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マーガリンやショートニングはトランス脂肪酸を含むので避けるべき食品
1.マーガリンに含まれる悪玉「トランス脂肪酸」
ほとんどの人は、動物性脂肪のバターにはコレステロールが含まれているため、バターより植物性のマーガリンのほうが健康的だと思っています。しかし、マーガリンは植物性の油だから体にいいというわけではありません。植物性油はとても酸化しやすく、たくさん摂取すると体内に過酸化脂肪が増えてしまいます。
過酸化脂肪とは、脂肪酸が酸化したもので、細胞を破壊する作用があり、血液の粘度を上げて血流を悪くさせます。
マーガリンやショートニングが体に悪いというのは、単にそれが酸化しやすい脂肪を使っているだけではありません。
マーガリンやショートニングの原料となる植物や魚の脂肪は、常温では液体になっています。そのため、そのままではバターやラードの代用品にすることはできません。
そこで、水素を添加して融点を上げ、常温でも固まるようにしているのです。
実は、このとき「トランス脂肪酸」という悪玉ができてしまうのです。トランス脂肪酸は、天然の植物油にはほとんど含まれず、天然の植物油からマーガリンやショートニングなどを製造する過程で発生します。通常のマーガリンには、トランス脂肪酸が7~8%含まれています。
このトランス脂肪酸を多量に摂取すると、悪玉コレステロールといわれているLDLコレステロールを増加させ、善玉コレステロールといわれているHDLコレステロールを減少させてしまいます。
血中のLDLコレステロールが増加し、HDLコレステロールが減少すると、動脈硬化や心臓疾患のリスクが高まります。したがって、トランス脂肪酸の摂取と動脈硬化や心臓疾患のリスクには相関関係があると考えられるのです。
世界保健機関(WHO)は2003年、「トランス脂肪酸量は総エネルギー摂取量の1%未満とすべき」と勧告しました。そのため、03年以降、トランス脂肪酸を含む製品の使用を規制する国が増えています。
トランス脂肪酸の摂取量が増えると心臓病の危険が高くなるという理由で、05年1月から、ニューヨーク市はトランス脂肪酸の使用を控えるよう、市内の飲食店へ呼びかけました。その翌年1月からは、アメリカ全土で食品のトランス脂肪酸含有量を表示することが義務づけられました。
こうした動きは、アメリカにかぎったことではありません。オランダではトランス脂肪酸を含む油脂製品は販売禁止になっていますし、デンマーク、ドイツ、フィンランドなどでも規制があります。
日本マーガリンエ業会はトランス脂肪酸の問題について、アメリカ人の平均摂取量に比べれば、日本人の摂取量は少ないので、健康を害することはないとしていますが、マーガリンやショートニングの摂取には個人差があり、普段からとり過ぎている場合は注意が必要でしょう。
ちなみに、マーガリンはバターの代用品、ショートニングはラードの代用品ですが、バターもマーガリンも脂質の量はほぼ同じです。しかも、バターは大さじ1杯分で97キロカロリーですが、マーガリンは99キロカロリーと、カロリーもほぼ同じです。
2.バターとマーガリンは似て非なる商品同士の競演
バターもマーガリンもわが国には19世紀後半にはじめて輸入された。マーガリンは当初「マルガリン」と呼ばれていた。やがてバターの類似品としてアピールすることを狙ってか、「人造バター」と称すようになった。この「人造バター」なる名称は大正三年には農商務省令によってオーソライズされた。バター業界にとって、急伸著しいマーガリンは、ともに業務用需要が多いこともあって、大きな脅威となった。明治から大正、昭和20年で、両者の生産量は総じてバターの方が多かったが、少なからずマーガリンがバターを上回る年もあった。この確執は戦後も続く。
戦後も人造バターといわれていたマーガリンが、名称をマーガリンに変更したのは終戦から7年も経た昭和27年のことである。マーガリンは戦後のパン食文化の普及に伴い大きな成長を遂げる。
価格が安いこと、冷蔵庫から出してすぐにパンに塗れる簡便性が大きな起爆剤となった。他方、バターは風味において勝り、料理の味付けや菓子の原料として重宝がられた。
ただ、冷蔵庫の普及はバターの品質保持の面においてはプラスに働いたものの、石のようにバターを固くする点ではマイナスに作用した。また、コレステロールの問題などで健康志向を高める消費者にバターは敬遠されがちであった。
昭和40年代に入ると、家庭用マーガリンの消費がバターの消費を上回る勢いをみせる。現在では一兆円規模を誇るまでになったパン産業の成長に連動して、マーガリンも大きな成長をとげた。ただし、ここ10年は急速に成熟度を増し、昭和60年前後を境に生産量も減少傾向を示す。
それに対しバターは、規模的にはかなわぬものの、昭和50年代は相対的に高い成長の軌跡を描いた。高級化志向、手づくりケーキブームなどがバター消費にとって追い風になったものとみられる。
ただ、マーガリン同様、昭和60年代に入ると低下基調に入る。ともに日本にお目見えして100余年、欧米の食文化の伝道師としてここまで躍進してきた。また、それ自体が直接消費されるわけでなく、自らの運命を他の食品の動向に委ねている点も似てバターに追いつけ追い越せでがんばってきたマーガリンが独自の商品ポジションを確立し、「非なる」部分だけが鮮明になりはじめた頃から両者のライバル関係は薄れ、ともに市場の成熟期に突入した感がある。
そのことを証明するように、マーガリンではスーパーのPB(プライベートブランド)商品が売場の一角に定着し、NB〈ナショナルブランド)商品が絞り込まれていった。1993年には、味の素が、3位以下の市場ポジションに甘んじていたとはいえ、20年以上にわたり展開してきたマーガリン市場から撤退した。
いま再び、新しいライバル関係の形成が、つまりバター、マーガリン市場の開拓につながる「似て非なる」者同士の新しい競演が期待されている。
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