目次

1.野菜の栄養価は昔より低下している?
「野菜の栄養価が昔より低下した。だからサプリメントが必要」とよくいわれますが、本当にそうでしょうか。1982年発表の食品成分表(四訂版)と2000年発表で現在使用中の成分表(五訂版)に記載されている野菜の成分値(100g当たり)を比較してみました。

ほうれん草のビタミンCの場合、四訂版は「65mg/100g」。五訂版は「35mg/100g」とたしかに少なくなっています。しかし四訂版は野菜が旬の時期の成分値であり、五訂版は通年平均値なので、同じ成分値でも意味が違います。

もう一つ、分析方法や換算方法が違ってきたことも一因。例えばビタミンCを測定する場合、四訂版ではビタミンCの仲間としたものが五訂版ではビタミンCではない成分として分類されたりする。また昔と今とでは品種が違う場合も。トマトのビタミンCの場合、四訂版は「20mg/100g」。五訂版「15mg/100g」ですが、これは昔より今のほうが酸味が少なく、糖度の高い品種が出回っているためと思われます。

以上のことから、単なる数値の比較で「昔より栄養価がおちた」といえないことがおわかりいただけたでしょうか。


2.野菜粒で野菜不足を補える?
野菜を乾燥させて粉末にし、それを錠剤にしたのが『野菜粒』です。
「野菜不足の現代人」がターゲットだとか。

他のサプリメントのように特定成分だけを抽出したのでなく、「野菜丸ごと」には好感が持てますが、まさに餌を口にしているような感じ。ペットフードって多分、こんなものなのでしょうね。

ところで問題は、これの1日分(5粒)が野菜どれだけに相当するかです。「野菜をぎゅっと凝縮」などと書いてあると「そんなにたくさん、スゴーイ!」と思ってしまいそうですが、メーカーに聞くと、なんと「1日分(5粒)は野菜22gに相当(生で換算して。例えばキュウリ1/6本)」とか。

であるとすると、厚生労働省が提示の「野菜の摂取目標量1日350以上(成人1人当たりどの10分の1にも満たない量です。

袋には1粒当たりの野菜の量がズラリならんでいかにも多そうに表示されていますが、単位なので、ほんのおしるしといった感じ。栄養成分も、製造工程で熱を加えることからしてビタミンCはまず期待できないし、酵素活性も失われていると思われます。

栄養成分表示を見ると(炭水化物は糖質と食物繊維に分けて書いてある)、食物繊維の量は1粒当たり0.067gということは「5粒で約0.3g」ですから、これも目標量(成人約18g/日)にはほど遠い。ということで、飲む価値ありや否や

「気休めとして飲んでいます」「飲まないよりはマシかなぁ、という程度」「『今日、野菜食べてない!という危機感からは解放される」というものも。
なるほど、これも効果の内なのですね。


3.野菜ジュースを飲むと効果はあるの?
野菜ジュースが人気とか。「野菜不足の解消」を願ってのことでしょうが、過大な期待は禁物。ご存じのように市販の野菜ジュースは野菜の搾り汁なので、野菜を粉砕して搾り、ジュースを搾り取るという加工段階で、食物繊維やミネラル分(カルシウムなど)の大半は搾りカスのほうに移行するし、熱や水、酸化に弱いビタミンCもほとんどなくなってしまうからです。

しかし、実際の商品などには、野菜350g分使用などと書いてある。「これで野菜1日分の栄養がとれるのね」と勘違いする人もいそうですが、トンデモナイ!ジュースになるともとの野菜成分とは大きく変わってしまうことは、名古屋市消費生活センターのテスト(2007年)でも確認されています。

またこのことは製品の栄養成分表示を見ても明らかで、食物繊維はごくわずかですし、ビタミンCやミネラル分は記載されていない品が多い(表示義務はないが、多ければ表記されるはず)。もし記載されていて量が多かったら、食品添加物で補っていると思われます。原材料欄に、「VC」とか「乳酸カルシウム」と書いてあればそうです。

「野菜1日分がとれる」と勘違いする人もいそうと書きましたが、以前はもっとひどく、明らかに勘違いをねらっていると思われる表現でした。「誤解を招く表現は改めるように」と消費者団体から公正取引委員会への申し入れがあって今のようになったのですが、いずれにしろ野菜ジュース、野菜の栄養分そのままとはいきません。

でも、食事を基本にして補助のつもりで飲むなら、飲まないよりはましかも。大ざっぱにいって、ジュースに残っているのはもとの栄養分の3分の1、よくて半分くらいのようですよ。もちろんものによりますが。

「野菜系飲料」についてもこれってネーミングも絵柄もいかにも野菜ジュース風。
したがって野菜ジュースと思い込んでいる人がいるかもしれませんが、その実「果実・野菜ミックスジュース」です。

よく見ると、「果実汁○%+野菜汁○%」と書いてある。
そう、野菜ジュースというより果実ジュースに近いものなのです。その分飲みやすくはなっていますが、野菜成分はより少なく、糖分は多く、カロリーも高めとあって、単なる嗜好飲料と割り切るべきでしょう。
それにしても、野菜ジュースと見間違うこのネーミングと野菜をちりばめた絵柄ときたら、まさに消費者の誤認をねらった表示と思いませんか。

一方、手作りのミキサーで作るどろどろのジュース(カスも一緒の)はどうかというと、緑黄色野菜を入れると飲みにくくなって正直まずい。といって、緑黄色野菜を入れないと意味がないですし。リンゴやバナナ、またハチミツを入れるのも一法でしょうが、そうなると、野菜ジュースではなくなってしまいます。

毎朝、ミキサーでガーッとやっていた時期がありますが、後片付けが面倒なこともあって、長続きしませんでした。模索の末、今は、野菜は野菜のまま食べるようにしています。そのほうが断然おいしいし、噛んで食べることの満足感もあります。

いつでもすぐ食べられるように下ごしらえして冷蔵庫に入れておくのがコツ。
最後に野菜の摂取目標量ですが、成人1人当たり350g/日以上、うち緑黄色野菜は120g/日以上(「健康日本別」厚生労働省)。しかし国民健康・栄養調査ではその8割5分もとれていないとか。ちなみに2008年の同調査では成人で295g/日、外食続きの人だとこの半分もとっていない人が多いかもしれません。

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