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日本の食品残留農薬基準には大きな問題点がある
目次
1.ポストハーベストについて
食品からの農薬接種を最低限にするために、輸入食品の残留農薬に気を付けましょう。
海外生産された食品が日本に届くまでには時間がかかるため、腐敗や病害虫などのリスクも高まります。
それを防ぐ目的で収穫後に農薬をかけることが認められた野菜・果物があります。ポストハーベストという言葉を聞いたことのある方もいらっしゃるかもしれませんね。また、農薬だけではなく、放射線を使って殺菌を行っている場合もあります。
勿論食品に関わる事なので、使用する薬品の種類や残留度は法律で決められており、安全に配慮されています。とは言え、次のような懸念も挙げられています。
1.ポストハーベストに使われる農薬の濃度は栽培時より高濃度
2.栽培時に使うより食品に農薬が残りやすい
3.使用許可があるものでも健康への影響が懸念されている薬剤がある
4.日本では使用を許可されていない農薬が、海外で「食品添加物」として許可されていることもある
以上は「…と言われている」という内容でもありますが、本当かも知れず、心配です。
日本国内で栽培される野菜・果物は収穫後に農薬をかけることは認められていません。放射線照射も、じゃが芋の芽出しを促進する目的以外では使えません。食品添加物や残留農薬についても法律が整備されており、チェック機能が働きます。
どうしても海外でないと生産できない野菜・果物もありますが、店頭で輸入食品を買うときは意識したい事柄です。
2.日本の残留農薬基準の問題点
国際基準へのハーモナイゼーションとポストハーベスト対応、厚生労働省は、農薬で残留農薬基準を設定している。このうち、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が合同で設置した委員会の定めた、いわゆるコーデックス基準がある1420基準のうち、同基準と同じものが62.2%、同基準よりゆるい基準が21.5%もある。結局、コーデックス基準かそれ以上に甘い基準は、合わせて83.7%にも及ぶのである。
具体的に主な輸入農産物ごとに見てみよう。コーデックス基準がある農薬についてみてみると、小麦では、コーデックス基準と同じ基準が21、それよりゆるい基準が6で、33基準のうち81.8%がコーデックス基準かそれ以上にゆるい基準となっている。
同様に大豆では85.7%、 トウモロコシでは71.4%、ブロッコリーでは90%、レモンとグレープフルーツでは90.4%、オレンジでは92%がコーデックス基準と同じかそれ以上の基準となっているのである。
コーデックス残留農薬基準は、農産物の国際流通を前提とし、熱帯地域のような農薬の多使用地域での農薬残留基準としても使えるように設定され、また農産物の生産時だけでなく、貯蔵などの目的でポストハーベスト農薬としての使用も前提としている。
そのため、日本では使用禁止のうえ、食品衛生法上も検出せずとの扱いになっていたディルドリン、エンドリン、あるいは、日本では使用禁止や農薬登録失効などになっていたクロルデン、フォルペット、アルディカーブなどの使用を前提とした残留農薬基準が設定されている。
また、残留農薬基準の水準も従来の日本の残留農薬基準と比べても最高1倍も基準が緩く、登録保留基準(環境省による農作物への農薬残留基準)と比較しても最高100倍も緩い水準となっている。
このようなコーデックス基準へのハーモナイゼーション(平準化)のため、検出せずとしていたディルドリン、フォルペット、アルディカープの残留農薬基準が設定され、農産物の国際流通を前提として、それらの農薬残留も受け入れる体制になったのである。
3.加工食品や食肉の残留農薬基準がない
残留農薬基準のもうひとつの問題は、加工食品や食肉の残留農薬基準がないということである。農薬の残留が多い可能性がある。
そのことは、加工食品の冷凍ほうれん草の残留農薬値がきわめて高かったことである程度証明されている。また、食肉の残留農薬問題である。これは、家畜の飼料(トウモロコシなど)が農薬汚染され、それを食べた家畜の体内で代謝され、家畜の脂肪等に農薬が移行残留する問題である。
EUやオーストラリアでも残留農薬基準が食肉について設定されており、米国でも食肉について約800の残留農薬基準が設定されている。この点でも日本は世界から決定的に遅れているのである。
飼料の残留農薬基準が法的に位置づけられていない
食肉の残留農薬基準が日本にないことは指摘したが、問題は、飼料の残留農薬基準が法的に定められておらず、まともな検査も行われていないということである。飼料の安全性については、飼料安全法によって規制されているが、残留農薬については、「飼料の有害物質の指導基準」という指導通達で40農薬の残留基準が設定されている。指導通達だから、BSE(牛海綿状脳症、いわゆる狂牛病)問題と同様に法的規制力がないものである。
ポジティブリストでない日本の残留農薬基準の大きな問題点は、残留農薬の規制方法がポジティブリスト方式でないということである。ポジティブリスト方式とは、全面禁止が原則で、基準を設定したもののみ、基準の範囲内で流通を認めるという方式である。
アメリカなどでは、残留農薬基準がポジティブリストとなっており、基準が設定されていない残留農薬が検出された場合は、直ちに流通禁止となる。
それに対して、基本は流通が自由であるが、安全性上問題があるものだけを流通を禁止するというものがネガティブリスト方式という。日本の残留農薬の規制方法は、このネガティブリスト方式なのである。すなわち、基準が設定されていない農薬については、例えそれが検出されたとしても食品衛生法違反でなく、流通規制ができないのである。
中国産冷凍ほうれんそう残留農薬問題でもこの問題は明らかになった。厚生労働省は、現在、加工食品については残留農薬基準を設定していないのである。そのため、加工食品である冷凍ほうれんそうは規制の対象外であるばかりか、検査もしていなかったのである。
また、この日本の残留農薬規制の仕方が問題であることは、のちほど見るポストハーベスト農薬の問題でも明らかになる。
これに対して、厚生労働省も、その問題点を認め、2003年通常国会に提出する食品衛生法改正案に「残留農薬等のポジティブリスト制の導入」を打ち出した。
その考え方は次のようなものである。
「近年の輸入食品の増加等も踏まえ、食品衛生法に基づく残留基準が設定されていない農薬等(動物用医薬品、飼料添加物を含む)について、当該農薬等が残留する食品の流通等を原則として禁止する措置(いわゆるポジティブリスト制)を一定の準備期間経過後に導入する」(厚生労働省提出資料)。厚生労働省は、一定の準備期間を3年程度としている。
ポジティブリスト制の導入は、当然の措置である。ただ、できるだけ早く実施することが必要であるとともに、残留基準値が緩すぎたら、意味がないわけで、今後設定される残留基準値が妥当なものかどうかを注視する必要がある。
4.農薬取締法
背景農薬取締法は昭和23(1948)年に制定された。戦後の食糧増産政策のなか、有機塩素系農薬のDDT、BHC、アルドリン、ディルドリン、あるいは有機リン系農薬のパラチオン、有機水銀剤などの有機合成農薬が海外から導入され、農作物の病害虫防除に大きく貢献した。
農薬取締法は、農薬の粗悪品を排除し、品質の保全を確保する目的で取締規定や登録の制度を定めたものである。以後、新規農薬が次々開発され、病害虫や雑草の防除に大いに活躍した。特に除草剤の使用は、手作業による草取りから農薬による防除に代わり、農家の人々を長時間で過酷な労働から解放し、農業の近代化に大きな役割を果たした。農業生産の効率化は農薬の使用とともに飛躍的に向上し、その結果、余剰人力は都会に出て工業などの労働力となり、その後日本の高度成長と生活向上を支えた。
法制定後十数年を経て農業用資材の種類は増え、また水産動植物への著しい被害が散見されるようになった。昭和38(1963)年農薬取締法が改正され、ウイルス防除および農作物の生理機能の増進または抑制作用を有するもの(成長促進剤)が農薬とされ、また水産動植物への被害防止措置が加えられた。
1970年代に入ると農薬の負の部分が顕在化するようになる。例えば有機塩素系農薬が有する高い残留性と蓄積性に起因した作物への残留、牛乳や母乳中からの検出、土壌残留が原因になった後作物への残留、野鳥等野生生物からの検出などの事例、あるいは有機水銀剤の一部が主食の米から検出される事例などが発生し、農薬の安全性に関心が高まるとともに大きな社会問題となった。
一方、有機リン系農薬のパラチオンの強い急性毒性による散布中の中毒事故が頻発し、安全性の高い農薬が求められるようになった。このような背景のもと昭和46(1971)年に農薬取締法の大改正が行われた。主な改正点は、その目的の中に国民の健康の保護と国民の生活環境の保全がうたわれ、農薬を登録する際に、農薬の人などに対する毒性試験成績や残留する性質についての試験成績書が新たに要求されることとなった。
すなわち登録検査を強化することにより安全性の確保を図ることを重点とした内容となった。また、同時に登録保留基準が定められ、基準に満たない場合は、品質等の改良が指示されることとなった。この改正に伴い、前述のDDT、BHC、アルドリン、ディルドリン、パラチオン、有機水銀剤などは逐次登録が失効し禁止農薬になった。
近年、農業の近代化とともに農業形態が多様化し、新たな防除資材が種々使われるようになる中で、無登録農薬が全国的に流通し、広く使用されていることが明らかとなった。また、禁止農薬の使用事例や、輸入農産物に残留基準の超過あるいは基準のない農薬の残留実態が明らかとなり、平成14(2002)年農薬取締法が改正され、無登録農薬の製造、輸入、使用の禁止、使用基準の遵守、罰則の強化などが明記された。
また、登録保留基準として水生生物の危害防止に関する基準が加えられた。農薬取締法改定の歴史を振り返ると、品質の確保に重点をおいた当初の規定から人畜や環境への安全性確保に重点をおいた規定が充実するようになってきたといえる。本農薬取締法の概要を図に示す。
目的
農薬について登録の制度を設け、販売および使用の規制等を行うことにより、農薬の品質の適正化とその安全かつ適正な使用の確保を図り、もって農業生産の安定と国民の健康の保護に資するとともに、国民の生活環境の保全に寄与することを目的とする。(法1)
定義
(1)「農薬」:病害虫の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤(その薬剤を原料または材料として使用した資材で当該防除に用いられるもののうち政令で定めるものを含む。)および農作物等の生理機能の増進または抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤その他の薬剤をいう。(法1の2・1)
(2)「農作物等」:樹木および農林産物を含む農作物をいう。(法1の2・1)
(3)「病害虫」:農作物等を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみその他の動植物またはウイルスをいう。(法1の2・1)
(4)「製造者」:農薬を製造し、また加工する者をいう。(法1の2・3)
(5)「輸入者」:農薬を輸入する者をいう。(法1の2・3)
(6)「販売者」:農薬を販売(販売以外の授与を含む。)する者をいう。(法1の2・3)
(7)「除草剤販売者」:農薬以外の薬剤であって、除草に用いられる薬剤その他除草に用いられるおそれがある薬剤として政令で定めるものを販売する者をいう。(法10の3・1)
(8)「残留性」:農薬の使用に伴い、その農薬の成分である物質(その物質が化学的に変化して生成した物質を含む。)が農作物等または土壌に残留する性質をいう。(法1の2・4)
(9)「特定農薬」:その原材料に照らし農作物等、人畜および水産動植物に害を及ぼすおそれがないことが明らかなものとして農林水産大臣および環境大臣が指定するものをいう。(法2。1)
(10)「登録外国製造業者」:農林水産大臣により、外国において本邦に輸出される農薬を製造し、または加工して販売する事業を営むもので当該農薬について登録を受けた者をいう。(法15の2・3)
(11)「公定規格」:農薬の種類ごとに、含有すべき有効成分の量、含有を許される有害成分の最大量、その他必要な事項についての規格をいう。(法1の3・1)
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