目次

1.主な輸入品目と主な輸入先
輸入食品の審査や検査

現在、私達日本人が食べているもののうち、牛乳、卵、市販されている米、野菜の一部などを除き、ほとんどすべての種類の食料品が輸入されています。

しかも、店頭で産地表示がされない限り、国産品か輸入品か、輸入品であれば、どこの国で生産されたものか、一般の消費者にはほとんど区別できません。

まして、原料を輸入し日本で加工したものは、まったく区別することはできません。
パンやめん類、豆腐やみそ、しょう油などは、原料の大部分は輸入品であることすら知らない人も多いようです。

○○県名産の○○と表示された商品は、原料もその県のものと思い込んでしまうことがありますが、実際には原料は輸入品ということもめずらしくありません。現在国内だけで生産され、同一か類似したものが絶対に輸入されていないものを探し出すことが困難なほどです。

輸入にあたっては、すべて税関を通りますが、このことを「通関」と呼んでいます。「通関」するときのために全食料品が分類され「品目番号」が付けられています。この「品目」を数えてみると食料品だけで1400以上あります。

この「品目」ごとに、輸入するときの関税率や輸入制限方法などが詳細に決められていますが、大変複雑で説明や字句も役所言葉で一般の人にはまず理解できません。これらの「品目」は20類以上に分類されており、例えば、食肉類、水産物、酩農品、果実、ナッツ、かんきつ類、穀類などとなっています。

輸入量や輸入金額などが時折報道されますが、その時の数字はこの「品目」と「分類」によるもので、あくまでも行政上の分類であり、消費者の便宜のためのものではありません。例えば、一つの「品目」の中にいくつかの魚の種類がまとめられていたり、消費者にとっては同一の肉であっても、輸入後の用途や輸入制限のために、いくつかの「品目」に分けられたりしています。

消費者側に必要な、種類や品質差、価格差、衛生管理の差などからすれば、輸入統計に使われている「品目」数よりはるかに多くの種類の食料品が輸入されているのですが、そのような視点に立った統計はありません。

この「品目」と分類別から輸入されている食料品の種類と主な輸入先を見ると、おおむね次のようになっています。

日本が1997年に輸入した全食料の金額を地域別、国別に見ると、アメリカからの輸入が全体の約29%、続いて中国が約11%で、5~6%台の国・地域はオーストラリア、カナダ、タイであり、2~3%台は韓国、インドネシア、台湾、フランス、ロシアとなっており、その他の100か国・地域以上から残りの約29%が輸入されています。

最も重要な食料の輸入先は、アメリカとカナダの北米であり、この両国からの輸入が34%を占めています。過去を見ても、この両国からの輸入が常に35~45%を占めており、日本人の食生活に最も大きな影響を与える地域といえます。

近年、日本の食料の輸入先として話題が多い中国、タイ、インドネシアなどのアジア各国からの輸入は、北米に比較すればはるかに少ないのですが、近年では中国からの輸入が増加しています。

輸入金額を品目別に見ると、最も多いものは水産物(魚貝類)で全休の32.3%を占め、続いて肉類16.5%、穀物12.7%、野菜6.1%、油糧種子(食用油の原料)5.7%、飼料と果実がそれぞれ5%程度で、以下コーヒー、飲料と続きます。
乳製品は輸入規制などにより1%台と、現在ではまだあまり輸入されていません。

2. 日本にとって重要な品目の例をあげてみましょう。牛肉は、アメリカ産とオーストラリア産がそれぞれ47%強を占めており、ニュージーランド産が3位です。豚肉は、台湾産40%弱、アメリカ、デンマークの順でしたが、台湾に口蹄疫伝染病が発生し、輸入が禁止されたため、同年にはデンマーク産が28%となり、続いてアメリカ産27%、他にカナダ、韓国産となりました。鶏肉は、中国が42%弱で、続いてアメリカ、ブラジル、タイの順でした。酪農品は、粉乳とチーズが主に輸入されています。主な輸入先はニュージーランドとオーストラリアのオセアニアの二か国でした。

水産物のうち、エビはインド、インドネシア、ベトナム、タイの順に多く輸入されました。サケ・マスはチリ産が最も多く、続いてアメリカ、他にはノルウェー、ロシア、カナダの順。マグロ・カシオは台湾、韓国、インドネシアが主体です。

穀物では、米は輸入自由化されていませんが、小麦、とうもろこしなど、食用・飼料用ともにアメリカが圧倒的に多い野菜・果実のうち、いくつかの品目を例にあげると、たまねぎ、ブロッコリー、ばれいしょ、オレンジやグレープフルーツなどのかんきつ類などはアメリカ産が圧倒的に多く、かぼちゃはニュージーランドとメキシコ産が多く、しいたけは大多数は中国産、バナナは74%程度はフィリピン産でした。





3.食品検査も過信しすぎないこと
輸入される食品については、その安全性確保の観点から食品衛生法第27条に基づき、輸入者に対して輸入届出の義務が科せられています。

食品衛生法第27条では「販売の用に供し、又は営業上使用する食品、添加物、器具又は容器包装を輸入しようとする者は、厚生労働省令の定めるところにより、そのつど厚生労働大臣に届け出なければならない。」と定め、輸入届出を行わない食品等については販売等に用いることはできないとしています。

食品等輸入届出書は、厚生労働省検疫所に届出られます。

届出を受け付けた厚生労働省検疫所では、食品衛生法に基づき適法な食品等であるか食品衛生監視員が審査や検査を行います。

現在、輸入食品を検査する検疫所が日本各地に31箇所ありますが、検疫体制が広く浅くなっていると思います。
サンプル検査ですが、サンプルを抜いた後の輸入品は検査結果を待たず流通させるそうです。

つまり、もしサンプルから毒物などが発見されても、問題の食品が既に食卓に上がった後ということは普通にありえるのだとか。
人員不足も問題ですがこちらも大問題だと思います。


現在の検疫での検査率は輸入品の1割程度に過ぎず、残りの9割は事実上検疫を素通りしているそうです。
100%の検査というのも現実味がありませんが、一時的に流通を止めるためのスピードアップ分も考えると、現状の5~10倍くらいの人員は必要ではないでしょうか。

4.検査等の種類
●抗菌性物質等

魚介類、肉類、冷凍食品

●残留農薬

野菜・果物

●食品添加物

加工食品、菓子、清涼飲料水

●食中毒菌

魚介類、肉類、冷凍食品

●組み換え遺伝子

野菜・果物。


5.結果が出た時には胃袋の中
もう一つの問題は、国の行っている輸入食品検査行政検査)が、輸入食品の流通を止めずに行うモニタリング検査となっているということである。輸入食品のサンプルをとって検査をするが、当該輸入食品は市場流通し、検査結果が出た時に、店頭に並んでいるか、場合によっては食卓に上って私たちの胃袋の中ということになる。こんな検査では、いくら食品衛生監視員を3000人に増やして検査率を上げても、国民の健康を守ることができないことは自明である。

国の検査は、きちんと検査結果が出るまでは流通を止めるという、本来の検疫検査にすべきである。
現在、この本来の検疫検査に近いものが「命令検査」である。これは、国が輸入業者に検査をするよう命令し、輸入業者が自分でサンプリングし、民間の検査機関に検査を依頼し検査結果を国に提出するというもので、検査結果が出るまでは輸入ができない仕組みになっている。

しかし、サンプリングを輸入業者に委ねている訳で、その検査の信頼性には疑問符も付きかねない。
このような輸入食品検査でどのような事態が起こっているのか。01年には、輸入検査を受けず、国内に輸入された病原性大腸菌0―157に汚染されたカナダ産牛肉や米国産牛肉によって、1都9県で210名もの患者を出す集団食中毒事件が発生した。

また、現在ウイルス検査は一部しか行っていないため、ノロウィルスに汚染された輸入魚介類やA型肝炎ウイルスに汚染された輸入貝類はノーチェックで輸入され、全国各地で被害をもたらしている。

また、06年にモニタリング検査でリステリア菌に汚染されているナチュラルチーズが判明した。しかし、そのナチュラルチーズは、食卓に上った後だった。
さらに、06年に、輸入ショウガに日本で使用が禁止されている農薬BHCが高濃度残留していたことが判明した時、大阪のスーパーで売られていた輸入ショウガはすべて消費された後だった。このような事例は枚挙にいとまがない。
食の安全・安心を確立するためには、輸入食品検疫の抜本的強化が不可欠なのである。
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