残留農薬を減らすために食材をゆでたり水洗いなどの下ごしらえが有効だった
1.レモンティーへの溶出テストについて
①レモンを洗浄すると、添加物がどれだけ落ちるかの試験
レモンを流水しながらタワシでこすって1分洗浄すると、TBZは31%、OPPは7%、DPは16%除去できる。
②レモンティーにはどのくらい溶け出るかの試験
紅茶100mlにレモン10gの割合でレモンティーをつくる。スライスしたレモンを入れておく時間は1分間。結果はTBZの溶出率は74%、OPPが8%、DPは3%でした。
なお、この試験は、前述したように筆考が在籍した東京都消費者センター試験室での最後のテストで、下ごしらえによる食品の有害物質除去の可能性を考えるきっかけとなったものです。
ハクサイ結球部の部位別
キャプタン(塩素系殺菌剤農薬)残留濃度試験
ハクサイの農薬散布直後では、最外葉から1枚目で17ppm、2~3枚目合わせて0.37ppm、4~5枚目合わせて0.18ppm。6~7枚目になると0.062ppmとグンと少なくなります。
また、散布後7日目では、1枚目は9.1ppm、4~5枚目になると0.082ppmと少なくなります。
散布後になると、1枚目、2枚目合わせても0.22ppm、3~4枚目で0.082ppmと少なくなります。
結球野菜は外葉を1枚除くようにする下ごしらえは、この試験でも納得できます。
2.トマトの残留農薬の分布試験
殺菌剤である有機恥素系農薬キャプタンのトマト果肉残留濃度は、果皮の残留濃度の約1/15であり、殺虫剤の有機塩素系農薬のディルドリンやDDT、有機リン系のピリミホスメチルは表皮にのみ残留。果肉にはほとんど残制していません。
すべての農薬に対して当てはまるわけではありませんが、下ごしらえでのトマトの湯むきは不安を減らすよい方法です。
キュウリの洗浄による残留農薬の除去効果試験
キュウリを中性洗剤0.1%加えた水に入れ、ときどき攪拌しながら、10分間浸した後、スポンジで軽く表皮がはがれない程度にこすり、流水中で中性洗剤が完全に除かれるまで洗います。
すると殺虫剤の有機リン系のジクロルボスは47%除去されました。同じ方法で、殺虫剤の有機リン系のフェントエースは66%除去されました。同様に、殺菌剤のジチオカーバメート系でのマンネブの除去率は15%と低いものでした。
洗剤を使わないでキュウリを流水しながら手でこすり洗いをしたとき、殺菌剤の有機塩素系のクロロタロニルの除去率は93%、ところが水洗いによる殺菌剤オキシデブロスの除去率は5%と低いものでした。
おばあちゃんの下ごしらえの知恵の水洗いでも、農薬の種類によっては、よく除去されたり、除去されなかったりすることがあると知っておくことが大切です。ここで残った農薬の不安は、食事の組み合わせの解毒方法で減らすことになります。
ホウレンソウの加熱調理(ゆでる、炒める)にともなう残留農薬の減衰試験
①鍋にホウレンソウの10倍量の水を沸騰させ、細切りしたホウレンソウを入れて5分間ゆでてから水切りした場合、殺虫剤の有機リン系のEPNの残存率は約60%。同じ方法で、殺虫剤の有機リン系のフェニトロチオンの残存率は約25%。殺虫剤のカーバメート系のカルバリルの残存率は低く5%でした。
②ティースプーン3杯のサラダ油をひいたフライパンに細切りしたホウレンソウを入れ、中火で3分間炒めてから油切りした場合、殺虫剤のトリクロルピリジル系のクロルピリホスの残存率は約60%と高い。同じ方法で、殺虫剤の有機リン系のEPNの残存率は約25%と低くなっています。
おばあちゃんの知恵の下ごしらえの「ゆでこぼし」「炒める」は、食材によって違いますが、残留農薬を減らすことは間違いないことがわかります。
3.牛肉、豚肉をゆでることによる脂質の減少について
牛肉、豚肉をゆでる、焼く(網焼き)ことで、脂質は減ります。
①牛肉では牛肉薄切りは、ゆでることで脂質が22.6%減ります。また、牛もも肉厚切りは網焼きすることで脂質が13.4%減ります。
②豚肉では豚もも肉の薄切りでは、ゆでることで脂質が51.6%減ります。
また豚肩ロース厚切りでは、網焼きで脂質が14.2%減ります。
脂質が減るということは脂質に蓄積されやすい有害物質の有機塩素系化学物質やダイオキシンなどを減らせるということです。
ここで取り上げた試験結果を含め、数多くの公的試験結果からの残留農薬に関する考察
4.農薬残留の実態
農薬の基準価を超えた例もいくつかはあっても、総体的には残留農薬の検出頻度、検出量がとくに高いものはなかったことから、一般家庭が水洗いや下ごしらえの調理に注意して食べるうえでは、とくに問題がない状態といえるようです。
調理による残留農薬の除去について
洗浄にともなう減衰
農産物の洗浄には、洗剤は使わないほうがよいとされてきましたが、流水中での水洗いだけで残留農薬の除去率がよい場合もあれば、洗剤を使用した場合のほうが除去率がよい場合もあります。農薬や農産物によって、除去率は異なります。
また、農作物に残留した農薬は、その種類や農薬散布後の経過時間などにより、洗浄除去率などが大きく異なることがあることもわかりました。
調理による除去効果
多くの農薬は、「水洗い」「皮をとる」「ゆでる」「炒める」「揚げる」などの調理により、残留量が大きく減少するものもあれば、あまり減少しないものもあります。
しかし、まったく効果がないということはありませんでした。やはり「水洗い」や「ゆでる」といった、調理時の下ごしらえが大切なことがわかりました。