目次

1.魚介類の注意点
魚湾内や沿岸でとれる「近海魚」は、工場廃水や農薬、ダイオキシンなどの環境ホルモンで汚染されている心配があります。

「養殖魚」は、狭い生けすの中で大量の魚を飼うため、魚の病気発生を防ぐ抗菌性物質が使われることが多く、残留の不安があります。

こうした心配がほとんどないのが「回遊魚」です。群れをつくって季節ごとに移動するため、一ケ所にとどまっていない分、化学物質に汚染されることがあまりありません。

中でも、タラやマグロのように脂肪が比較的少ないものは、さらに安心といえるでしょう。 回遊魚、近海魚、養殖魚の例ですが、それぞれ脂肪の少ない順にあげてあります。 安心の目安として食べてよい回数をあげておけば、近海魚は月三回ぐらいまで、養殖魚は月一回程度ということになるでしょうか。

ハマチは養殖ブリのこと(関西ではかつてブリの若魚をさしましたが)。マスやアコもほとんど養殖ものです。 最近では、マダイやアジ、クルマエビなども天然ものより養殖魚のほうが多く出回っています。 表示で見分けられれば一番ですが、見分けがつかない場合は、旬のものを選ぶことをおすすめします。

昔から言われる旬の時期には、天然ものが多く、たとえばアジなら六~八月頃に買えば、天然のアジが手に入りやすくなるからです。 近ごろは遠洋ものや養殖ものが増えて魚の旬がわからなくなりました。

あとは下ごしらえに注意することです。

残留の起こりやすい頭、エラ、ワタは落とすこと、腹の中まできれいに洗うことなどで、残留物質の不安がかなり減ります

魚の種類や調理法によっては、湯に通して脂を抜いたり、調味液で下味をつけたり、みそ漬けやかす漬けにすることでも安心度が高まります。 なお貝類については、内湾でとれるため、また、一ケ所にとどまっているため、いずれも残留物質の不安が大きくなります。
そこで、砂抜きをしっかりして防衛することです。



魚の種類で安心度が違う!
回遊魚
季節ごとに移動するので、化学汚染物質の心配は少ない タラ、マグロ、卜ビウオ、カツオ、キンメダイ、アジ、サケ、マナガツオ、イワシ、サンマ、サバ、ブリなど

近海魚
港内や沿岸でとれるため、工場排水、農薬、ダイオキシンなどの不安 ヒラメ、キス、クロダイ、カレイ、スズキ、ワカサギ、メバル、力マス、タチウオ、サワラ、 クルマエビ、イカ、タコなど

養殖魚
狭いいけすで大量に飼うため、 病気発生を防ぐ抗菌性物質の恐れ マダイ、マス、シマアジ、アユ、ハマチ、クル マエビなど




2.不飽和脂肪酸が、コレステロール過多を抑える

若い人たちは、一般に魚よりも肉のほうが好きです。子どもたちが魚が嫌いだというときには、骨があるから食べにくいという理由があがることがあり、しつけの話に飛び火したりもしますが、肉の、うま味は強烈で、食べて幸せに感じますから、食べたくなるのは当然です。

一方で、一定の年齢に達すると、しだいに魚が好きになってきたという人も少なくありません。もちろん、伝統的に魚食の文化を築いてきた国ですから、文化や環境の影響も大きいと思いますが、栄養学的には脂質の違いをあげておいたほうがいいもしれません。

肉の脂質が中性脂肪やコレステロールが体内に溜まりやすい飽和脂肪酸なのに対して魚の脂質はコレステロールが溜まりにくい不飽和脂肪酸です。

若いうちは新陳代謝が活発で運動量も多いので、脂肪をエネルギ—に変換して使いきってしまうことができますが、中年以上になると基礎代謝量そのものが低下し、脂質を多く必要としなくなります。

しだいにあっさりした魚が好きになってくるのは、体が自然にバランスをとろうとしているのかもしれません。魚の脂肪にはエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサへキサエン酸(DHA)などが多く含まれています。どちらも体内では生成できない必須脂肪酸です。

血液をサラサラにして梗塞病を予防する機能があります。血液が凝固するのを抑え、中性脂肪を減らすので、動脈硬化、脳卒中、高血圧や血栓が原因となる心筋梗塞の予防にきわめて有効なのです。DHAは高脂血症、高血圧、脳卒中、虚血性心疾患のほか、認知症予防に効果があるとされています。つまり学習能力を高めるのです。

どちらも悪玉コレステロールを減らして善玉コレステロールを増やします。したがって、魚の脂肪はどんどん食べたほうがいい。では、DHAやEPAを上手に摂取するためにはどうするかというと、その答えは「刺身で食べなさい」ということになります。


ココが良くない

狂牛病問題をきっかけに、肉食の危険性が広く知られるようになったことや、魚に含まれるDHA(ドコサへキサエン酸)が頭にいいといわれるようになって、魚を食べることの利点があらためて注目されるようになっています。

しかし、魚や貝が育つ海や川は、ひどく汚されています。日本の近海には、ダイオキシンやPCB、水銀などの汚染物質が流れ込んでいます。これらの物質は、プランクトンのような小さな生き物から小魚へ、そして小魚を食べる大きな魚へと、段階を経て 次第に濃縮され、ついには人の体に入ることになるのです。

実際、大都市沿岸で捕れたサバ、ハマチ、マイワシなどは、ダイオキシンの濃度が高いことがわかっています。

養殖魚にも、心配な点が多くあります。生け簀の中で過密状態で飼育され、病気や感染症などにかかりやすくなっているため、これを予防したり、病気の魚の治療のために、合成抗菌剤、抗生物質などを混ぜた「配合飼料」が与えられているのです。杭菌 剤や抗生物質は当然、微量ではあるにせよ私たちが食べる部分にも残留しています。

流通にも問題があります。魚介類は、輸入ものだけでなく、近海物でも多くは冷凍で輸送されます。冷凍された魚介類には、酸化を抑えるため、表面に被膜をつけるグレーズ処理が行われます。

このグレーズ処理に使用されるのが、制料のアルギン酸ナトリウムやプロピレングリコールなどの危険な添加物。これらも大いに残留している可能性があります。

寒い季節は、イカ、サバ、アジに寄生している寄生虫アニサキスによる感染症が懸念されます。アニサキス症は、年問2000~3000件は発生していると見られています。

逆に暖かい時期には、人食いバクテリアのビブリオブル=フィカスの感染の心配があります。感染すると、数時間から数日で手足が腐って死んでしまう恐ろしい病気で、アルコールの飲み過ぎなどで肝臓が弱っている、 中高年の男性が犠牲になりやすいようです。肝臓が弱っているという点では、レトルト食品を食べて育ってきた若い世代も同様です。

解決方法

寄生虫や感染症を選けるためには、近海魚の生食はひかえたほうがいいでしょう。汚染物質の影響が少ないのは、回遊魚、近海魚、内湾魚、養殖魚の順です。また、天然ものが多く出回る旬の魚を食べれば、汚染物質の影響は少ないといえます。

最近では、養殖業者のなかにも、出荷の1年前からは杭生物質は与えないなど、安全性に配慮した業者が現れ、出荷される魚は店頭に並ぶときにシールが貼られて、ほかの魚にはない安全性をアピールしています。ぜひ参考にしてください


表示例:パック詰めされているもの

韓国産(北太平洋)  本マグロ(刺身用) 解凍
内容量:100g
価格:890円
消費期限:平成25年9月15日
保存方法:10℃以下で保存
株式会社○○
住所
電話番号

⇔国産の場合はとれた水域名、都道府県名
輸入品は原産国名、水域が併記されることもある
⇔解凍・養殖の場合は表示が必要








たらこ・明太子

ココが良くない
炊きたての白いごはんに鮮やかに映える紅色のたらこには、通常、着色料や発色剤が使われています。安全志向を反映してか、「無着色」や「薄色」と表示されたものもありますが、添加物の表示を確かめると、 実は発色剤の亜硝酸ナトリウムを使っているものがほとんどです。

赤い血液の色をいつまでも赤く保たせるために使われる亜硝酸ナトリウムは、危険性が強いと指摘され、魚の卵や肉に含まれるアミンという物質と合わさると、ニトロソアミンという発ガン物質ができます。

たらこは魚卵で、それ自体にアミンが含まれていますので、ニトロソアミンができる可能性は、 亜硝酸ナトリウムがしばしば使われているハムやソーセージよりも高くなります。

解決方法
たらこはスケトウダラの卵ですが、日本の近海で捕れるスケトウダラから作られたたらこは、現在では流通量の1割程度といわれています。

日本の近海でスケトウダラが捕れるのは、11月から1月にかけてです。加工やパックが行われて市場に出てくるのは、この時期から少し遅れた頃ということを考えて買うようにしましょう。そのうえで、表示を見て、着色料にター ル系色素、発色剤に亜硝酸ナトリウムが使われていない商品を選びましょう。

ただし、たらこや明太子、いくらなどに含まれている添加物は、水に溶けやすいものがほとんどです。食べる前にぬるめの水に数分浸すだけで、ある程度は溶け出します。また、火であぶれば、水分と一緒に添加物を減らすこともできます。

このときに注意が必要なのは、ぬるま湯に浸したり半生程度に焼いたときに、細菌の活動が活発になることです。一度、手をかけたらすぐ食べ切るようにしましょう。


サケ
若さを保ち、生活習慣病を防ぐアスタキサンチンが豊富
肉の色が赤いのがサケの特徴ですが、この赤い色はアスタキサンチンという色素によるものです。

この色素は抗酸化物質で、とても活性酸素消去能力の高い物質です。肉の色の赤身が強い紅ザケにはとくに多く含まれています。この色素は、体内に入るとビタミンAとして働きます。

ビタミンAばかりでなくB1も多いので、栄養代謝もよい。もちろんたんばく質も豊富で、とくにEPAが多く含まれています。
肉の色の薄い白ザケにもアスタキサンチンはありますが、有効なのは生のものだけで、塩ザケでは効果はありません。ただし、色素の多い紅ザケならスモークした後でも吸収できます。

生ザケなら、焼くのはもったいない。脂が落ちるときにEPAも落ちてしまいます。
蒸したものをほぐして、カレイと同様にゼリ—寄せにしたり、ご飯に炊き込むのもよい。

加工品の塩ザケは、塩分の量に注意が必要です。おにぎりの具になるほど一般的な加工食品ですが、塩ザケ一切れで、一日の塩分量の二分の一程度は摂取してしまいます。
毎日食べていては、高血圧や脳卒中が心配になります。



サバ
若さを保ち、生活習慣病を防ぐアスタキサンチンが豊富
アジ、イワシ、サンマと並んで大衆魚の代表であるサバは、脂がたっぷりあるのが特徴です。

この脂質は、EPA、DHAなどの多価不飽和酸で、血中のコレステロールや中性脂肪を分解する効果があります。

また、DHAは記憶力に作用します。脳のなかで記憶を司る海馬と呼ばれる部分の三割はDHAで構成されているほどで、大事な栄養素。 認知症防止にも有効です。

EPAは、体内でDHAが不足するときにはDHAに変わる物質です。 サバの場合、EPAは血合いと呼ばれる赤身の部分に多く含まれています。皮下脂肪にEPAが多いイワシよりも大量にEPAを摂取できるのがありがたい。残さず食べましょう。

しかし、EPAやDHAは酸化しやすい物質でもあります。過酸化脂質に変わってしまうと、逆にガンや老化の原因にもなります。

また、サバのうま味成分であるヒスチジンは、鮮度が落ちると有害なヒスタミンに変わり、じんましんを発症させることがあります。サバは「生き腐り」といわれるように傷みが早い魚ですから、新鮮なうちに食べることが必要です。

海産物に関しては、輸入モノを国産と偽ったり、明らかに「偽装」と思われる表示や、消費者をまどわせる「まぎらわしい表示」がまだまだ横行しているのが現状だ。

その代表が「関サバ・関アジ」である。食通の間で知られる高級魚で、豊後水道で一本釣りされ、大分県佐賀関町漁港で水揚げされたアジやサバだけにつくブランド名だ。

なんと、関がつかない、普通のアジやサバに比べて値段は五倍以上にも跳ね上がる。
本物は「認定シール」が一尾ずつ貼られているが、シールなしの「関サバ・関アジ」が売られていることも多く、これはニセモノと思って間違いない。


サンマ
優れたたんぱく食品
必須アミノ酸の含有率を示すプロテインスコアで、サンマは九六。牛肉が七九、チーズでも八二ですから、優れたたんぱく食品であることがわかります。

もちろん魚のなかでは最高です。しかも、たんぱく質ばかりでなく脂質もたっぷりで、サバやイワシと同様に、良質の不飽和脂肪酸であるEPAがふんだんに含まれていますから、血中コレステロールを低下させて生活習慣病の予防に役立ちますし、脳を活性化して認知症予防の働きもあります。

また、ビタミン類も豊富で、A、D、E、B群が多く含まれています。ビタミンAは皮膚。粘膜の健康に。ビタミンDはカルシウムの吸収を促しますから骨粗鬆症、ビタミンEは抗酸化作用によりガンや老化予防の効果が期待できます。栄養の代謝を促進するB群のなかでは、貧血予防の効果があるB2が多いのが特徴です。

カキ
ガキの産地偽装も後を絶たない。二〇〇四年に官城県で発覚した産地偽装は、
その最も代表的な手口。それは、官城県産と表示した生ガキのなかに、韓国産のものがいっしょにパック詰めされていたのだ。

「官城県産と表示されている生ガキの出荷量は、年間で七万五千トンです。このうち、五万トンは官城県産のものですが、あとの二万五千トンは韓国産のものだったことが発覚したと聞いています。つまり、三分の一はウソの表示の生ガキだったことになる。これは、消費者に対しての許せない裏切り行為と言えます」
と語るのは、表示アドバイザーの垣田達哉氏である。

生ガキは産地でパックして出荷される。したがってパック詰めの時点で韓国産を混ぜられてしまっては、流通段階ではチェックのしようもないわけだ。
広島産のカキは粒が大きく、加熱用として売られている場合が多いのに対し、宮城産のカキは粒が小さく主に生ガキとして出荷されています。 一方、韓国産のカキも、宮城産と同じように小粒だから生食向きだと言われているので、宮城産に混ぜられたようです。

宮城のカキ業者は少なからず、不当表示をおこなっていたので『みんながやっているからいいじゃないか』という暗黙の了解ができてしまっていたのです。


3.魚種類別、栄養価が最も高い時期
種類 出回り月 最盛期
アジ 3~2 5
アナゴ 3~2 6
アユ 6~8 7
イワシ 3~2 3
カツオ 3~11 5
カマス 4~1 9
キス 3~2(9月を除く) 11
サケ 5~1 10
サバ 3~2 10
サンマ 7~1 9
スズキ 3~4 8
タイ 2~8 6
太刀魚 1~3 1
ニシン 12~6 4
ヒラメ 3~2 5
ぶり 3~2 4
マグロ 3~2 7
マス 3~2 6
赤貝 3~2 3
アサリ 2、5~6、9~12 11
カキ 9~5 12
サザエ 1~3、6 3
しじみ 3~2 8
ハマグリ 3~2 4
カニ 7~2 3
タコ 3~2 12


4.アサリ・シジミ・カニは要注意
もうひとつ、貝で問題になっているのが「国産」と表示されている中国産のアサリとシジミである。農水省では、養殖の定義を「餌を与えて飼育すること」としている。これに対して「畜養」という定義があるが、これは「砂抜きや出荷調整のために、生きたまま保管しておくこと」を指す。つまり、餌を与えずに海につけておけば、養殖でなく、畜養となるのだが、アサリやシジミはその期間がかなり長い。

「通常、畜養の期間は数日から一カ月位です。でも、アサリやシジミは、価格の安い時期に中国から買い、日本の海で畜養しておくので、その期間は九カ月にも及んでいます。 この間に、貝はエサを与えなくとも、周囲のプランクトンなどから栄養を摂って、勝手に成長してしまう。

業者側の言い分は、中国産の貝であっても、短期間でも日本で成長した貝なら、国産と表示しても、間違ってはいないというのです」 アサリやシジミが誕生してから、食べられるようになるには、2~3年の期間を要する。

したがって、日本市場に出ている中国産の貝が、たとえ日本で9か月畜養したもの だとしても、その貝は中国の海にいた期間の方が長い。 「養殖の場合は、『主たる養殖地』を産地として表示するという決まりがあります。

中国から購入したアサリやシジミは天然モノですが、水産庁ではここに『養殖』の定義をあてはめて、『中国で長く育てたという理由から、中国産と表示しなくてはならない』としています」 JAS (日本農林規格)法は、複数の場所で生育された生鮮食品について、最も長い生育地を産地として表示すると定め、産地が国外でも、輸入後の畜養場所を産地表示してもよいことになっている。このJAS法の観点から見ると、輸入物のアサリやシジミを国産として売ることは違法になるのだ。
40パーセントは北朝鮮産が占めているというのに、調査した九百四十一点のアサリのうち、北朝鮮産と表示された商品は卸売業者の三点だけ。小売り段階では産地表示はゼロだった。 これは拉致被害問題で、日本人の北朝鮮に対する憎悪が売り上げに影響することから、産地表示を控えているケースが多いと推測される。

しかし、このアサリの日本への輸出が北朝鮮の工作員などの活動資金を捻出しているとも言われており、日本人としてはやはり北朝鮮産は買い控えたいと思うのだが、このように偽装がされてしまうと、意に反して北朝鮮産を買ってしまうことになる。

また、東北の水産加工業者を通じて中国産が「熊本産」として販売されていることも明らかになった。業者によると、輸入アサリを数日海の砂浜にばら撒いておくと、殻の色も日本産と同じ色に変わり、熊本産で出荷できるというから驚きだ。

そして、カニも偽装表示の常連だ。日本海沿岸の港に北朝鮮やロシアから松葉ガニが水揚げされているが、 一部では輸入物を水揚げ港の表示で販売している業者もあるのだ。

どれも、国産と中国からの輸入モノの「味」については、さほどの違いはないと言われている。ただし、危機管理上では、大きな問題に発展しかねないことを忘れてはならない。 「狂牛病の問題でも明らかになったように、万一その貝に食中毒などの問題が発生したとき、国産か輸入モノかがはっきりしていれば、食中毒の元となった国のモノを回収することができるのです。韓国産のカキが原因で赤痢発症者が急増したことがありますが、そうした危険を水際で止めるためにも正しい表示は必要なのです」


「魚介類」で見分ける「よい店」
解凍表示や養殖表示のものが目につくくらい売られており、また、狭い水域の原産地表示のものが多く並んでいることが、よい店のポイント。

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