日本農林規格)」:JAS法に基づいて農林水産大臣によって定められた飲食料品や林産物などの製品基準
(7)「一般JAS規格(JAS規格)」:原料や色つやなどの品質の基準を定めたJAS規格。次の特定JAS規格と区別する必要がある時は一般JAS規格と呼んでいる
(8)「特定JAS規格」:作り方等についての基準を定めたJAS規格、特定JAS規格はさらに以下の①~③の規格に分かれており、それぞれ異なったマークが着け付けられる。なお、④の流通JAS規格については、JAS規格の制定が可能になったが、現時点(平成20年2月)で、まだ、具体的な規格は制定されていない。



4.肥料取締法
背景
肥料の取締は、肥料に異物を混入することを禁上した旧法が制定された明治32(1899)年にさかのぼる。その後、明治41(1908)年、全面改正が行われ、①対象肥料を窒素、 りん酸、加里の3要素肥料とすること、②肥料営業を都道府県知事の免許制とすること、③業者責任による保証票の添付、④地方庁への肥料検査官の配置等が定められ、40年にわたりわが国における肥料取締制度の基幹となった。戦後、肥料工業の発展により肥料行政の重要性が増大し、取締事務も国で実施する必要が生じ、1日法は実情に即しない点が多かったことから、昭和25(1950)年に①対象肥料の拡大、②対象業者の拡大、③登録制の導入、④保証票の添付、⑤肥料検査所による検査を骨子とする全面改正が行われ、現行の肥料取締制度が確立した。

その後この法律は、その時々の農業・肥料をめぐる情勢に的確に対応するため、20回余り改正が行われた。昭和58(1983)年5月17日の改正では、①登録制度の一部見直しによる指定配合肥料制度の導入、②省令で定める肥料の登録の有効期間の延長等が行われた。

同年5月25日の改正では、「外国事業者による型式認証等の取得の円滑化のための関係法律の一部を改正する法律」の制定に伴い、外国生産肥料の登録または仮登録の制度が導入された。平成11(1999)年7月28日の改正では、たい肥等特殊肥料の適切な施用の促進および品質の保全のため、①特殊肥料の品質表示制度の創設、②一部の特殊肥料についての届出制から登録制への移行が行われた。

さらに平成15(2003)年の「食品の安全性の確保のための農林水産省関係法律の整備等に関する法律」により肥料取締法の改正が行われ、①施用方法によっては人畜に被害を生ずるおそれがある普通肥料について、施用者に対し施用方法
等についての基準の遵守を義務づけるとともに、②人畜に被害が生ずると認められる肥料の生産、譲渡または施用が禁止された。

目的
肥料の品質等を保全し、その公正な取引と安全な施用を確保するため、肥料の規格および施用基準の公定、登録、検査等を行い、もって農業生産力の維持増進に寄与するとともに、国民の健康の保護に資することを目的とする。(法1)

定義
(1)「肥料」:植物の栄養に供することまたは植物の栽培に資するため土壌に化学的変化をもたらすことを目的として土地に施されるものおよび植物の栄養に供することを目的として植物に施されるものをいう。(法2・1)
(2)「特殊肥料」:農林水産大臣の指定する米ぬか、たい肥その他の肥料をいう。(法2・2)
(3)「普通肥料」:特殊肥料以外の肥料をいう。(法2・2)普通肥料のうち、公定規格が定められているものを生産。輸入する場合には、登録を受けなければならない。普通肥料のうち、公定規格が定められていないものを生産。輸入する場合には、仮登録を受けなければならない。
(4)「指定配合肥料」:普通肥料のうち、専ら登録を受けた普通肥料が原料として配合される普通肥料であって省令で定めるもの。(法4・1)
(5)「保証成分量」:生産業者、輸入業者または販売業者が、その生産し、輸入し、または販売する普通肥料につき、それが含有しているものとして保証する主成分の最小量を百分比で表したもの。(法2・3)
(6)「生産業者」:肥料の生産(配合、加工および採取を含む)を業とする者をいう。(法2・4)
(7)「輸入業者」:肥料の輸入を業とする者をいう。(法2・4)
(8)「販売業者」:肥料の販売を業とする者であって生産業者および輸入肥料取締法業者以外の者をいう。(法2・4)
(9)「公定規格」:農林水産大臣が普通肥料についてその種類ごとに定めた、含有すべき主成分の最小量または最大量、含有を許される植物にとっての有害成分の最大量等についての規格。(法3・1)
(10)「特定普通肥料」:普通肥料のうち、含有している成分である物質が植物に残留する性質からみて、施用方法によっては、人畜に被害を生ずるおそれがある農産物が生産されるものとして政令で定めるもの。(法4・1)




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