目次

1. 人気サプリメントの注意点ビタミン
01年に「栄養機能食品」の成分として厚労省がその基準を定め、ビタミン12種類が指定された。厚労省指定の摂取量を守れば、まず心配はない。摂り過ぎても多くのビタミンは水溶性であるため体外に排出される。ただし、ビタミンA、D、Eという脂溶性のビタミンは脂肪に溶けるため、過剰摂取分が体内に残ってしまうので注意が必要だ。

ビタミンEに関しては一日あたりの栄養所要量を上回る商品が多く過剰摂取の恐れがあると注意を呼びかけている。また、ビタミンEの過剰摂取は逆に死亡率が上がるなど米心臓協会からデータが発表されている。
ビタミンCに関しては、合成ビタミンも天然ビタミンも差がないとされていたが、近年、米国などの各研究機関のデータでは天然のほうが優れていると報告されている。また、過剰摂取により銅の吸収を防いでしまう。体の中でビタミンAとなるβカロチンも、ガンの予防効果があると報じられていたが、過剰摂取は、むしろ肺ガンの発病リスクを高めるという報告がされている。ビタミンB3(ナイアシン)は摂りすぎるとうつ状態になるとの報告もある。

ビタミンCサプリ
ビタミンCは、他のビタミン同様、れっきとした栄養素です。
体内ではコラーゲンの合成に欠かせないだけでなく、重要な抗酸化物質として働いています。鉄や銅の吸収を助ける、メラニン色素の生成抑制、免疫力を高める、またコレステロール代謝にも関わっている等々。もちろん種々の実証データもあり、ビタミンCは人間が生きていくうえで必須のものです。それだけに不足すると、壊血病(血管がもろくなって毛細血管や歯茎から出血する病気)になる恐れがあるほか、疲れが出る、肌のハリを失う、歯肉の色素沈着等々。

このように書くと、「だからサプリから摂取を」などと早合点する人がいることでしょう。事実、ビタミンCサプリ(正確には、ビタミンC含有食品)は、コンスタントに売れ行きの上位を占めており、また、なぜか足りている人ほど多くとっているようです。そこでまずビタミンCの必要量はどうかというと、食事摂取基準では「推奨量成人(男女とも)100mg/日」となっている。それに対して実際の摂取量は2008年国民健康・栄養調査では成人127mg/日。平均的には十分足りています。

しかし年代別に見ると、20代から40代の年齢層の人達が90~95mg、とくに男性では、70~78mgと少ない。野菜の摂取量もこれに比例して、働き盛りの年代でとくに男性が少なくなっています。やはり野菜不足がたたっているので心して野菜を!と、これは声を大にしていいたいですね。

さて肝心のビタミンCサプリですが、はっきりいって、他のサプリメントよりはよいと思うのです。ビタミンCそのものは栄養素であり、有効性・安全性も認められているものだからです。しかし出回っている製品をみると、配合成分もいろいろなら、値段もさまざま。提示している1日摂取目安量も、10品ほど調べたところ500~1050mgと幅がある。例えば『ビタミンCアセロラ配合』は1050mg。しかも、国の推奨量「100mg/日」とかなり多い。これは、ビタミンCは脂溶性ビタミン(ビタミンAやDなど)と違って過剰症の恐れがないからでしょうか。

力ルシウムサプリ
カルシウムは、人間に必要とされているミネラルの中で体内に最も多く存在し、99%は骨や歯の構成成分に。残り1%は血液中や筋肉、神経にあって血液凝固や心機能、筋収縮に関与するなど、体内で重要な役割を担っています。また骨粗しょう症との関連も大きいとされている。

それほどに大事な栄養素なのに、毎年の国民健康・栄養調査できまって摂取不足が指摘されています。どの程度不足かというと、食事摂取基準(2005年版)で「目標量成人(男女とも)600mg/日」となっているのに、2008年の同調査では、成人505mg/日。その前の2007年では515mg/日。実をいうと、この調査が始まった1946年以来、600mgを超えたことは一度もないのです。

調査結果はあくまでも平均値。各人に直接あてはまるものではないにしても、日本人一般は慢性カルシウム不足であるのは事実、このことはサプリ会社にとって格好のネタで、「だからサプリを」となるわけですが、それにはのってほしくない。
実際の製品は配合成分もいろいろなら、値段もさまざま。提示している1日摂取目安量も10品ほど調べたら180~600mgとかなり幅がある。

黒酢サプリ
昔から、お酢は体によいといわれてきましたが、黒酢はさらに体によいというのが通り相場。でも、そのままでは飲みにくいので最近は黒酢をカプセルに入れた「黒酢サプリ」が盛んに宣伝されています。中には「アミノ酸が多いのでダイエットに効果的!」をウリにしている製品もある。

まずは黒酢そのものについて。黒酢は、普通の米酢と同じく原料の米や大麦を酵母菌の働きでアルコール発酵させ、さらに酢酸菌の働きで酢酸発酵させたもの。米酢との違いは、原料の米や大麦の量が多いことと米酢は2~3ヶ月ででき上がるのに対して、黒酢は1~3年もかけて発酵・熟成するのが特徴です。その過程で味がまるやかになり、色が黒味を帯びてきてアミノ酸も多くなります。

しかしその量は、たったの0.7g/100ml。ちなみに穀物酢(米酢など)は0.09g/100ml(いずれも名古屋市消費生活センター調べ)。しかも酢を1日100mlも摂取する人はまずいないので、1日の摂取量を「大さじ1杯(アミノ酸は0.1g)という量です。

では、「黒酢サプリ」の場合はどうでしょう。1日目安量当たりのアミノ酸は、平均すると0,44gです。黒酢から摂取するよりは多いにしても、「黒酢サプリはアミノ酸が多い」などとはとうていいえず、ましてアミノ酸にダイエット効果がもしあったとしても(ないが)、この量では期待できるはずがない。

おまけに問題なのは、黒酢サプリのアミノ酸量が被包材(カプセルの材料)に使っているゼラチン込みの値であること。ゼラチンは「87.6mg/100g中」がタンパク質。いうならタンパク質(アミノ酸)の塊なので、その量がかなりプラスされている。黒酢よりアミノ酸が多いのはそのため。被包材を除くサプリの中身だけのアミノ酸は、1日目安量当たりたったの0.015gです。

ミネラル
現代人に不足している栄養素で積極的に摂りたいものだが、しかし、カルシウムの摂りすぎには注意したい。 1日4千ミリグラム以上を長期間摂ると、便秘や肝機能障害、結石などの症状が報告されている。ミネラルの場合、どの成分も、不足しても摂りすぎても体調を崩しやすいため、「栄養機能食品」で定められている摂取量を守り、バランスをとることが大切。

ポリフェノール
大豆イソフラボンは食品安全委員会が、妊婦や乳幼児、小児などへの摂取に関して安全性が確認されていないとして「摂取しないよう」注意表示を提案した。大豆イソフラボンは日本人の食生活の中の適量摂取ならばメリットも多く問題はないが、過剰摂取した場合は内分泌かく乱など身体への危険性を示す研究データも多数ある。
カテキンは摂りすぎると鉄分の吸収を抑えてしまい、リコピンやルテイン、アントシアニンも便秘や吐き気などの症状が出る場合もあると報告されている。

アミノ酸とそのほかの成分
アミノ酸の科学的根拠は、疲労回復、肌再生、免疫カアップ、肝機能サポートだ。したがってアミノ酸自体に脂肪燃焼効果もなく、ダイエット効果はない。ダイエットを目的とする場合はアミノ酸の摂取とともに、有酸素運動をしなくては効果はない。
また、アミノ酸入りの清涼飲料水は、微量のアミノ酸に糖分が含まれていることが多く、飲みすぎると逆にカロリーオーバーしてしまう。また、アミノ酸入りと謳っていても、その原料が大豆たんぱくやペプチドなどニセモノも氾濫している。

EPAやDHAは1日3グラム以上摂取すると凝血能が低下しやすく出血しやすい。
イチョウ葉食品は有効成分のほかにアレルギー物質であるギンコール酸が含まれており、湿疹や下痢など日本でも健康被害が報告されている。ウコンに含まれるクルクミンは摂りすぎると腹痛や頭痛の症状がでることもある。

2.公正競争規約から広大広告に注意
背景
一般消費者は、情報源として広告や表示を見てその商品を購入する事が多いが、虚偽や偽装および誇大な表示や過大な景品付きで商品の販売が広く行われると、消費者は不利益な商品を買わされることになる。

また、誠実な事業を行っている事業者の商品が相対的に不当な評価を受ける懸念もある。このような不正な販売競争を行わせないために不当景品類及び不当表示防止法(昭和37(1962)年5月15日法律第134号、通称:「景表法」以下同じ。所管:公正取引委員会)第12条で「公正競争規約」を規定している。

これは事業者または事業団体が、公正取引委員会の認定を受けて、景品類または表示に関する事項について自主的に設定する業界ルールとなっている。 公正競争規約の目的は、景表法の第12条第1項で「事業者又は事業者団体は、公正取引委員会規則で定めるところにより、景品類又は表示に関する事項について、公正取引委員会の認定を受けて、不当な顧客の誘因を防止し、公正な競争を確保するために協定又は規約を締結し、又は設定することができる」としている。(図1参照)

また同条第2項では、「公正取引委員会は、前項の協定又は規約(公正競争規約)が以下に適合すると認める場合でなければ、前項の認定をしてはならない」としている。 その公正取引委員会が認定するための適合要件とは、
①不当な顧客の誘引を防止し、公正な競争を確保するために適切なものであること
②一般消費者および関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと
③不当に差別的でないこと
④公正競争規約に参加し、または公正競争規約から脱退することを不当に制限しないこと とされている。

主な定義
景表法第2条で規定している「景品類」および「表示」の定義は以下のとおり
(1)「景品類」:「顧客を誘引するための手段として、その方法が直接的であるとか間接的であるかを問わず、又くじの方法によるかどうか問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引(不動産に関する取引を含む。以下同じ。)に付随して相手方に提供する物品、その金銭その他の経済上の利益であって、公正取引委員会が指定するものをいう」と規定されている。

(2)「表示」:「顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であって、公正取引委員会が指定するもの」と規定されている。なおこの指定される表示の具体的な規定は「7.留意点等の②」に記載する。

3.分解度の悪いサプリメントの見分け方

分解度の悪いサプリメントはビタミンやミネラル系に多いが、胃腸にストレスを与え、別な病気を引き起こす要因になりかねない。形態としても固形化された錠剤だけでなく、カプセル状のものでも分解度の悪いものがあるので注意したい。
サプリメントの使用に関して、多くの消費者が心配していることは、服用しているサプリメントが本当に体内で吸収されているのかということです。
みなさんの飲んでいるサプリメントが適切に分解されるか、自宅でできるテストで、ある程度わかりますのでトライしてみてください。

このテストはコンシューマーラボが行っている品質テストを簡略化したものだが、サプリメントの分解度がチェックできる。

吸収率の高いサプリメントを選ぶための自宅でできる簡易テスト
①3分の1カップのお酢を耐熱カップに入れて、コーヒーメーカーなどに付いている(コーヒーポットを置く部分)保温プレートの上で体温(摂氏約26度)まで温める。
②調べたいサプリメントをカップの中に入れ、継続的に20分から45分までかき混ぜる。このとき、入れたサプリメントに触れないようにゆっくりとかき混ぜ、体温をキープするように保温プレートからはずしたりして温度を調整しながらおこなう。

チェックの目安
普通の錠剤ならば約20分以内に分解されるが、ゼラチンや被包材を多く使用している製品は45分かかる場合もある。45分以内で分解できれば合格とみよう。
(舌に乗せて飴のように舐めるものや、体内で徐々に解けていく製法のものは除外)(テストは、コンシューマーラボがおこなっている品質テストを簡略化したものです)


4.サプリメントとは何か?
健康食品の中でも、サプリメントが、最近多くなりました。
しかしこれにしても明確な定義はなく、錠剤やカプセル、類粒状で、普通の食品形態ではないものをそう呼んでいるにすぎません。

もとはといえばアメリカの「ダイエタリー・サプリメント」からとったもので、アメリカには、1994年に制定されたDSHEA法(栄養補助食品健康教育法)という法律があり、医薬品でも食品でもない新しいカテゴリーとして、この「ダイエタリー・サプリメント」が位置づけられています。強いて訳せば「健康補助食品」ですが、形状は、錠剤やカプセル、類粒状などで通常の食べ物以外のものとされており、いうなら食品と医薬品の中間のもの。

しかし日本の場合は、薬事法で規定する医薬品及び医薬部外品以外はすべて食品なので、サプリメントも食品の範疇というわけです。
以前、主婦グループの集まりで「サプリメントは食品なので」と言ったらけげんな顔をされたことがありますが、薬とまったく同じ形態をした錠剤やカプセル状のものを「食品」と言われたら違和感を持つのは当然のことでしょう。いいかえれば、サプリメントを薬と混同している人がいかに多いかということでもあります。

でも、健康食品であるサプリメントと医薬品とでは大きく違うのです。
では、どう見分けるか。これは表示を見れば明らかで、サプリメントは加工食品の品質表示規準にのっとって、名称(品名)や原材料名(添加物名も含めて)、内容量、賞味期限などが書かれています。それに、栄養成分表示もほとんどのものについています(義務づけではありませんが)。

また薬なら「用法・用量」とあるのが、サプリメントでは「召し上がり方」となっている。さらに薬には必ず書いてある効果・効能が、サプリメントには書かれていません。


5.危険な過剰摂取と飲み合わせ
普通の食品なら、量を多く食べようとしてもお腹が一杯になっておのずと制限されます。また同じものばかりだと飽きてきて、自然に違うものを食べたいと思うので、その結果、栄養のバランスもとれるし、特定の成分だけをとりすぎることもなくてすむのです。

その点サプリメントは、特定成分だけが凝縮した形で入っているので、きわめて簡単にたくさんの量がとれてしまう。


ビタミンは体に必要不可欠のものですが、ビタミンDを除くすべてのビタミンは体内ではつくられていないため、体外から摂取するしかありません。
とはいえ、すべてのビタミンを食事からだけで摂取するのは簡単ではないので、不足がちなビタミンをサプリメントで補うのは健康のためにいいことです。

サプリメント先進国のアメリカと日本では、20年の差があるといわれています。アメリカは、「病気になってから慌てるのではなく、普段からビタミン・ミネラルをたくさんとって、病気になりにくい体をつくる」という予防医学にもとづく考え方で、病気を予防するための理想摂取量を示しています。

一方、日本の厚生労働省が数年前まで提示していた推薦栄養所要量は、この数値を下回ったら病気になってしまうという最低限の基準でした。現在は、私たちが健康を維持・増進するために、また成長期では発育・発達するために、何をどれだけ食べればよいか、その基準を示した「日本人の食事摂取基準」が厚生労働省から発表されています。それでも、病気予防のためにアメリカが理想としているビタミン・ミネラルの摂取量と、「日本人の食事摂取基準」で提示されている基準とでは大きな差があり、たとえばビタミンEでは、アメリカの理想摂取量は「日本人の食事摂取基準」の60倍以上も多くなっています。

そのため、私は患者さんには、アメリカの理想摂取量を成分量としたビタミン・ミネラルのサプリメントをすすめています。
しかし、こうしたことからサプリメントは目安よりも多めに摂取したほうが効くと、単純に思い込むのは危険です。サプリメントで栄養を補うときには、過剰に摂取してしまうとさまざまな過剰症を起こすケースがあるので注意が必要です。アメリカの理想摂取量をサプリメントで摂取する場合は、医師の指示に従ってください。

とり過ぎると吐き気や肝臓障害などを引き起こすケースも
ビタミンには水溶性と脂溶性があり、ビタミンCやB群などの水溶性のビタミンは尿と一緒に排出されるため、腎臓に問題がなければたくさんとっても大きなトラブルはまず起こりません。

しかし、脂溶性のビタミン、なかでもビタミンAやDを、目安よりたくさんとると体に悪影響をおよぼします。

ビタミンAの過剰摂取は、頭痛、不眠、食欲不振、慢性疲労、月経不順などにつながります。また、肝臓の腫大や、関節痛などが起こることもあります。また、ビタミンDの過剰摂取は、吐き気、下痢、肝臓障害を引き起こすケースが出てきます。

ミネラルをサプリメントで補う場合でも、過剰に摂取するとさまざまなトラブルが起きるケースが出てきます。
鉄分のサプリをとり過ぎると肝臓障害や吐き気が起こるケースがあり、亜鉛のサプリの過剰摂取は下痢や吐き気、マグネシウムのサプリの過剰摂取は低血圧、カルシウムのサプリの過剰摂取は尿路結石のリスクが高くなります。

また、アントシアニンやリコピン、カプサイシンなどのファイトケミカル(植物栄養素)などを補うときも、過剰摂取がかえって体に悪影響をおよぼすことがありますので、医師の指示に従ってください。

また薬との飲み合わせにも注意を。サプリメント同士もそうですが、薬と飲み合わせると薬の効果が弱まったり、効きすぎてしまうこともある。こんな話も聞きました。

「医師に黙って、というか、特別に言う必要もないと思ってある健康食品を利用していた。ところが体中に湿疹ができたが原因不明。後になって薬との飲み合わせが悪かったためとわかった」とか。健康食品は、普通の食品とはやはり違うので、利用している場合は事前に主治医に伝えておきましょう。
ついでにいうと、何か気になる症状があるときにはまず医者の診断を。健康食品に過度に期待して、病院に行くタイミングを逸してしまうのも怖いことなので。

いうまでもなく基本は、普段の食生活です。1番気になるのは、「サプリさえ飲んでいれば安心」などと食事をおろそかにして、こうしたものに頼る人が多いこと。これでは、まったくもって本末転倒。まず最初に食事ありきです。




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