果物に含まれる危険成分を確認して安全に食べる方法を紹介
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2. なし
厚めに皮をむく
甘酸っぱくさわやかな果汁がたっぷりのなし。口に含めば、疲れもとれてしまいそう。ところで、そんな気がするだけではありません。なしには実際、疲労回復に効果があるアスパラギン酸が含まれているのです。
なしは病気や害虫に弱く、虫がつかないように殺虫剤などを多く使います。
さて、こうした農薬は、太陽が当たればある程度は紫外線によって分解される性質があります。だから本当は「有袋栽培」のものよりも、太陽の光をさえぎらない「無袋栽培」のものが安全。ちなみに「サンセーキ」など、サンが頭につくものは無袋で育てたというしるしです。でも、店先に並ぶのは、圧倒的に袋がけをして育てた「有袋栽培」のなしが多いのです。
そこで、選ぶなら旬のなしがよい。旬の果物は、気候条件に合わせて自然に育てている分、農薬の量も少なくてすむからです。なしの旬は8~10月。幸水や長十郎、豊水などの赤なし系が先に出回りはじめます。
なしを選ぶときは、「左右のバランスがよく、肌がきれいなもの」を。
また、食べる前に、水を流しながらよく手でこすって水洗い。表面に残っている殺虫剤やダイオキシンを落とします。
皮はちょっと厚めにむきます。昔から「なしは大名にむかせろ」といわれているとおりです。大名は普段包丁など使わないから、どうしても皮を厚くむいてしまう。
しかし、そのほうがかえって、皮と果肉の間の酸をとり除くことができ、甘みがそこなわれずにすむことのたとえ。
表皮の下のクチクラ層に殺虫剤がしみこんでいることも多いので、厚めにむけば同時にクチクラ層もとり除くことができ、一石二鳥です。
もも
農薬の不安は洗って解消
「病気のとき、お母さんが冷たく冷やしたももの缶詰を食べさせてくれた」という思い出がある人も多いのでは。
缶詰に限らず、ももはきめ細かくジューシーな果肉の喉ごしがよいため、食欲がないときでも、おいしく食べることができます。甘く熟したももは、贈りものにしても喜ばれますね。
ももは、「やや大玉のもの、桃色が鮮やかで、ふっくらと丸く形が整っているもの」を選びます。
旬は6~9月です。
ももは、病気や害虫に弱いため、殺菌剤や殺虫剤などの農薬を使うことが多いくだもの。表皮や表皮下のクチクラ層に不安物質が残っている可能性が多いのです。
でも、洗って皮をむけば大丈夫。傷みやすいので、ゴシゴシ洗うわけにはいきませんが、それでも皮についた農薬やダイオキシンの心配をなくすために、そっとなでるようにして、ていねいに洗いましょう。
ももは、ビタミンCやカリウムが豊富。
水に溶ける食物繊維のペクチンも含まれているので、便秘の解消にも効果があります。
ぶどう
粒ごと口に入れないこと
まさか、ぶどうを皮ごと食べる人はいないと思いますが、それでもデラウェアなどの小粒のものは、粒ごと口に入れ、皮をプッと吐きだすような食べ方をする人もいます。でも、この食べ方はちょっと危険。
皮ごと口の中に入れてかむのはダメ。表皮下のクチクラ層から殺虫剤がにじみでてくる可能性があります。ぶどうの表皮や表皮下のクチクラ層には、殺虫剤などの農薬が残っています。
ぶどうを食べるときは、皮を口につけないように、極力注意する必要があります。
ともかくよく洗うことが肝心。まず、ボールにぶどうの房を入れ、水を流しながら10分ぐらいつけておきます。
つぎに、ぶどうをザルにとり、水を流しながら、ザルを5回ほどゆすってふり洗い。
これで、表皮に残った農薬やダイオキシンは、ずいぶん減らすことができます。食べるとき、マスカットなど大粒のぶどうは、手で皮をむきます。表皮下のクチクラ層ごととり除くことができるため、安心です。小粒のぶどうは、粒を口元にもっていき、指で押すと同時に中身だけ吸いだして食べます。
さて、ぶどうの選び方。
「粒がそろっていて、肩のところの粒が落ちにくいもの」を。健康に育った証拠で、農薬などの不安も少ないぶどうです。
表面に白っぽい粉かついていますが、これは農薬ではなく、ブルームというロウ物質。これが多いものほど熟していて鮮度の高い証拠。
ぶどうの旬は8~10月です。
さくらんぼ
2002年8月末、「無登録農薬山形産サクランボも」と新聞に報じられてドキッとし、さらに「佐藤錦」の文字を見つけてガクッときた。
サクランボといえば、もう山形県産と決まっている。国産の生産量の7割を占め、トップだ。そして山形県産といえば、品種は「佐藤錦」と決まっている。出荷作業の真っ最中。ゴザを敷いた納屋で、5~6人の女性がまるで壊れ物でも扱うように、1粒1粒をていねいに箱詰めしていた。そのゴザの上一面に広げられたサクランボを見て驚いた。大粒で、ルビーのように鮮紅色に輝いているではないか。ルビーのじゅうたん。それにしても、これはなんだ。こんなサクランボがあったのか。
それまで食べたサクランボはサイズが手の小指の頭か、せいぜい中指の頭くらい、それがなんと親指、いや手ではなく足の親指くらいある。生まれて初めて見た。案内役の地元農協担当者の話だと、「佐藤錦」といっても、こんなに大きいのはそうそうない、名人だからこそできるといっていたが。そう言われても、ショックは大きかった。
つけ洗いとふり洗い
6月頃、店頭にかわいらしい姿のさくらんぼが並びます。種類は2つあって、きれいなピンク色のさくらんぼと赤黒いさくらんぼ。
ピンクのものは国内産、赤黒いのは輸入もののチェリーです。味に少し違いがあり、どちらのサクランボも人気。
でも安心という点では、やはり国内産がよい。輸入ものは、収穫後に使用するポストハーベスト農薬の不安が強いのです。畑で使われる農薬は、ある程度蒸発したり、太陽の紫外線で分解されたりしますが、ポストハーベスト農薬は、ほとんどそのまま残ります。日本でのチェック体制も整っていないのが実状です。国内産の旬は6月。
輸入ものは5~7月です。
さくらんぼは皮ごと食べるので、よく洗うことが大切。
まず、ボールにさくらんぼを入れ、水を流しっぱなしにして10分ほどつけ洗い。水を流しっぱなしにすることで、水に溶けだした残留農薬やダイオキシンが、ふたたびさくらんぼの表皮につくことを防ぎます。
つぎに、さくらんぼをザルにとり、水を流したままで、ふり洗いを5回ほど。輸入ものは、とくに念入りに洗いましょう。
表皮についた殺菌剤などの農薬やダイオキシンは、これでとり除くことができますが、残念ながら表皮下のクチクラ層までしみこんだ殺虫剤やダイオキシンは防ぎようがありません。
ただ、なんといってもさくらんぼは高価。
たとえ残留農薬やダイオキシンが残っていたとしても、健康を害するほどたくさんは食べられないのが救いです。
バナナ
軸から1センチは切り落とす
熱帯植物のバナナ。
バナナがまだ高級な果物で、遠足に持っていくとちょっとステータスだった昔は、台湾産のものがほとんどでしたが、最近出回っているのはフィリピン産。全体の八割を占めています。
しかし、安全ということからすると、ベノミルなどの殺菌剤や、TBZ、イマザリルなどの防カビ剤を使っているフィリピン産よりも、防腐剤にみょうばんを使っている台湾産のほうが安心だし、おすすめ。
バナナは年中出回っており、旬はありません。
農薬の心配ですが、バナナの場合ほとんど皮の部分にしか残りません。
ですから皮をむけばいいのですが、ここで一つ大きな問題が。
バナナは軸が腐ってしまうのを防ぐために、収穫後に、防腐剤や防カビ剤などを使うことが多いのです。こうした農薬は、軸に近い果肉の部分にしみこんでいることがあります。ちなみに軸とは、バナナを食べるとき上になる部分。ですから、皮をむいたら、上から1センチほど切り落としてから食べる。
これが安心のポイントです。
1センチ以上先まで農薬がしみこむことはないので、これで大丈夫。
メロン
皮ぎりぎりまでしつこく食べない
メロンはくだものの中では、農薬をあまり使っていない安心なくだものです。
なぜかというと、農薬を多量に使わなければならないような条件のもとでは、メロンは育たないからです。
しかも、温室またはビニールハウス栽培が多いので、ダイオキシンの心配もそれほどありません。とくに、旬の時期は安全。
プリンスメロンとアンデスメロンの旬は、5~6月。
アムスメロンは6~7月が旬です。
安心な食べ方は、皮を残して食べる。
当たり前の話ですが、とくにおいしいと、皮ぎりぎりまでスプーンですくって食べたりするものです。
ところが、ここまで食べるのは、ちょっと不安。子どもさんには、あまり皮の近くまで食べないように、皮と身の間を、あらかじめナイフでカットしてあげるとよいでしょう。
選び方としては、プリンスメロンは「白っぽく中玉以上の大きさのもの」、網のあるメロンは「網がよく張っているもの」がよいのです。
グレープフルーツ
防カビ剤を水で流してから横半分に切る
グレープフルーツという名前は、木の枝になった実がいくつもかたまって、まるでぶどうのように見えることからつけられたのだそうです。
グレープフルーツはほとんどが輸入されるくだもの。
一年中店頭で見かけますが、輸入量がピークとなる4~6月のものが、産地でも旬に当たり、農薬の使用量も少ないようです。
もっとも、輸入くだものですから、収穫後に使用する防カビ剤など、ポストハーベスト農薬の不安があります。
そこで、安心な食べ方をご紹介しましょう。
まず、水を流しながら、5回ぐらい手でこすり洗いをして、表皮についた農薬や防カビ剤を落とします。
つぎに、グレープフルーツを横半分に切って、スプーンですくって食べます。「なんだ、いつもの食べ方じゃないか」と思われるかもしれませんが、防カビ剤は果肉までしみこむことはほとんどありません。
安心度からいっても、このスプーンで食べる方法、しっかり理にかなっているのです。
グレープフルーツの選び方ですが、「形が丸くて重さがあり、皮の薄いもの」を選ぶようにします。
レモン
皮をむいて中身だけを使う
レモンのさわやかな香りは皮によるところが大きい。それに、薄く輪切りにしたときの、周りの皮の黄色いラインがなんともかわいい。その皮を捨ててしまうなんて、と思われるかもしれません。でも、安全性を考えればいたしかたのないことです。
最近は国内産のレモンも出回ってきましたが、ほとんどは輸入もの。
そして、輸入レモンには、ポストハーベスト農薬の「防カビ剤」が使われていたり、「へた落下防止剤」が使われていたりします。その不安を解消する方法が皮をむいて捨てるということなのです。
まず、水を流しながら、レモンを五回ほどこすり洗いし、表皮の食品添加物を減らします。それから、皮をむくことで、水洗いでは落ちない防カビ剤などをとり去ってしまいます。紅茶やケーキ、料理の付け合わせなどに使うときは、この皮むきレモンをスライスして使いましょう。また、防カビ剤などの不安物質は、果肉にまではほとんどしみこみません。そこでしぼった汁だけを紅茶などに使えば、安全度はもっとアップします。
ちなみに、すでに皮つきでカップに浮かべてあるレモンは、飲んでいる間じゅう入れっぱなしにせず、すぐに引きあげます。
時間が長くなるほど、防カビ剤などがたくさん溶けだすからです。
紅茶100ミリリットルに皮つきレモン10グラムを入れたテストでは、一分間経つと、防カビ剤の一つTBZが74パーセントも溶けだしたという結果が出ています。
くれぐれも、気をつけたいところです。
りんご
国内のリンゴ生産農家でも無登録農薬・ダイホルタンを購入し、使用していたことが発覚した。
それも青森、岩手、秋田、山形、福島、宮城、栃木、群馬各県など広範囲であり、消費者に対して国産リンゴも農薬まみれのイメージを印象づけてしまった。
ダイホルタンは葉に褐色の斑点ができ、やがて葉が落ちてしまうリンゴの斑点落葉病などのほか、さまざまな果物や野菜の病気に対して効果的な殺菌剤だ。しかし、1987年に農薬としての登録を失い、国内での製造・販売ができなくなっていた。さらに旧厚生省・食品衛生調査会が再評価し、動物試験で発ガン性が認められたことなどから、作物に残留してはならないとした。
つまり、ザル法の現在の農薬取締法では使用禁止にならず、使った農家は罰せられない。しかし、たとえ法的には規制されなくても、事実上、農家が使うべきではない危険な農薬だった。
皮ごとかじるなんてもってのほか
秋口になると、いろんな種類のりんごが旬を迎え、店頭に山と積まれます。
早生の「津軽」の旬は9月。中生の「スターキング」「デリシャス」「紅玉」「むつ」「ジョナゴールド」は十月。晩生の「ふじ」は12月。
このように、秋から冬にかけてはりんごの季節。甘酸っぱい香りは、収穫の喜びを告げているようです。ところで、りんごは病気や害虫に弱いため、農薬の中でもとくに殺虫剤の使用が多くなりがちです。よく熟したりんごなどは、皮ごとガブッと食べるとおいしそうですが、やめましょう。そこで安心な食べ方を。
まず、しっかり水洗いします。水を流しながら、スポンジを使い30秒ほどこすり洗い。これで、表皮の農薬やダイオキシンが減らせます。
つぎに、皮をむけば、表皮下のクチクラ層ごととり除くことができるので、この部分に残っている農薬やダイオキシンの心配もなくなります。切り分けたりんごを塩水につける、これもよし。褐色になるのを防ぐ意味だけでなく、果肉にまでしみこむタイプの農薬をもし使っていたとしても、これで溶けだしてしまい、安心。
また、りんごも「無袋栽培」で育てたものと「有袋栽培」の二種類があります。できれば太陽の光に直接あたる「無袋栽培」のものを選びましょう。
なお、りんこの表皮が光ってヌルヌルしていることがあります。このヌルヌルは決して農薬ではないのでご安心を。果肉のデンプンなどが糖に変わるとき、油膜が表面に出てしっとりと光沢が出るのです。熟して食べ頃のサインです。
いちご
ショートケーキ、あるいはクリスマスや誕生祝いのデコレーションケーキに、真っ赤なイチゴが欠かせない。白い生クリームとの紅白の対比の鮮やかさは、戦後日本人の脳の食欲中枢にしっかりと刻み込まれてしまった。そのイチゴが、農薬にまみれていた。
2002年8月末、三重県では同年までの4年間で無登録農薬・ダイホルタン(殺菌剤)が県内に大量に流通し、うち農家がイチゴの炭そ病の防除(予防)などに使っていたことがわかった。さらに愛知、千葉、埼玉、宮城、群馬、静岡、福岡など、全国の各県で210戸近いイチゴ農家がダイホルタンや、同じ無登録農薬のプリクトラン(ダニ用殺虫剤)を購入していた。
そのうち宮城県ではイチゴ農家賜戸に対して残留検査が行われ、3戸の農家から最高13・4ppmという高い濃度のダイホルタンが見つかった。ダイホルタンは1964年に農薬として登録され、1989年に登録を失効、つまりメーカーが3年ごとの再登録申請をしなかったなどの理由で登録の効果が失われ、無登録農薬(登録失効農薬)になった。登録期間中、主にタマネギやカボチャ、キュウリ、トマト、キャベツなどの野菜や、イチゴ、ミカン、リンゴ、モモ、スイカ、メロン、ブドウなどの果物に使われていた。
登録失効後の1996年、当時の厚生省の食品衛生調査会でダイホルタンについて再評価され、すべての作物で残留農薬が検出されてはならないとされた。その際、動物試験で発ガン性が認められていて、無毒性量を評価するデータがない。つまり、どの程度の量なら毒性がゼロになるのかわからない。そのため「ADIを取り消すことが適当である」とした。ADIは農薬の1日摂取許容量をさす。ADIを取り消すとは、使っていいという量を決められない。それだけ極めて危険だということを意味している。
ただ現在の農薬取締法では無登録農薬の製造・販売は禁止されるが、その購入・使用は禁止されていない。農薬取締法のザル法たるゆえんだ。だから今回、それを購入・使用した農家は法的に罪を問われない。
真水で洗うのが一番
いちごはもともとは春のくだもの。
ところがいまは、クリスマスシーズンになると、スーパーの陳列棚や店頭に、いっせいに並びます。これは、ハウス栽培が主流になり、収穫の時期が早まったためです。
いちごの旬は、ハウスものは12~2月。露地ものが出回るのは4~5月です。
ところでハウス栽培のものは、残留農薬の心配が高いのが不安なところです。
いちごは病気や害虫に弱いうえ、ハウス内は湿度が高く、病気や害虫が増えやすい。
いきおい農薬の使用量か増えるのです。おまけに、農薬は太陽の紫外線によってある程度分解されるのですが、ハウスはその紫外線のとおりが悪いときています。ハウス栽培のいちごは、農薬の不安が高いことを覚悟したほうがよさそうです。
贈答用に喜ばれる大粒で甘い「アイベリー」という品種などは、さらに多くの農薬を使っているようです。こ用心。さて、いちごは表面がデコボコしているため、農薬などが残りやすい。
そこで安心な食べ方。まず、ボールにいちごを入れて、水を流しながら五分ほどつけておきます。
このあと、ザルにとってやはり水を流しながら、五回ほどふり洗いをします。こうして、表面の農薬やダイオキシンを落とします。なお、ヘタは洗ってからとること。
洗う前にヘタをとってしまうと、水に溶けだした農薬などの不安物質が、へたをとった部分からふたたびいちごの中に入ってしまうからです。
いちごを洗うとき、塩を一つまみ入れるとよいとよくいわれます。汚れが落ちやすくなるという先人の知恵なのですが、いまでは当てはまりません。
塩は内部の農薬を引きだす力があるのですが、いちごのようにそのまま食べるものの場合、表面についている農薬やダイオキシンを、かえって内部にしみこませてしまうのです。
もちろん、洗剤液で洗うなんてとんでもない話。洗剤が果肉に入ってしまう恐れがあります。ですから、真水で洗うのがやっぱり一番。
ラフランス
誘惑の果物。
西洋ナシ、いや「ラ・フランス」と聞いただけで、反射的に口内が唾液で一杯になる消費者もいるのではないだろうか。雨垂れ型といえば可愛いが、実は不格好な下ぶくれ状で、皮の色も日本ナシにくらべてうす汚れていて、とても素直な食欲の対象だとは思えない。硬いヤシを買ってきて、熟すまで待ち、皮をむいてみればどうだ。果肉はぐちゃぐちゃで手がべとつき、顔をしかめるばかり。ところが、ひと口かじれば急転回。なんておいしい。とろ-リ、とろけるゼリー状。この世の美味、ここにあり。
パリジェンヌとの甘いキッスの味を思わせる誘惑の果物、それがラ・フランスなんだ。
2002年の夏の終わり、そんなひと夜の甘い空想にひたろうかなどと考えていた矢先、「ラ・フランスに無登録農薬使用」のニュースが飛び込んできて、くらくらとめまいがする思いだった。なんてことを、これじゃ、食の安全も農業の保護も国産農産物の自給も、すべてがぶち壊しじゃないか。
パパイア
遺伝子組み換えパパイア、日本上陸
遠き島のサイボーグ。
パパイアは、どこか「名も知らぬ遠き島より」(「椰子の実」)と歌われるヤシに似て、日本人にとって南の島々への郷愁を呼び起こす、一種のイメージの果物ではないだろうか。そのイメージを壊す事件が起きた。
2002年1月、埼玉県下のスーパーマーケットで販売されているパパイアに、日本ではまだ安全性の審査がなされていない遺伝子組み換えのパパイアが混じっていることがわかった。そのパパイアは都内の業者から仕入れられた米国・ハワイ産で、日本で遺伝子組み換えパパイアが発見されたのは初めてだった。その後、同9月下旬に再び同じハワイ産の遺伝子組み換えパパイアが見つかっている。忘れた頃にもう一度の手口か。
遺伝子組み換えって何か。イメージ的にいえば、作物や家畜の一種のサイボーグ化、ロボットにしてしまうことだと考えれば、わかりやすい。
オレンジ
米国産オレンジは残留農薬の常習犯
ボヤッと大陸風。
小柄な国産ミカンの控えめな風情に対し、米国産オレンジは皮がまさにオレンジ色にギラギラ輝き、ベトついて、オレはアメリカ人といわんばかりの精力的な感じがする。味も甘ったるくぼやけて大陸風であり、きりっと甘酸っぱい国産ミカンとは一線を画す。米国産オレンジ派はそこがいいというのかも知れないが、注意したいのはポストハーベスト農薬だ。
2002年6月末、東京都は都内の食品輸入業者が米国から輸入したオレンジから残留基準値の2倍近い農薬・クロルピリホスを検出した、と発表した。
このオレンジはサンキストオレンジの商品名で売られていた。同4月、業者が輸入したうちの1個。全量が東日本の問屋などに納入された。
一方、長野県も同日、都内の同じ業者が納入したサンキストオレンジから基準値を超えるクロルピリホスが含まれていたことを明らかにした。クロルピリホスは、中国産冷凍ホウレンソウにも含まれていて大問題になった殺虫剤だ。
米国産オレンジは残留農薬の常習犯で、1993年から東京都衛生研究所の検査によれば、馴年を除いて毎年、検出されている。