海洋深層水はミネラルやマグネシウムが含まれてからだにいいのか徹底調査
目次
1.ミネラルウォーターと海洋深層水
深層水のミネラル効果はどの程度なのでしょうか。
海洋深層水が体にいいとよくいわれるが、本当なのだろうか。
海洋深層水は、水深200メートル以上の深海の水なので、太陽光線がほとんど届いていない。そのため、低温で(低温性)、細菌が少なく(清浄性)、魚の餌となる植物プランクトンに必要な栄養塩が豊富(富栄養性)といわれている。
ところが、北海道立消費生活センターが、飲用海洋深層水8品目の成分テストをした結果、消費者に次のような注意をうながしている。
・海洋深層水には「ミネラルが豊富」というイメージがあるが、実際は銘柄差がきわめて大きく、なかには一般のミネラルウォーターや水道水より少ないものもあった。
・ミネラルが一番多かった銘柄をコップ1杯飲んでも、カルシウムは一日の成人所要量の約40分の1にすぎない。牛乳コップ1杯(200ミリリットル)のカルシウムは、成人所要量の3分の1だ。栄養補給を期待して購入するのであれば、あまり意味はない。
・海洋深層水が注目される理由の一つに「富栄養性」があり、「豊富な栄養」を含む旨を表示しているものもある。しかし、深層水の栄養分とは植物プランクトンなどの栄養素になるもので、とくに人間が必要とするものではない。
・今回テストした海洋深層水は、いずれもミネラルを強調した表示があったが、これらの成分は海洋深層水でなければ摂取できないものではない。これらの水にミネラル分を期待するよりは、まず毎日の食事のバランスに気をつけよう。
海洋深層水が、アトピー性皮膚炎や糖尿病、C型肝炎に効果があるという話もよく耳にするが、いずれも臨床実験中であり、科学的に解明されたわけではない。もちろん薬として認められているわけでもない。逆に薬としての効果が強いなら、その副作用のほうが心配になる。
一部の商品には、パッケージに「健康飲料」と印刷されているが、海洋深層水を飲めば健康になれるわけでもない。含まれている成分の一部が健康維持に効果があると認められている、特定保健用食品の承認を受けているわけでもない。
また最近は、マグネシウムが多く含まれているので、「マグネシウムが体内で脂肪を燃焼させるので痩せられる」といわれることもある。しかし、ミネラル分が多い飲料を飲むとお腹がゆるくなることがある。つまり、下痢症状だ。
毎日下痢をして痩せるわけではないだろうが、たとえ脂肪などを燃焼して痩せたとしても、特定のミネラルやビタミンだけを過剰にとること、ましてやマグネシウムは、第六次改訂日本人の栄養所要量で、許容上限摂取量(毎日継続的に摂取しても有害な副作用をもたらす危険度がない一日の最大摂取量)が成人で700ミリグラムと定められている。
マグネシウムが多い海洋深層水なら、上限値は14リットル分になる。「水だからそんなに飲めないから安心だ」といっても、ほかの食物からもマグネシウムを摂取している。日本人が不足している栄養素ではないマグネシウムを、それほど多くとる必要はないだろう。
そもそも栄養成分は、1種類だけを過剰にとればいいというものではなく、それぞれバランスよく摂取するのが一番大切なことだ。カルシウムとマグネシウムは、2対1の割合で摂取するのが望ましいといわれている。
一般的なミネラルウォーターのほとんどは、カルシウムの量のほうがマグネシウムよりも多いのに、海洋深層水は、日本人に不足しがちなカルシウムは少なく、不足していないマグネシウムは、カルシウムの3倍近くも含まれていることがわかる。
ナトリウムとカリウムについても、1対2の割合で摂取することが望ましいとされているが、海洋深層水はカリウムよりナトリウムが多く含まれている。
また、海洋深層水のなかには、「純度100%の自然水」とうたったものもあるが、海洋深層水はあくまで海水だ。自然、天然のままでは到底飲料にはならない。最低でも脱塩加工はしなければならないし、当然殺菌処理もされている。
2.
しかも、工場で加工処理する過程で、ミネラル成分をいくらでも調整することができるのだ。だから、同じ海中からくみ上げた海洋深層水でも、飲料用の海洋深層水になると、ミネラル成分の合有量が数倍も多くなる商品もできるのだ。飲料用の海洋深層水は、自然水や天然水ではなく、人工的に加工された飲料水なのである。
一方、市販されている大部分のミネラルウォーター(ナチュラルミネラルウォーターおよびナチュラルウォーター)は、「ろ過、沈殿又は加熱殺菌」しか許されていないので、限りなく天然水に近いといえる。なかでもヨーロッパのナチュラルミネラルウォーターは、日本産と違って品質基準が非常に厳しいので、殺菌すら必要がない。まさに正真正銘の天然水だ。
天然水でもなく、人工的に成分調整されているのに栄養学的にもバランスが悪く、しかも最近脚光を浴びたばかりで、まだ科学的な解明もされていない海洋深層水よりも、長年飲用されつづけてきたミネラルウォーターのほうが、はるかに安心だ。
さて、近頃は天然水や海洋深層水を使用した清涼飲料水もよく見かける。天然水や海洋深層水ばかりが強調され、しかも無色透明の飲料なので、いかにもミネラルウォーターや海洋深層水とほとんど変わらない飲料だと思ってしまう。しかし、実際にはかなりカロリーが高い飲料が多い。
海洋深層水そのものやミネラルウォーターは、当然カロリーはゼロだ。しかし、それを使用した清涼飲料水は、果糖や果汁といった糖分をかなり加えているので、それだけでエネルギーが高くなっている。
ミネラルウォーターや海洋深層水そのものはノンシュガー(無糖)であり、ノンカロリーだが、100ミリリットルで20キロカロリー以上もある清涼飲料水は、低カロリー飲料の基準値さえ超えているのだ。
また、清涼飲料水には、「体液の浸透圧に近い水分補給飲料です。地球規模のスケールで循環し、熟成される海洋深層水に含まれる天然の栄養バランスそのままで仕上げました」と説明されているが、糖質が100ミリリットルあたり5.3グラムも含まれているので、水分補給というよりも糖分補給飲料といえる。
しかも、こんなに糖質が含まれている飲料が、「天然の栄養バランスそのまま」といえるだろうか。さらに、塩分のとりすぎが問題になっている昨今、ペットボトル一本(500ミリリットル)に240ミリグラムものナトリウムが含まれているのは多すぎる。
やはり、糖質も一切含まない正真正銘のノンカロリーで、塩分もごく少量しか含まず、長年飲みつづけられてきたミネラルウォーターのほうが、かなり安心だ。
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