目次

1. HACCPシステムの導入
従来の食品 (製造または加工方法の基準が定められた食品であって政令で定めるもの) の衛生管理は、完成した最終製品からサンプルを採取して、衛生検査等を実施することにより行われてきた。

この方法ではその製品の最終衛生状態のみしか把握できず、 もし不良結果が発生した場合でも原因特定をするうえにおいて、 製造工程等のどこに原因があるのかを特定するのが困難であった。

しかし、1995年5月24日の食品衛生法の改正で、HACCPの概念を導入した衛生管理方式が確立された(総合衛生管理製造過程という)。この方式は営業者が食品衛生法施行令の政令で定められた食品について7つの原則に基づいた衛生管理方式を直接行い、厚生労働大臣に承認された施設のものが食品として販売可能となる制度である。

そもそもHACCP は後述するように米国で宇宙食製造のために発案された衛生管理方式であるが、その有効性が認められ各国に推奨され普及しつつある。日本でもHACCPの考え方を取り入れた衛生管理を政策として推進していくためのHACCP手法支援法(食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法) が1998年制定された。

特徴
現在のHACCP方式の概要は食品の製造・加工等各工程ごとに発生する可能性のある食品衛生上の危害(hazard)をあらかじめ分析(analysis)する。

そして製造工程のどの段階で、あらかじめどのような対策を実施すれば安全性が確保される製品を製造・加工出来るかという「重要管理点」を設定する。そしてこの重要管理点を製造・加工中の全期間にわたって連続監視することで、製品の安全性を確保するものである。つまり柱は危害分析と重要管理点を連続あるいは相当頻度で監視する2つから構成される。この承認申請は製造・加工基準が定められ、かつ、政令で定められた食品には必須である。

(1)食品による危害予防システム
原材料の生産、製造・加工工程および消費の各段階ごとの危害 (生物学的、 化学的、物理的)を分析特定し、それに対応した防止措置を定めることから、食品による危害の発生を予防する手段といえます。

(2)重要管理点の特定
全ての工程の危害分析結果に基づき、食品摂取による危害発生を防止するための重要管理点を特定することにより、重点的管理が可能となる。

(3)管理基準の設定
重要管理点が設定されると、それを管理する基準(例: 加熱時間と温度、p H 等) も決定する。これは経験や勘に基づくものは基準にならない。温度、湿度等の直ちに計測されデータ化され根拠が科学的で、かつ、 CCPのためのCL として相応しいものでなければならない。したがって科学的であっても日数を要する微生物学的なものは相応しくない。

(4)監視(monitoring)方法、改善措置(correctiveaction)の設定
管理基準が遵守されているかどうかを確実にモニターし、もし基準から逸脱した場合は改善措置を講じ、 安全性が保証できない製品あるいは半製品が次工程に流出することや市場流通されるのを防止する。

(5)食品衛生監視員は重点部分を過去から監視可能となる
従来の監視では立ち入り時の工程管理や衛生管理しか把握できなかった。しかし、食品の製造工程において営業者が重要管理点、管理基準、モニタリングおよび改善措置等について記録を取っているため、立ち入り時点のみならず過去にさかのぼって調査することにより、どのような衛生管理状況が行われてきたか監視出来る。

(6)食品衛生監視員の適切な指導が可能となる
記録に基づいた監視が可能となることから、重要管理点の管理状況が集中的に行える。営業者がこのことを適切に管理しコントロールしていることが確認出来。専門的立場からの助言や指導が重要部分について行える

(7)原材料

①食品の安全性が向上する。
②不良食品が特定されるため資源が有効利用される。
③衛生上の危害に適切にしかも適時に対応可能となる。
④国際的信頼性が向上する。


2.食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法(HACCP手法支援法)
背景
HACCP(危害分析・重要管理点)手法の導入による食品の製造過程の管理の高度化を進めるため、必要となる施設の整備に対する金融や税制上の支援を講ずる内容とするもので、平成10(1998)年5月(7月1日施行)に5年間の時限法として制定され、平成15(2003)年6月に更に5年間延長する改正法が公布された(平成15(2003)年7月1日施行)。この法律は、食品衛生法に基づく総合衛生管理製造過程の対象施設に限るものではなく、広く一般の衛生・品質管理の高度化を進めるためのものを対象としている。

目的
食品の製造過程において、食品に起因する衛生上の危害の発生の防止と適正な品質の確保を図るため、その管理の高度化を促進する措置を講じ、もって公衆衛生の向上および増進に寄与するとともに、食品の製造または加工の事業の健全な発展に資することを目的とする。(法1)

主な定義
「製造過程の管理の高度化」:食品の製造または加工が次に掲げる製造または加工の過程を経て行われることにより、衛生管理および品質管理の確実性および信頼性が向上することをいう。
①製造または加工の方法およびその衛生管理の方法につき食品衛生上の危害の発生を防止するための措置が総合的に講じられた製造または加工の過程
②製造または加工の方法およびその品質管理の方法につき適正な品質を確保するための措置が総合的に講じられた製造または加工の過程すなわち、衛生管理のみならず品質管理に関するものも対象としている。(法2)


3.食品添加物の使用目的とメリット&デメリット
食品添加物の使用目的による分類
①食品の製造加工に必要不可欠なもの (マーガリンの乳化剤、豆腐の凝固剤等)
②食品の栄養価を維持・強化させるもの(果実飲料の強化剤のビタミンC、味増のクエン酸カルシウム等)
③腐敗・変敗、その他の化学変化を防ぐもの(ワインの酸化防止剤・二酸化硫黄・柑橘類やバナナの防ばい剤等)
④食品を美化し、魅力を増すもの(着色料,調味料,香料等)
⑤食品の品質の改良等をするもの(ドレッシングの乳化安定剤・カラギナン・アイスクリームの安定化に使うカラギナン等)
⑥資源を有効に利用するためのもの(植物油の抽出溶剤・ヘキサン・スケトウダラ冷凍すり身の製造に使用するリン酸塩等)
⑦食品の製造を合理化するもの( ミカン缶詰製造のジョウノウ除去用・塩酸・水酸化ナトリウム等)


食品添加物使用のメリットとデメリット
保存料を例にして、メリットとデメリットを示した。
メリット
(1)食品の保存時間の延長
微生物の増殖をある程度は抑制できる。食中毒菌やカビ等の生育を抑え、これらによる事故を防止するのに効果がある。
(2)食料資源の有効利用
多くの食品が腐敗して廃棄されている現状がある。 このことは特に熱帯および亜熱
帯の地域で顕著である。 一方、食糧危機の地域もある。 腐敗を防止して、貴重な食料
を有効に利用することができる。
(3)食品の価格安定
安全な食品を大量に生産し,多くの地域に過不足なく流通させることができる。 こ
れにより食品の価格の安定に寄与できる。

デメリット
①細菌等微生物の増殖を抑える働きの強いものは、ヒトの細胞に対しても毒性を有する。 各国で使用されている保存料の毒性は弱いものが使用されているが、他の食品添加物より毒性は強く、使用量の制限が厳しく設けられている。
②保存料の効果を期待しすぎて、製造、流通、販売等の衛生管理がおろそかになる恐れがある。 本来は製造技術の改善や低温流通システムの導入等で解決すべきである。
食品添加物の使用はメリットとともにデメリットがある。そこで、必要最小限を使用し、安全性を十分に考慮しなければならない。



4.6つのポイントを押えて家庭で行うHACCP
ポイント1 : 食品の購入
①肉,魚,野菜等の生鮮食品は新鮮な物を購入すること
②表示のある食品は、期限表示を確認すること
③食品のうち肉汁、魚等で水分が漏れる可能性のあるものはビニール袋に入れて持ち帰る (他の食品への相互汚染防止)
④冷蔵・冷凍を要する食品の買い物は最後にし、寄り道をせずに帰宅すること

ポイント2 : 家庭での保存
①冷蔵・冷凍を要する食品は、帰宅後直ちに冷蔵庫・冷凍庫に収納する
②冷蔵庫・冷凍庫は余裕をもって容量の7割程度を目安に収納すること
③冷蔵庫・冷凍庫の温度管理を徹底するため、温度計設置とともに扉の開閉時には
温度確認を励行すること。 冷蔵庫は10℃,冷凍庫は一15°Cである。一般的には10°Cで細菌は緩慢に増殖し、-15℃では増殖が停止する
④肉、魚、卵等を扱う前後は必ず手指を洗浄し、細菌を荒い流すこと
⑤肉、魚等は専用容器に入れて冷蔵保管し、相互汚染防止を行うこと
⑥食品は床に直接置かないこと。また、流し台下の場合は水漏れに注意すること

ポイント3 : 下準備
①台所の周辺準備として、ゴミの廃棄と整理整帳し、タオル等は清潔なものを使用する
②生肉,魚,卵,動物を触った後やトイレの後は手洗いを励行する
③包丁、まな板は肉、魚、野菜用に分ける
④包丁、まな板、食器は洗浄後熱湯で消毒する
冷凍食品の解凍は冷蔵庫か電子レンジで行う
⑥調理等に使用する分だけ解凍して使用する

ポイント4 : 調理
①加熱は75°C1分間以上行う
②調理を途中止めした中間製品等は室温に放置せず冷蔵庫に入れる
③電子レンジで加熱する場合、熱のとおり難い物は時々かき混ぜる

ポイント5 : 食事
①食卓につく前に手洗いし、清潔な手指で清潔な器具を使用し清潔な食器に盛り付け
②暖かく喫食する場合は65℃以上、冷やして喫食する場合は10℃以下にする
③調理前の食材、喫食前の食品は室温に長時間放置しない

ポイント6 : 残った食品
①残った食品を扱う前の手洗いの励行
②残った食品は小分け容器に入れて保存する
③残った食品を再加熱する場合、75°C1分間以上行い、スープ類は沸騰させる
④時間を経過しすぎた食品は廃棄する


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